約 969,264 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/4358.html
――――ラジオ局 咏「さーて今週も『それいけCatchamber』の時間だよ。知らんけど」 咏「パーソナリティは私三尋木咏。アシスタントにもはや恒例の京ちゃんだよー」 京太郎「お願いします!咏さん、今日はゲストの方が居らっしゃるんですよね!」 咏「そうそう、ゲストはこちら、瑞原はやりプロ!」 はやり「はーい、瑞原はやりです!よろしくおねがいしまーす」 京太郎「この間はラジオでお世話になりました」 はやり「いやいや、結構好評だったんだよー?」 咏「京ちゃんはなんか知らんけど異様にラジオ出演多いよねぃ」 京太郎「はは、宇宙の意志が俺にそうさせてるんですよ……」キリ 咏「まじめな顔して何言ってるんだか。じゃあ今日もいってみよ。知らんけど」 京太郎「ってスタッフの方々、急になんですか?え、俺に新しい台本ですって?」 京太郎「はぁ、分かりました。俺がタイトルコールすればいいんですね。ごほん」 京太郎「京ちゃんを落とせ!女子プロに読んでもらおうのコーナー!」 咏「」ブーッ はやり「」ブーッ 京太郎「ってなんすかこれぇ!?」 カンペ「後で謝るからとりあえず続けて!」 京太郎「わかりましたよ!説明続ければいいんでしょ!?」 京太郎「えー、なになに?このコーナーではお便りに書いてある台詞を咏さんとはやりさんがそれぞれ読んでどちらがより可愛かったかを京ちゃんに判定してもらおうというコーナーです」 京太郎「単純な演技力だけじゃなく、いい台詞を引く運も必要になります。だそうです」 京太郎「え、俺が判定するんですか?」 咏「す、スタッフあとで覚えてろ……」ボソボソ はやり「どうしてゲスト出演でこんなことに……」ボソボソ 京太郎「さて、お二人の台詞が決定した模様です」 咏「え、私こんなの読むん?うがー、わっかんねー!」 はやり「確かに『牌のおねえさん』ではあるけど……これはちょっと///」 京太郎「なんだか様子がおかしいですね。2人共ハズレを引いてしまったんでしょうか」 カンペ「じゃあ咏さんからお願いします!」 咏「うえぇ、私からかよ……どうなっても知らんからな!」 咏「えー、ごほん」 ――咳払いをした咏さんは、ラジオの収録だというのに一旦席を立ち、こっちを向いて駆け寄ってきて 咏「お風呂にする?ご飯にする?それともわ・た・し?」カァッ などとチラチラこっちを伺いながら言い放ったのだった。 京太郎「ごはぁっ!?」 京太郎「な、なんですかこの破壊力は……」 咏「わ、私にここまでさせたんだから選ばないとどうなるか……、わっかんねーよ///?」 はやり「じゃあ次ははやりの番ですね!負けませんよ!」 京太郎「なんでソコでやる気を出すんですか!?」 はやり「女の意地ってやつだね!ごほん!」 ――同じく咳払いをしたはやりさんは、やっぱり席をたってこっちに向かってくる。これラジオ収録ですよ? そして、机の上に片膝を立てて座り、見事なそのオモチを反対側の手で持ち上げるようにしながら俺を見てこう言い放った。 はやり「うふふ、お姉さんが色々教えてア・ゲ・ル」ホホソメ 京太郎「うぐぅっ!?」 京太郎「はやりさんもなんて破壊力……」 はやり「その、すごく恥ずかしかったです///」 京太郎「これはあまりにも甲乙つけがたい……決めなければいけないのか!?」 京太郎「……決まりました」 咏「」ゴクリ はやり「」ゴクリ 京太郎「最初に言っておきます。どちらも非常に素晴らしい演技でした。台詞の魅力を十二分に引き出していたと思います」 京太郎「だからこそ非常に悩みました……。できることならどっちも勝ち、それでいいじゃないかとも」 京太郎「でもこれは勝負ということなので、泣く泣く勝敗を付けさせていただきました。今回の勝者は――」 京太郎「瑞原はやりさんです!」 咏「そ、そんな……わっかんねー」ガックリ はやり「や、やったー!やりました!」ワーイ 京太郎「って、このコーナーで時間使い切ってるじゃないですか!」 京太郎「咏さん、コールお願いします!」 咏「は?うん。それでは今週はここまで、来週もやるかは知らんけど、またねー。はぁ」 ―――― 京太郎「お疲れ様でしたー」 はやり「お疲れ様でした」 咏「お疲れぃ」 はやり「ラジオ楽しかったです!また呼んでくださいね!それじゃあはやりは失礼します!」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5698.html
3 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/10(火) 13 00 03.62 ID BN8rPPaYo [3/8] ‐==‐- ´ .. . . .. . .. . . . . .. . ` /. . . .. . . . . . . . . .. . . . . . . \ . . . .. . ./ . . . . . .. . . .. . . . . . . . ..丶 ∧ . . ./. . . . . . . . . .. . . . . . .. . . . ... . . . /⌒ . / . . .. . . . . . . . . .. . .ハ. . . .. . .. . . . (なんやのこの人……?) /. . . .. { . . . / . . . ,イ . . . . / }. . . .. . . . . . .. . ,'. . . . 八 . /  ̄ /. ./ / i|. /. .. . . . ..ノ . . . .. .. .. . ∨____/ / ∨ ∨. . / ... .  ̄} . . . .. . i. γヽ{ ∪  ̄` ___,} / /. / . / } . . . . .. . | .{ ∪ ̄`'/∨/ / . . . . .. . . | 人__ '' , / ./ . . . .. . . . . | . . . .ヽ ''' / /. /. . .. . . . . .|. . . .. .} \ .-, U イ ′ / . . . .. . . . . .| . . . ./ _ < . . ' /. . . __,._-‐─!. . . {、 / ̄´. . . .. | . . . i. /. . /  ̄`! . . | \ 〈 ___. . . .. . /| . . . | /. ./ |! . |// \⌒ヽ//`ー- |. . . |. / . / { . . |\ //\ V ////|. . .|. / ../ .. .{ \ /∧ i}//// | . . . | 【須賀京太郎】 <アイドルランク>(ファン人数) Fランクアイドル(0~1000) <容姿> B(56) <雀力> F(14) <歌唱力> F(15) <演技力> D(32) <特技> タコス作り <担当> 清水谷竜華(プロデューサー) 花田煌(マネージャー) 弘世菫(麻雀コーチ) 瑞原はやり(トレーナー) 竹井久(事務員見習い) <アイドル経歴> 雑誌特集 パンフレット サイン会 |. G | F | E | . D |. C | . B |. A | . S | SS |SSS―――┼―――――――――――――――――――――――――容姿 |lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll雀力 |lllllllllllllll歌唱力|lllllllllllllll演技力|llllllllllllllllllllllllllllllll <須賀京太郎のファン> 宮永照 宮永咲 蒲原智美 愛宕洋榎 愛宕絹恵 江口セーラ 鹿倉胡桃 染谷まこ 片岡優希 35 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/10(火) 22 33 37.75 ID 4mIrGtYHo [3/11] 【サイン会の前日 鶴賀】 それは――突然の事だったっす 桃子「須賀京太郎っすか?」 佳織「う、うん。知ってるかな?」 桃子「いえ、清澄の雑用をやってたことくらいしか……(本当は知ってるっすけど)」アセアセ 佳織「……新人のアイドルさんなんだけど、智美ちゃんがファンらしいの」 桃子「元部長さんが? へー、ジャニヲタ辞めたんすね」 佳織「あの佳織ちゃんがジャニヲタを辞めるなんて……ありえないよ」ガタガタガタガt 桃子「それもそうっす」タシカニ あの三食ジャニーズとかまぼこだけで生きている元部長が…… 新人アイドル、しかも顔が少しマシなだけの須賀京太郎のファンになるとは 佳織「それでね、今度智美ちゃんがその須賀君のサイン会に行くらしくて」 桃子「ははーん、なるほど! そこで私の出番って事っすね!」 佳織「うん。ちょっと様子を見てきてほしいの」 桃子「オーケーっすよ! どうせその日は何も予定無いですし」 佳織「あれ? 私……サイン会が何日か、言ったっけ?」キョトン 桃子「」ドキィッ 佳織「ふぇ?」オドオド 桃子「な、なんでもないっす! 大船に乗ったつもりで待ってるすよー!!」デーン 佳織「????」 私も少しだけ興味があるっす……須賀京太郎! 桃子「ふふふ」ニヤリ 桃子「須賀、京太郎!」デデーン 開幕コンマ判定 安価↓3 ゾロ目でモモのおもちを鷲掴み 00~29 桃子「やっぱダメっすね」 30~89 桃子「ふーん、結構悪くないっすね」 90~99 桃子「うぇっ……//」ドキドキ 48 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/10(火) 22 47 15.00 ID 4mIrGtYHo [4/11] 【サイン会 当日】 ザワザワ ガヤガヤ 京太郎「どうも、ありがとうございます」ニコッ イカ娘風のシスター「ありがとうなんだよ! このサイン、大切にするかも!」 京太郎「独特な格好ですね(声が部長に似てる)」アクシュ 刀を背負ったポニテ半ジーンズ「こ、これは魔術による、その……」カァッ 京太郎「お、男の人ですか」ギュッ 青髪ピアス「ぼかぁ幸せもんやなぁ! こないな男前に握手してもらえるなんて! ところで女装の趣味なんかは」ベラベラ 京太郎「ジャージですか?(胸でけぇ)」ゴクリ 炊飯器でなんでも作りそうな人「こんな格好で悪いじゃん。でもサインは大切にするじゃん」ニギニギ 京太郎「可愛い子だね、お母さんときたのか?」 ロリピンク教師「こう見えてもちゃんと大人なんですよー!!」プンプン 京太郎「日野さん!?」 馬面「いや、誰だよ!?」ガビーン ワイワイ キャッキャ 桃子「さて、潜入するっすよ」スゥゥゥゥ こんな列、わざわざ並ばなくても…… 桃子「(先頭に割り込むっす)」ニヤリ タタタタッ 京太郎「ん……?」 ラストチャンス! コンマ安価↓3 ゾロ目でモモのおっぱいモミモミっ!! モミモミっ!!! モミモミだって言ってんだろぉぉおぉぉ!? 00~29 京太郎「もう、終わりか」 30~89 京太郎「あれ、誰かいるような……」 90~99 京太郎「ダメですよ、そこの人!」 63 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/10(火) 23 00 29.24 ID 4mIrGtYHo [5/11] 桃子「(よし、誰にも気づかれてない)」タタタッ モヤァ~ 京太郎「あれ、誰かいるような……」 桃子「(次は私の番っす)」ニヤリ 京太郎「次の人、どうぞ」 桃子「今だ!」スゥッ 京太郎「え?」 桃子「次は私っすよ」 京太郎「鶴賀の東横……だっけ? ……いや、違う」 桃子「え?」 京太郎「確か次は……そこのゴーレムさんだったような?」 エリス的なゴーレム「……///」 褐色ゴスロリ「そうだ。確かに私達だった筈だ」 桃子「うぇ!?」 京太郎「ダメだぜ横入りしちゃ。並び直してくれよ」 桃子「(なっ!? 私が見えていたんすか!?)」ガビーン 京太郎「でも、なんで急に現れたんだ……?」ウーン 桃子「(どうやら違うみたいっすね。じゃあ、どうして?)」 エリス的なゴーレム「……//」ニギニギ 褐色ゴスロリ「よかったなエリス」 京太郎「ずっと後ろから目立ってましたよ」アハハ 桃子「(なるほど、単に目立つ奴の前に並んだから……)」ナットク トボトボ 桃子「(私を見ることが出来れば……あるいはと思ったっすけど)」チラッ 京太郎「ぐぁぁぁ!?」 エリス的なゴーレム「うぉぉぉ!」 . . . . . . . | |il \l\ | l !. | |ll \{\从八/|iト、从「 ! | |l| |ll l_」 | , , ,|l|, , , , ,|ll, , , ,小 八 |l| |l| / l . .| l\ |l| ー-― |l|.イ | .| . .| | 〕lト. ._ _ .. ≦ |l| . | | .| l 八 l l | | | 从川 --- 「\ 从 .| | リ .リ 八 )ハ l | .ル{斗≦/ } { /{ `ヽ厶イ . / / j/ \{\ .| |l |l 厶イ⌒ト . 桃子「やっぱダメっすね」ハァ カンッ!! 76 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/10(火) 23 17 00.75 ID 4mIrGtYHo [6/11] 【合宿準備 京太郎の部屋】 京太郎「えーっと、歯ブラシと歯磨き粉も入れて……」ガサゴソ 煌「酔い止めは入れました?」 京太郎「はい! バッチリです!」 煌「ふふっ、なら後は用意しておきました」 旅行カバン「」キラキラァァァン 京太郎「おぉぉ!!」 煌「後は明日に備えてゆっくり休むだけですね」 京太郎「いつもありがとうございます」 煌「これくらい当然じゃないかな?」クスッ 京太郎「煌さんには助けられっぱなしですよ」ハァ 煌「ふふっ。それは私だけじゃないから」 京太郎「本当にそうですよ、竜華さんや部長にも助けられっぱなしで」 煌「うん。みんな京太郎君の事が大好きだからね」 京太郎「あはは、照れますね」 照「(照だけに)」 京太郎「あ、そういえば明日からの合宿は……誰が来るんでしたっけ?」 煌「えーっと」カキカキ 龍門渕透華 清水谷竜華 花田煌 原村和 79 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/10(火) 23 20 36.36 ID 4mIrGtYHo [7/11] 煌「こんなかんじかな?」 / \ / / i ヽ / / ./| | ヽ . / i | | | |ヽ . i i i ′ | i. ./| | | | i .| | .| | / | | |i |‐|‐ト |i 斗‐|┼ i .| .| |. / /|八 |八 |_.レ'.._| 八/__.}/∨}/ | | 厶イ | ヽ{{ 午不か}/ 午示下}. | | | | 弋__ソ 弋__ソ レ' | | |ハ /| | | |ヽ} ' /´| | | | 人 _ /. .| | | /i | | ` ._ ィ i .| i. .| {/.人{ |/} 厂} ー .{ア}_l_ | i . ′ ,. -‐乂¨ ̄{¨ ¨} ¨八/}/ r<. 、 | | >、 / \\ | | // \ 照「私を忘れてる(照だけに)」 京太郎「へぇ……あ、でもあの人達は来ないんですか?」 煌「あの人?」 京太郎「ほら……あの」 安価 コンマが60以上orゾロ目で着いてくる IDが重複した場合はひとつずつズレます ↓1 宮永咲 ↓2 弘世菫 ↓3 片岡優希 ↓4 竹井久 ↓5 瑞原はやり ↓6 大星淡 ↓7 宮永照 ↓8 ハギヨシ ↓9 染谷まこ ↓10 八尺様 124 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/10(火) 23 37 12.09 ID 4mIrGtYHo [9/11] 京太郎「ほら、ハギヨシさんとかですよ!」 煌「あ、それもそうですね」 プルルル プルルルル 京太郎「ん?」 照「あ、そうそう。大阪旅行、うん。咲も来る?」デンワチュウ 京太郎「」 煌「これは……」 照「え? 他にも呼ぶ? うん、別にいいけど」デンワチュウ 京太郎「て、照さん?」 ピポパッ 照「あ、菫。実はかくかくしかじか」デンワチュウ 京太郎「……」 煌「……」 ~~~そして翌日~~~ 照「これだけ呼べた」ドヤッ 咲「楽しみだね!」 優希「大阪旅行だじぇー!」 和「あまりはしゃいじゃダメですよ、ゆーき」 菫「楽しみだな」 淡「別に……。ただタコ焼き食べたいだけだし」プイッ はやり「しっかり特訓しようねっ☆」キャピィン ゾロゾロ 竜華「」 煌「」 京太郎「多すぎだろ!?」 透華「わ、私が目立っていませんわ!!」ガビーン ハギヨシ「透華お嬢様も負けていませんよ」フフッ 社長「では、しっかり修行してきたまえ!」 京太郎「あれ、社長いつのまにか元気に……?」 社長「あぁ~」 京太郎「気のせいか?」 久「お留守番は任せてね」バイバイ 京太郎「はい! お土産買ってきます!!」 ~~~なんやかんやで出発!~~~ 134 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/10(火) 23 44 59.49 ID 4mIrGtYHo [10/11] 【行きの貸切ジェット 提供 龍門渕グループ】 照「とうたんイェイ~♪」 咲「とうたんイェイ~♪」 優希「とうたんイェイ~♪」 和「とうたんイェイ~♪」 菫「とうたんイェイ~♪」 淡「とうたんイェイ~♪」 はやり「とうたんイェイ~♪」 竜華「とうたんイェイ~♪」 煌「とうたんイェイ~♪」 京太郎「とうたんイェイ~♪」 / ,ィ| / \_,..----、 / /ヾ| //| iヾ゛\ | | ト、゙、V//| | ゙、 リ /| | |゙゙゛`!´"'| i | | |/ | | / |.|、 | .| / ---|┼-| .ー||-iー‐- ゙、| な、なぁぁぁ!? / ___/_゙、 | リ__\__ \ /  ̄`/ュ iヾ \ "´ュ iナ'´ \ /イ / i i 、 ヽ // 〈 i /|i ' /| i、 | ( ゙、 | ソ丶 r―‐、 ,イ/ 人リ /\ ヾ、 / ゝ、 `ー―' _/レ'/ / \__,ノ、 / | Y /r‐|` ー ' |`V / / ー- . ヾ===ァ'´ __/_) |-'´ `゙ヽ ./ | .∠____ ) // / 、 / /| /ヽ∧ ! / \ i ( i | / , -'´ ヽ / / i゙、゙、 ゙、 ( / i \_,ノ ) | ( .,ヘ V / ,ハ | \/ \ \// /  ̄`ヽ ハギヨシ「お誕生日おめでとうございます」 透華「そ、そんな!? わざわざ私の誕生日を……!?」 一同「おめでとーか!!」デデーン 透華「み、皆さん……」ジワッ ,r'´ ̄ ̄ ヽ /丶 _//∧ l'⌒ヽ-、_ / .|ヽヾ、7/ i| ヘ_/^ヽヘヘ / |,⊥ミ∨/l| ト、 └ユ ! .i ト、 ヘ ヌ二¨ ヽ ! 今11月ですわよ!! l |L_ ゝヽ_/ ャ=ヽャ‐ \-、 i '7_,.≧=- }} ′ ` ヘ. \ヽ j ff'"⌒ヽ ノ 、_,.ィi レ、 l ヘ!. ノ 7弋 , , 爪从 . i l. イ ハ tt彳′ l j ∧ // ! ト、 _ ‐ュ /7 ∧ヘ. /,ハ ヽヽヘ f二´-‐'' " / / / ヘ ヘ { { ヘ 丶 ゝ _ /∨ / ヘ ヘ ヘ! ゝ \ ` ┬-‐' /! ィ′ ヘ ヘ 丶、_ \ 广弌irく l l 〉────'┼‐-、 !| \ Y/ /V ≦ヽl ∨ l ト !| ハ l| ィイ' 7ソトミ、 ヽヽ ヽ. l l 厶イ j ∧/ //ハヽ\∨lルl l f´ i ノ/ ∧∨// ヾ 、 ゝ'.ノ l 一同「「「「「「「」」」」」」」」ガーン ※スレ内の時系列と現実の時系列は異なっております 154 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/10(火) 23 59 03.27 ID 4mIrGtYHo [11/11] 141 だったらかおりんもジャニヲタです(半ギレ) ~~~なんやかんやで到着~~~ 透華「到着ですわ!!」 京太郎「こ、ここが修行場!?」 <<妙神山>> 看板【この門をくぐるもの、一切の望みを捨てよ!】デデーン 京太郎「なんだか物騒な事が書いてあるんですが、それは……」 竜華「ここは地元でも有名な温泉宿やで!」 咲「うわぁ、鬼の像があるよ!」 優希「門にも顔が付いてるじょ!」ツンツン 和「不気味ですね」 はやり「美容にも効果あるといいなぁ」フフフ 煌「どこから入ればいいんでしょう?」 ワイワイガヤガヤ 透華「ああもう!! 多すぎですわ!!」ムキー ハギヨシ「いいではないですか、賑やかで」クスクス 京太郎「よし、早速入ってみよう」ギィィィィ _≧‐-ミ 、 ┌vヘ. _ ⌒ `ー-ミ/ 丿 /^\ア" __, -‐_ ___ V ^ 廴/ /^ー ~^ '⌒^ヽゝ ∨ / /令=令x ',. / /VvVvVl| ,. {/l _」Lk┴'¨¨¨¨二L」,_j ′ i| j_」'´'´ ___ r=ミ、 ,ハ ,. 八_jLノ'^^K /'⌒゙ 、 ん′ ′. | |´( , ′ ,ノ | , `ーヘ、 く__ア ′ _j」. { ) 、、 _/ 」L '^^. L」廴_jL」___j|  ̄| ≦=x ノ ∧ //^Y⌒ 、. __ -‐ "´ | ',У, ′ {__彡イ‐- _. 〈 ! У /{__彡ヘ 〉. \ / ‘、 / , ′}__彡イ イ. | \/ ,/ / {__彡イ/ ′x=x , ,゙ / / {__彡イ / イ|℃}. ‘ { / / {___彡' _,ィj「}叱_ノ |∧ ,/ / {__彡}ィj「}} '′ 管理人「あら、お客さんですか?」 京太郎「あ、どうも。予約していた者なんですが……」 管理人「なるほど、修行希望の……」フフッ 京太郎「!?」ゾクッ 170 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 00 08 16.93 ID KNzvG3h+o [1/9] 165 大して内容に関係ないから気にせんでええよー 透華「まずは部屋に案内して頂きたいですわ」 管理人「そうですね。移動でお疲れでしょう」 ハギヨシ「私が荷物をお運びいたします」スッ 京太郎「いやいや、俺が持ちますよ!」 咲「きゃあっ!? 猿がいるよ!」 優希「うぉぉぉ! 本物の猿だじぇぇ!」 猿「うきゃきゃっ!」 煌「猿がいる温泉宿なんですね」フムフム 淡「猿とかすごっ! 服来てるし!!」キラキラッ 菫「あまり近づくと引っかかれるぞ」 猿「……ふむ」チラッ 京太郎「おーい、お前達ー!」 猿「(なるほど、これはヤツ以来の逸材かもしれんな)」ウキャキャッ 京太郎「何してるんだー? 行くぞー!」 咲「あ、待ってよー!」 照「猿の元からさる(猿だけに)」 菫「……」 はやり「早く温泉で温まりたいね☆」ブルブル 管理人「こちらです」 京太郎「あ、はい!(美人だけどなんで角が生えてるんだこの人)」 そうこうして、部屋に案内されたみんな 180 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 00 22 09.38 ID KNzvG3h+o [2/9] 176 原作でモテまくってたのに、最終回がアレなのよね…… 京ちゃんと対極の境遇だったのに二次創作では扱いが割と似てるよねー 【みんなの部屋】 イェーイ! ハシャグジョー! ワーイ! オンセンイコー! サンセーイ! 竜華「全く、旅行に来たわけやないのに」ハァ 京太郎「そうですね。ここで修行を頑張らないと……!!」 菫「そう気を張っていればいいというものじゃないさ」 京太郎「菫さん!」 菫「目的を追うのはいいが、経過も大事だ」フッ 京太郎「経過?」 菫「楽しく目指そうじゃないか、トップアイドル。その為に私達はいるんだ」 京太郎「菫さん……」ジーン 淡「おかしい、こんなの菫じゃない」 照「完全に同意」 管理人「修行コースはどうしますか?」 透華「さて、どうしましょう」 煌「一番ハードなコースはありますか?」ワクワク 管理人「死を覚悟するのであれば、あることはありますが」 煌「え?」 透華「死……?」 管理人「今までこれを受けて生きていたのは二人だけです(一人例外もいますが)」バッサリ 竜華「あかん!! そんなのさせられへんて!」 京太郎「で、でも! それくらいやらないと……」ガタガタガタガタ 管理人「見返りは大きいですよ?」 竜華「ダメや!!」 管理人「そうですか、それならハードコースくらいにしておきましょう」 ハギヨシ「それでもハードなんですね」 管理人「よくて、右手一本ですみますよ」ニッコリ 一同「「「「歌の練習って一体……!!?」」」」ガビーン 188 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 00 30 58.21 ID KNzvG3h+o [3/9] 管理人「とりあえず、まずは温泉に入られてはどうですか?」 京太郎「あ、いいっすね」 竜華「せやな。まずはさっぱりせんと」 管理人「ではこちらへ」 京太郎「温泉かー、楽しみだな」ワクワク ハギヨシ「私は少々荷物の片付けをしたいので、京太郎君はお先にどうぞ」 京太郎「え? ハギヨシさんは来ないんですか?」 ハギヨシ「また夜にご一緒しましょう」フフ 京太郎「はい! 流し合いっこしましょうね!」 ナニシテルンダジョー ハヤクイコウヨー 京太郎「おう、今行く!」スタコラサッサー 【男湯】 カポーン 京太郎「お、おぉぉぉぉ!? ひれぇぇぇ!!」 なんて開放感溢れる浴場なんだ!! 京太郎「早速入ろうっと」チャプッ 猿「うきゃっ!」ペシッ 京太郎「いでっ!?」 猿「きゃきゃきゃっ!!」 京太郎「な、なんだよ猿!?」 猿「うきゃきゃっ!」ビシッ 京太郎「え? 体をちゃんと洗えって?」 猿「うきゃ」コクリ 京太郎「そーだな。悪い」テクテク ゴシゴシゴシ 京太郎「って!? 猿がいるんですけどぉぉぉぉぉお!?」ガビーン バンダナの男「ん? 誰かいるのか……?」チャポン 京太郎「え?」クルッ バンダナの男「よっ。ゆっくり浸かっていけよ」 京太郎「どうも」ペコリ 198 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 00 38 06.89 ID KNzvG3h+o [4/9] 【一方その頃 女湯】 優希「のどちゃんのおっぱいまた大きくなってるじぇ!!」 和「ゆ、ゆーき!!」カァッ はやり「うわー! 凄いボリュームだね!」タユン 竜華「胸なんて、飾りみたいなもんやし」ユサユサ 咲「……」ツル 照「……」ペターン 淡「くっ……」 菫「別に胸なんて大した問題じゃないさ」 透華「……」ゴゴゴゴゴゴッ 優希「揉みしだいてやるじょー!」モミッ 和「ひゃっ!? ゆ、ゆーき……// やめっ!」カァッ 竜華「何やっとんねん……」 煌「油断はよくないんじゃないかな?」キラーン 竜華「ふぇっ?」 モミィッ! 竜華「ひゃぁぁぁぁぁ!?」マッカッカッカ 煌「おー、これはいいですね」モミモミ 竜華「んぁっ、だ、ダメやっ、てぇ……//」 咲「あわわわ!!」 淡「呼んだ?」 照「淡だけに」 菫「言ってる場合か」ハァ 【男湯】 キャー! イヤン! ヤメェヤ! アン! ンァァ! 京太郎「……」ギンギン バンダナの男「……」ギンギン 猿「……」ギンギン 203 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 00 45 16.22 ID KNzvG3h+o [5/9] バンダナの男「なぁ、兄ちゃん」 京太郎「あ、はい」 バンダナの男「隣のアレ、全部おまえの連れ?」ブルブルブル 京太郎「ええ、まぁ」ゴシゴシ x<ニ/ /7 /ニj i 、 ニニニイ / /ニ' /ニニ| i ト、 ', i ニニニ/ /,イ-y' /=ニ__i | iニ, ', | x< i /// / X、_ i !', 7ニニV i ! 〃 ! / // ̄7 ,>==zヽ、 i | .! / >-V i', | i r-{ / /´ .i/ 0 `ヾ- i 7 .i / i ! i jV { 7 V/ ', ,' .i,' .| /=ニ===zリ-i √V ヘ ヽ {` ≧-====テ彡 / i / 0 ヾ.,. '∨ / \ ヽ . ,'〃ミx、 .,. '/ i ,'i ヽ-', . . ' , i `ヽ、__, ' , i i / 7 .ハ . / . , '´/ /j j ,' /i/ .ヘ . ′ / ;.イ / 7 /| / ,イ〃 ヽ _ ,'イ〃 / イ | ,'-イt \ `ヽ二ニユ ,イ '´ ./´ .レ;';';';'ヽ、 \ ,. <;';';';';';';'\ ,イ ヽ、 ,. <;';';';';';';';';';'>x_ /;';';';';';';' ̄ヽ バンダナの男「うぉぉぉぉぉおぉ!なんでや!? 所詮男は顔なんかぁぁぁぁ!?」チナミダ 京太郎「」 猿「わきゃきゃっ!」 バンダナの男「こうなったらもー覗く!! 覗くしか無いんや!!」 京太郎「うぇえぇ!?」 バンダナの男「止めてくれるな! 情けは世の為、人の為ぇぇえ!!」ダダダッ 京太郎「だ、ダメですよ!! 覗きなんて!!」アセアセ バンダナの男「お前はどっちの味方なんだ!?」 京太郎「そ、それは……」 選択安価↓3 1 そらもう、男の味方ですよ(ゲス顔) 2 ダメなものはダメ! 210 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 00 50 58.12 ID KNzvG3h+o [6/9] 京太郎「ダメなものはダメですってば!!」 バンダナの男「こ、この……!!」ギリッ !、 ,.ィ ,// ヽー─----- .,, l `ゝ、 , '!、,. ''" 'ー'" ,'、,_____ \ ゙ヽ. 、 ! `"''',.=マ゙ ,' `ヽ、 `~''丶、ヽ ヘ lヽ l ,.'´,.ュ、 ゙', ,. -‐- .,_ ,' `丶、 ゙ヽ.', ヘ ! ゙!、! l {., ,ノ リ゙ ,/ ,.ィ k-、 ヽ.l`"'''' ー- 、 \ ヘ l ト-‐='''"゙ヽ ゝ= =‐'/ ,/ ! ,/ ヽ. ヘし',゙ `丶、 ゙! .} ,. ノ゙,r- 、 《 ( ,! ,! } ゙! ,! ''"´l,' ,/ .,' \\ \/ / ,/ リ i ll i' ,' \゙ヽ / / ,ノ ! !! └'" ,/`ゝ-‐' ~ /j ≦.,,__ l 八_ _,,/ て , ゙i } `ヽ、 l _,,, ̄ i.゙‐''フ 、---- .,,_ `~/ ,,..ノl ,ィ ハ. 、 `ヽ_ヽ_ l. !. ', ,rェゝゞ、て_ , 〉 ィ=‐''''"゙''i , / {. ヘ ゝ_ヾゝ、.,,_ ,./メヾ~\ !. V ',ゝニィー゙ `7 / _{ r‐'i / / , ' ヘ_ ヘ." ゝ、ゝ、 マ ,.-ヤァ=ッヽ ;' V ヘ / / /゙ _`ニィ , ' ,'、,ィ"´ ヘ ヘ ゙'ー,/ / ` バ `i. V ヘ / ,/ / ゙i l ,1 , ,l、`''丶., ゝゝヽii. i./ / ! V ', i 厶ノ l l,i'l. レッィヤ 、 ヽ',i、',ゞ、',',ゞ 仆 (・) l. V ゙! ri. ゝ..,,.... ,ュ,'゙ヘ. l l' ,〉メl゙ ` ゙ヽ.,ヘヾ ゝ `ゞl;ト ,' _,.、ヽ i l i、 _,,! 二};ゝ-'゙ l/ヘ ヽ ヘ ゞム彡三 マ ム- ,,! } ~ ,! ゙ヽ くοム゙!-- ,,、 ',゙ (・) ゙. 彡彡三 ゙ 、_,,.ム l! l l ! `" く_,ィフ ,〉 i、',~ i 彡彡=`ヾー‐'''""~_,,ニ、 ,!l l l l r-、 "''゙ ト、ヽ /;;f´ ,..、 u "",. ''"゙l ! ,/ l ,',. - ッ゙ l! ,' ,〉 /ヽ!"~ヾ、 、,.ィ彡;;;;;i、 '゙ヾム ,. ''ヽ ! l ´`! ' ,ヘ. l / / ,r ヘ. ,' ゙ヽ、 ゙ゞ' ; /彡 '';; ! _,.イ ゙! !-‐''" V / ヽ.,,__,ノ/ / / ,/ ,! ,. =、゙!彡彡彡 _,,.. r '" l! l,,.ィ" ゙ー' ヘ ゝ‐'゙ ムノ l ,' '"ヘゝ .,, ,,ィ=''"l! l! _,l!、,.ィ´ ヘ ,.--、{二} /ヽ, ,ィヘ,! ! ,. -i! ゝ〃ヽ l! _》='"´ ∨ !'"ヽニ"/ ヽ从 、,.゙!υlヽ、ヽ.__,,.ィー''" 弋ヽ_ヽ、ヾ、"´ ゝ、ヽ\ヾ、 `''r-ヽヾ、 {! ベヽヾ、 ,.ィ" ゝ ゝ、ヽヾ、 / ` ゞ.ヘ. ,,,.--‐-‐;;" ヘ.,ヘrュ,,_ ,〃 ;; _,,.ィ゙ `ヾ、K"ヽゝ-‐y--y=彡彡彡 ,, - ..,,_ ヽ三ミ三三三彡彡彡" i"r''"~`"''`''==ェ- ..,,,,,,,,,__|//////彡彡" ヾ;、 y''""''ー-- 三三三三!/////彡" ヾ;、 ヘ ''" 三三三'゙(/////" 京太郎「」 バンダナの男「このアホ! 間抜け!! 偽善者!! お前みたいなのがいるから戦争がなくならんのやー!!」 京太郎「あの、意味が……」 バンダナの男「ええい!! しばらく黙ってろ!!」つ黙 京太郎「っ?! むぐぐぐぐ!!」ジタバタ バンダナの男「わははははーっ!! これでチャックメイトじゃー!!!」つ覗 管理人「何してるんですか?」ニコニコ バンダナの男」 管理人「随分と楽しそうですけど」ニコニコ バンダナの男「」アセダラダラダラ 219 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 00 59 21.48 ID KNzvG3h+o [7/9] ~数分後~ バンダナの男「」チーン 管理人「全く、この人はいつまでたっても」プンスカ 京太郎「……お、恐ろしい」ガタガタガタガタ 管理人「それに引き換え、貴方は真面目なんですね。欲を抑えて立派ですよ」ニッコリ 京太郎「あ、いえ。その、なんつーか……」ポリポリ 管理人「?」 京太郎「本当は覗きたくてたまらなかったんです」 管理人「は?」ジャキッ 京太郎「でも、裏切りたくなかったんですよ」 管理人「……え?」キョトン 京太郎「隣にいるのは、みんないい人たちばかりで……その、俺なんかの為によくしてくれていて」 管理人「……」 京太郎「だから、その期待を裏切りたくなかったというか、その……うまく言えないんですけど」 管理人「……真っ直ぐな人」ボソッ 京太郎「え?」 管理人「貴方みたいな人間、久しく見ていないような気がします」クスクス 京太郎「え? 人間?」キョトン 管理人「これは、ほんのサービスです」スッ デコチュッ 京太郎「うぇっ!?」ドキッ 管理人「修行がうまくいく、おまじないですよ」ウィンク 京太郎「あ、ありがとうございます……//」カァッ 管理人「ふふっ、頑張ってくださいね」 バンダナの男「どぼぢておれだげ」ガクッ 猿「お前も随分とモテておるくせにのぅ。鈍感な奴じゃ」アキレ ※ 女神の加護を手に入れた 合宿期間中 特訓の成功率が上昇します 287 名前: ◆RwzBVKdQPM[sage] 投稿日:2013/09/11(水) 21 50 47.09 ID vHn9E3i+o [2/13] 透華「特訓ですわ!!」 京太郎「AこいAこい!!」 デデーン 京太郎「うわぁぁぁぁぁ!?」 淡「ばーか! Bに決まってんじゃん!! 何やってんの!」ポカポカ 竜華「これはヤバイで……」ガタガタ 咲「来る、来るよぉ……シェリフが来るよ!」 和「あ、あぁぁ……!」ブルブル 優希「逃しはしないじょ」ニヤリ はやり「これではやり達が一位だね!」 煌「油断はできませんね」 菫「この弓は高いが、中々強いな」 照「買わないで盗もう」 菫「ダメだ」 透華「な、何をやっていますの……?」ワナワナ ハギヨシ「ドカポンチームマッチですね」 ウォォォオシェリフブッコロシテヤラァァア! ヤメロッテ! モッテテヨカッタエアバック! シェリフガマケタ……ダト? イェェェァァァァ!!? カッタァァァァ!? 透華「」 289 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 22 05 07.40 ID vHn9E3i+o [3/13] 【数分後】 透華「な、なんでドカポンなんてやっていますの?!」プンプン 竜華「いやぁ……やってみるとおもろいんや、これ」テヘッ 京太郎「すいません」ペコリ 透華「なんでよりによって貴方達が!!」ムカムカ 煌「まぁ、息抜きは大事かなって」アハハ ソウダソウダー ベツニイイジェー! タノシモウヨ! 透華「ダメですわ!」 優希「つまらないじょー!」 照「京ちゃんと遊びたい」 咲「わ、私も!」 和「私も……その……//」カァッ 淡「いいじゃん、アイドルなんてやめちゃえばさー」 / \ _人_ ' ` 、 \ Υ'/ / / ト、 丶 / / / | | | Χ } .′ il / | | \ | / `、 リ | i | _|l__∧ト、八 | メ´ ニニ / } | | | || `>x、\| 斗チ芋ミ、∨ ,′j | |l l|斗示芋ミ、 ''h! } ,′ , ねっ! |l 八 И'h! } 乂___ノ / / || \| 乂__ノ /i/i/ / /l| .八 ゝ /i/i/i i / / / / | ‘,\ ハ r ア /l/ / / | ト、 込、 _ノ // ,イ l| |l l\ \> .,_ /∨ /l| 八_ |ヽ. 八l_\ \-─=ー ァ--< / / 八 { \ `ヽ | | ./ /´ ハ 〕 { 〉 ,′ / ` ヽ \∧ | |/─、_ / |∨ __ Ⅴ__=| / 〕\ \ | | Y´ \\.ノ (`ヽ \\) | ,′ \ 丶 はやり「あらら☆」 煌「しょうがない人達ですね」 菫「全くだ。高校生にもなって落ち着きのない」ハァ 透華「はぁ……」 293 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 22 16 18.78 ID vHn9E3i+o [4/13] 菫「しょうがない、今日は別行動を取ろう」 煌「別行動?」 菫「今日一日、このぽんこつ共は私が面倒を見る。外にでも連れて行けば機嫌も直るさ」 ダレガポンコツダジョー! ヒドイヨ! スミレニハイワレタクナイ! ドウカン! 菫「世話の焼ける」ヤレヤレ 竜華「みんなの面倒は弘世さんが見てくれるとして」チラッ 透華「問題はこちらの行動ですわね」 京太郎「え?」 はやり「京太郎君はどうしたいのかな?」 京太郎「オレは……」 透華「勿論、特訓なのでしょう?」 煌「京太郎君……?」 京太郎「うーんと」 選択安価 ↓3 1 街に繰り出す 2 旅館でゆっくりする 3 レッスンする 4 ウルトラスペシャルデンジャラス&ハード修業コース 309 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 22 26 34.08 ID vHn9E3i+o [5/13] 京太郎「やっぱりレッスンしたいです!」 透華「そう! その意気ですわ!」キラキラ 優希「京太郎、遊びに行かないのか……?」ウルウル 照「京ちゃん……」 咲「……」 和「仕方、ありませんよね」ウツムキ 京太郎「ごめんみんな。でも俺、やらないと……」 菫「君が謝る必要はないさ。元々私達は勝手に着いてきたんだからな」 京太郎「菫さん……」 菫「君を応援する一人として、成長を心待ちにしているよ」ニコッ 京太郎「はいっ!」 淡「おえー」 -─===‐-ミ ´. . . . . . . . . . . . 、/. . . . . . . . . . . . . . . \. . . . . . . . . . . . ト、 . . . . `、. . . . . . . . .|. . . . | \. . . . ',. . . . . . . |. . . . | \|. . .. . |. . | |. ‐/、|. . l . | -‐. |、. . .. . |. . | |. / |. . 八ノ ハ . | . .. 八. |┬─┬}/ ┬‐┬‐ . . |`ヽ}. /⌒ヽ} | | 三 | | .'. . |. { '└─┘  ̄ └‐┘ l. . |人_ u j. . |i. . . .> )‐┤ イ.l 'i. . . i . _;〕ト _/| h ≦. . .| 八/ト、. . |/⌒ 、_| | | | ト、`〉、|/| \{ .,_ \| |/ ハ / ヽ > | ノ / ∧ 照「げろげろー」 透華「さぁ、早速行きますわよ!」ガシッ 京太郎「あ、ちょっ……」 透華「私がしっかり面倒見て差し上げますわ!」グイグイ 京太郎「はいっ!」 竜華「あっ……」 はやり「ほら、行こうよ?」 煌「清水谷さん?」 竜華「う、ううん? なんでも、あらへん」 ハギヨシ「では参りましょうか」 317 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 22 37 51.86 ID vHn9E3i+o [6/13] 【妙神山 修行場】 透華「では早速特訓を開始しますわ!」 京太郎「お願いします!」 竜華「(さっきは龍門渕の人に先越されたけど、うちやってこの日の為に準備してきたんや)」ギュッ 一週間前から徹夜して、京太郎君の為に色んな特訓を考えた せやから、この合宿でうちも役に立てることを証明してみせたる! 竜華「……!」メラメラ はやり「今日も頑張ろうねっ☆」 煌「頑張りましょう!」 竜華「それじゃあ、早速今日のメニュー……」 透華「今日は私が特性メニューを作ってきましたわ!」バーン 竜華「え?」 京太郎「へぇ、見せてもらってもいいですか」 透華「この日の為に二週間も前から徹夜して考えましたのよ?」フフフ 京太郎「凄い、こんなに緻密な事まで……流石ですね!」 竜華「……ほんまに、凄い」 透華「ふふっ、これくらいのこと出来て当然ですわ」ニッコリ 竜華「あっ」カサッ 京太郎「あれ? 竜華さんどうしたんですか?」 竜華「う、ううん! なんでもあらへんよ」サッ クシャクシャ! 京太郎「???」 透華「さぁ、それじゃあ始めますわよ!」バーン はやり「頑張ろうね!」 煌「清水谷さん?」 竜華「……」 選択安価 ↓3 1 容姿 2 雀力 3 歌唱力 4 演技力 5 はやりんスペシャル☆ 333 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 22 46 48.27 ID vHn9E3i+o [7/13] 京太郎「歌の練習ですね」ンアー 透華「そもそも、音程が取れないのに歌おうとするからいけないんですのよ」ペシッ 京太郎「え?」 透華「まずは音楽の勉強から始めますわ」 黒板「」デデーン 京太郎「うわぁ、おたまじゃくしがいっぱいだー」 透華「やはり音符も読めませんのね」ガックリ 竜華「(うち、そないなことも気づかなかった……)」 はやり「どうりで中々音程が治らないだねー」 煌「灯台下暗しですね!」 透華「ではまず、楽譜が読めることを最低の目標としますわ」 京太郎「はい!」 竜華「(これで上手くいくなら、うちは……)」ショボン コンマ安価↓3 ゾロ目で大成功 00~19 失敗 歌唱力+1 20~79 成功 歌唱力+3 80~99 大成功! 歌唱力+5 349 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 22 57 53.93 ID vHn9E3i+o [8/13] 透華「と、なるわけですわ」ビシッ 京太郎「はへらはひへ~」グルグル 透華「だらしないですわね」ハァ 京太郎「で、でもなんとなく分かってきましたよ?」キリッ 透華「では試しに……」スッ ラジカセ「」カチッ 京太郎「アスファルト↑ タイヤを切りつけながら↑↑ 暗闇↑↑ 走り抜けるぅぅ↑↑」 透華「あがががっ!?」ビクビク 竜華「凄い、うまくなっとる……」 煌「こんなに変わるなんて」ウルウル はやり「成長したね……」グスグス 透華「こ、これで成長してるんですの……?」コンワク 京太郎「俺、前に進んでる!?」ヤッター 竜華「……」ズキッ 透華「と、とにかく続けますわよ」フラフラ 京太郎「お願いします! 龍門渕さん!」ニコニコ コンマ安価↓3 ゾロ目で大成功 00~19 失敗 歌唱力+1 20~89 成功 歌唱力+3 90~99 大成功! 歌唱力+5 379 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 23 14 09.73 ID vHn9E3i+o [10/13] 京太郎「なるほど、分かってきました」 透華「本当ですの?」ジトーッ 京太郎「聞いていてください」スッ 竜華「……」 ラジカセ「」カチッ 京太郎「こ~た~えが、見つか~らない♪ も~どかしさで~いつか~らか♪」 透華「!?」 京太郎「空ま~わり、し~ていた♪ 違う誰かの~も~とへ~ゆく君を~♪」 竜華「(違う、誰かの元へ……)」ドクンッ 京太郎「責められる筈もない~♪ なん~となく~気~づ~ていてた~君の~迷いに~♪」 煌「!?」 京太郎「ゆ~め~である~ように~♪ ひと~みを~! 閉~じてーあのー日を思う~♪」 はやり「凄い……ちゃんと聞いていられる」 京太郎「か~ぜ~に抱か~れて~♪ 笑っていた~二人~♪」 竜華「うっ、ぐすっ……うぇぇぇ……」ポロポロ 京太郎「え?」ピタッ 煌「清水谷さん……?」 透華「泣くほどの歌でも無いと……」 竜華「っ!!」ダダダッ ガラガラッ!! 京太郎「竜華さん!?」 歌唱力が大上昇した!! 歌唱力がEになったお!! 京太郎「オヤジの好きな歌だったんだけどな……」 煌「多分ですけど選曲は関係ないかと」 386 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 23 22 25.64 ID vHn9E3i+o [11/13] 京太郎「それにしても竜華さん、大丈夫かな……?」 透華「きっとあまりの成長ぶりに感動したんですわ!」ドヤァ 京太郎「そ、そうだったのか!?」ガビーン はやり「確かにすっごく上手になったね♪ でも、プロとしてはまだまだかな?」 煌「(これで音楽関連の営業を増やしても大丈夫かな?)」ヤッタ 透華「では、特訓を続けますわよ!」 京太郎「あ、でも……」 透華「どうかしましたの?」キョトン 京太郎「あ、えと……」 はやり「何か考え事?」 京太郎「……」 選択安価↓3 1 このままデュエル続行だ! 2 男ならぁぁぁぁぁ!!! 403 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 23 38 21.41 ID vHn9E3i+o [12/13] 397 龍門渕監禁エンドォ……(小声) というのは冗談で、透華Pの誕生や! 京太郎「あの、今日はここまででいいですか?」 / \_/\-―‐-y'´ \ /-‐y'" ,ヘ ヽ / ∧ \ / ! \ヽ/ //i ヽ , !. |'"´`゙ y''"´ ´| i | | i | /′ | i .|. i | ハ| 〈.! | | | !/ / |! ヾ、 |ハ | / 廾ー-_、__, )!、_,._-‐┤ .゙、 / /./ fr、)) /′ fr、i) ゙、 `、 /.イ ∧| ゛'" `゙'" ト、 丶. /// ハ._ヾ⊂⊃ ⊂⊃ !人 ヾ、、 i/ i ,i 〈 `,! / .リ ) i、 ヽ!. /リ 、ソ Y´;/i\. ∠ニゝ ,..イ / |ノ ノ / 、 ヽ! `ー---イ´| . . `ヽ/ / \/ / Y´ . . \ \ / | . . . / イ、 \ 透華「はへ? これからだといいますのに?」 京太郎「すいません! 後でまた説明しますから!」タタタ ガラガラ 煌「京太郎君!?」 京太郎「すいません!」 ピシャッ 透華「一体どうしたんですの……?」 はやり「やっぱり男の子だねー」クスクス 煌「うん、やっぱり京太郎君はこうじゃなくちゃ!」 透華「……???」 【妙神山 京太郎達の部屋】 竜華「うぅっ……うち、なんの為にここにおるんや」ウツムキ 京太郎君の力になれないで、何がプロデューサーや! 龍門渕さんの方が……ずっと向いとるやん 竜華「いらん子……なんかな?」 ダダダダッ!! 竜華「!?」 ガラガラ! 京太郎「竜華さん!!」 竜華「っ……!?」ゴシゴシ 京太郎「膝枕してください!!」デーン 竜華「ふぇっ?」キョトン 京太郎「ぐはっ!? は、早くしないと……俺、死んじ……」ガクガクガク 竜華「なっ!? なんやて! まさか怜の病気をもろたんか!?」 416 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/11(水) 23 53 59.59 ID vHn9E3i+o [13/13] 京太郎「も、もうだめぽ……」ガクガク 竜華「しっかりしぃ! 今膝枕したるで!」スッ ムニュン 京太郎「……はわぁ」ムニュムニュ 竜華「大丈夫? 痛いところあらへん?」サスサス 京太郎「……凄く気持ちいいです! ずっとこうしていたいくらいですよ」ポワァァァン 竜華「あ、あほ! 何言うとるねん……//」カァッ 京太郎「気持ちいぃなぁ」スリスリ /.......... / | ハ ハ ..ノヽ..∧. /....../... / | | \ 斗-、 i ∧ '....../..{ 〃 { 弋{ 〃ヽ 廴 \ | ∧ i...../... | ト-| { \ ぅ 斗=ミ、 i | / ∧ |... 7.. | | | {_ ヽィ乏) ハ 入 φ / ∧ |ハ ヽr y 弌 弋辷ツ ′ 〉 / i / ∧ |{ i ∧〃_) ハ ` _厶ィ ハ | / ∧ |{弋 〈 ハ ゞ -'' 、 //// ´ } | / ∧ ` >へ i /// u / | / ∧ }. . -‐- 、 rー ' | / ∧ |.∧ V_ ノ イ | | / ∧ |... ゝ / | | | / ∧ |... > < 八 | | \_ |... i `¨ハ 〉 | |/ ̄ ̄ ̄〃 へ ^ヽ |... | 〉 / | | // ⌒ヽ.∧ |... |__// _/{ | | // V∧ r―|... / ./---、 ' ./ { | |_彡 ' V∧. ∧ { |... / // ̄ ̄ 7 | | |=- / V. / } ト| / 〃 / | | | ./ / V 竜華「全く、心配して損――」 京太郎「どうして……いなくなったんですか?」 竜華「え?」 京太郎「そんなに俺の歌、ダメでした?」 竜華「ちゃう!! そないなこと、あらへん……」ウツムキ 京太郎「じゃあ……どうして?」 竜華「それは……」ギュッ __,.ィ ̄ ̄`ヽ/ヽ__ > ´ ̄ / ` `、 、、 - ´ / ' } ヽ ヽ\ \ `  ̄ >' / , | ∧/! | } ヽ ヽ /,ィ / ' / /| _/,.ム斗}-/ ハ . {/.' ,| ,.|-}/-{ | / ,ィチ斧ミ }/ } | . / イ/{ ! ィ斧从}/ Vzソ ノ /イ , <__ ´// 从{ Vソ / / イ- 、 | {'{ { , ' /' ⌒ } | 从Ⅵ /. ノ | 叭 v_ ̄ヽ ,rー' 从 、 イj / / . < |' /}/ 、__ ´ } イ从/ | |/ 京太郎「ずっと一緒ですよ」 竜華「!?」ドクンッ 京太郎「約束したじゃないですか」 425 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/12(木) 00 06 24.54 ID lOhNI51to [1/7] 京太郎「だから……俺がトップアイドルになる日まで、いなくならないでください」 竜華「な、なんで、そないなこと……」ブルブル 京太郎「今日は……竜華さんのこと考えずに勝手なことばっかりしましたよね」 竜華「っ!」 京太郎「ごめんなさい。俺、妙に舞い上がって……大事なこと、忘れてました」 竜華「そんなの、そんなの……」ポタッポタッ 京太郎「やっぱり、俺は竜華さんじゃなきゃダメだって」 竜華「~~~っ!!」カァッ 京太郎「だからずっと……」 竜華「そんなの! そんなの口ではなんとでも……」 扉「」スーッ コロコロコロコロ (覗) パァァァァァ 竜華「あっ」ドクンッ ~~~~~ 京太郎「俺、竜華さんを悲しませちまった」ギリッ ザザッ 京太郎「やっぱり、竜華さんと一緒にトップアイドルを目指したい」 京太郎「あの日、竜華さんがいたから俺は……」 京太郎「竜華さんに褒めてもらいたい」 京太郎「竜華さんのちちしりふとももぺろぺろしたい」 京太郎「竜華さんに認めて貰いたい」 京太郎「竜華さんと一緒に……」 ザザッ 京太郎「夢を叶えたいんだ!!」 ~~~~~~ 竜華「うぅっ、ぐすっ……ヒック、あ、あほ! あほあほあほあほぉ!」ペチペチ 京太郎「透華、さん?」 竜華「なんで、なんでや……」ポロポロ 京太郎「……」 竜華「うちなんかより、龍門渕さんの方がええやん! うちなんて、うちなんて……」 426 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/12(木) 00 07 43.77 ID lOhNI51to [2/7] 竜華「うぅっ、ぐすっ……ヒック、あ、あほ! あほあほあほあほぉ!」ペチペチ 京太郎「竜華、さん?」 ←ここ 竜華「なんで、なんでや……」ポロポロ 京太郎「……」 竜華「うちなんかより、龍門渕さんの方がええやん! うちなんて、うちなんて……」 訂正で うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!?!!?!?!?!? やっちまったぁぁあああああああああああああああああ!??!?!?! 444 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/12(木) 00 24 05.60 ID lOhNI51to [3/7] 竜華「しかも、今透華さんって……いつの間に名前呼び会う関係なん? あてつけ?」エグエグ 京太郎「い、今のは誤植というか!? なんというか!?」アセアセ 竜華「……まぁ、それはええんやけど」ジトッ 京太郎「(いいんだ)」ホッ 竜華「うち、何もできひんのに……なんで? なんでうちにこだわるん?」 京太郎「それは……」 (覗) パァァァァ! ~~~~~ 竜華「事務所の為だけやない、京太郎君の為にも頑張るんや!」カキカキカキ ザザッ 竜華「やっぱり、京太郎君と一緒やないとダメやな」 竜華「あの日、京太郎君がいたからうちは…」 竜華「京太郎君に褒めてもらいたい」 竜華「京太郎君に膝枕して耳かきしてあげたい」 竜華「京太郎君に認めて貰いたい」 竜華「京太郎君と一緒に……」 ザザッ 竜華「夢を叶えたいんや!!」 ~~~~~~ 京太郎「……」ポロポロ 竜華「え?」 京太郎「お、俺……やっぱり竜華さんがいいです」 竜華「京太郎……君?」 京太郎「俺のプロデューサーは竜華さんじゃなきゃ、ダメなんです」ゴシゴシ 竜華「……アホ」ペチペチ 京太郎「竜華さん……」ギュッ 竜華「どこ触っとんねん」ペチッ 京太郎「おもちぃ……」ボソッ 竜華「この変態アイドル。こら、うちぐらいしか務まらんわ」ボソッ 京太郎「はい!」ニコッ ??「グギギギギギギギ」チナミダ ???「ふふっ。ありがとうございます」ナデナデ 452 名前: ◆RwzBVKdQPM[saga] 投稿日:2013/09/12(木) 00 37 23.28 ID lOhNI51to [4/7] 竜華「……なぁ、京太郎君」ナデナデ 京太郎「はい……」モニュモニュ 竜華「これからも頑張ろな」ナデナデ 京太郎「はい、頑張ります」ヒザマクラーン 竜華「うちも……頑張ったる」 京太郎「……一緒に、ですね」 竜華「アホ!! 後でイヤやて言うても遅いで!!」ギュゥゥゥ 京太郎「」ムガムガ 竜華「絶対、ぜーったいにトップアイドルにしたる!!」ギュゥゥゥゥ 京太郎「」ブクブクブク __ , -‐ ` ...、 /. .ヽ、 ,. ´. ,、 .\ /. i |`、 、 .ハ、. /. , , i ,i i リ `、|、 i ヽ ', ,' / / / /| /| / ', |.', | `i ', ', ', | i |/| ///// i/ ∨|| | | i, | | | |´,-‐‐-、、 ,斗-、/ / i |/ | | |〈|つ |` イつ | 〉/ /|/ | | | .i、 丿 ...i、 ノ | | | ', ', ー´ ` ´ .| | 須賀京太郎は―― | ヽ ', //// //// ノ | うちが育てたる!! | `、丶、 ` ー ´ , -´/ | | | | \ ' ,>┬ ┬ -‐´ | / | | | | | >\ >、|` 、 / / i | | | | | ,´ `ヽ` -- _、i /|´ | | | ', ', | | 〉-、 / _/`´ー` ,‐| / | | ',', ', ', |/` ヘ´ ´ `、 / / \|`〈 \/ ‐-、 ヽ 〉´|/ \ / ',〈 ,-´/、`ー--, ∧ ,-´〉`-, `/;;;;;;;/ー┬- ´;;i`ー;;´ヽ´ 〈;;/;;/;;;;;;;/;;;;|;;;;;;;|;;;;',;;;;;',;;;〉 |`ー- ´┬、___|ー -┬' |、 .,' | | | ー‐‐,' |ー―´.| | ,' | ,' | ,' | ,' | ,' | ,' | ,' | ,' |,-,/ |,-‐|  ̄ `‐´ 京太郎「」チーン 煌「大丈夫ですかー?」ツンツン 透華「育てるどころか永眠させていますわね」ツンツン はやり「でもここは元気いっぱいだねー」ツンツン 須賀ホーン「」ビンビン 竜華「な、ななななぁっ!?」カァッ 竜華「なんでおるんやぁぁぁぁぁぁ!?」 一同「「「「そりゃ、ここが部屋だし」」」」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/9306.html
h118-01 京久 h118-02 複数 h118-03 京咲和優 h118-04 京咲照 h118-05 複数 h118-06 京咲和優 h118-07 京和 h118-08 京怜竜 h118-09 京・白糸台 h118-10 京白 h118-11 複数 h118-12 京ネリー h118-13 不明 h118-14 京・永水 h118-15 複数 h118-16 京和透 h118-17 京久照 h118-18 京・清澄 h118-19 京咲 h118-20 複数 h118-21 京桃 h118-22 京和 h118-23 複数 h118-24 複数 h118-25 京咲和優 h118-26 京竜 h118-27 京咲 h118-28 京菫 h118-29 京・女子プロ h118-30 京照優 h118-31 京・白糸台 h118-32 京咲 h118-33 京清澄 h118-34 京・阿知賀 h118-35 京久 h118-36 京・阿知賀 h118-37 京・清澄 h118-38 京和 h118-39 京咲 h118-40 京・清澄 h118-41 京照 h118-42 京・阿知賀 h118-43 京・阿知賀 h118-44 京・阿知賀 h118-45 京宥 h118-46 京久 h118-47 京・阿知賀 h118-48 京和憧 h118-49 京淡 h118-50 京・清澄 h118-51 京・阿知賀 h118-52 京姫 h118-53 京・清澄 h118-54 複数 h118-55 京憧
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5752.html
740 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 02 20 28.14 ID kRHMwVoko [24/27] 母さん。 俺、駄目みたいです。 父さん。 アンタのコレクション返せないのが心残りです。 カピ。 お前ならきっと俺がいなくても平気だろう。 咲。 もしかすると出会うかも知れなかったけど、もうその機会は無さそうだ。 俺はこの後の極刑を考える。 やばい。 小蒔さんが隠せるとは思えない。 これを見たという事実。 それは何れ、何かしらの形でバレる。 絶対にバレるはずだ。 霞『あらあらあらあら』 初美『ぎるてぃ、ですよー』 巴『最低です…』 春『さらば』 あれ、ありえそうだよ? 心の中で涙を流す。 さぁ、一思いにやってくれ。 もはやその領域である。 しかし。 何故か。 妙な空白が、そこにはあった。 小蒔「………」フニョフニョ 京太郎「………何してるんです?」 小蒔「勝ちました!」 何に? そうは問わない。 さっきまで写真の巫女と自分の胸を比較してたのは俺も見えてる。 ただ、勝ちました。 その発言だけが意味不明なのだけど。 はて、何でだろうか? 827 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 22 09 05.51 ID 7+z1SiV1o [4/19] 【8月18日:朝】第二回戦試合当日 小蒔「おはようございます、京太郎君!」 京太郎「おはようございます、小蒔さん」 それぞれが手に朝食の載ったおぼんを手に、俺は小蒔さんと言葉を交わす。 今日は試合の日。 2回戦。 清澄、宮守、姫松。 その三校と永水が対戦する日だ。 すでに巫女服を身に纏い、いかにも臨戦態勢。 そういった風体の小蒔さんと向かいあうように俺は席に座る。 揃って、いただきます。 先ずは味噌汁を一口。 うん、良い出汁している。 最初は言葉無く、それぞれが食事を勧める。 半分ほど、皿の上の料理が無くなった頃だろうか? 俺はゆっくりと、話を切り出していた。 京太郎「今日、試合ですね」 小蒔「あ、はい。私の初戦です」 京太郎「応援しか出来ませんけど、その応援は精一杯やりますよ」 にこりと微笑む。 うん。 俺は応援くらいしか出来ない。 それ以外に力になれるだろうか、とも考えてみる。 ……いや、無理だな。 せいぜい、滝見さんの黒糖とか、小間使いがいいとこだ。 むしろ何もしない方がいいんじゃね?俺。 気を散らせるなんてのはしたくないし。 ――――おんぶ。 ――――すばらです! ………。 何かが、聞こえた。 俺は首を捻る。 なんというか。 懐かしい、声が聞こえたような気がした。 930 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 22 47 10.65 ID 7+z1SiV1o [13/19] その声の人たちは。 きっと、気にもしない。 片方は気だるげ。 もう片方は覚悟している。 それは俺程度で乱される集中力じゃない。 その人を構成する部品のようなものだ。 俺は小蒔さんを見る。 この人には、それがあるのかは不明だ。 麻雀の時だけは、この人は人じゃなくなる。 だからそれは小蒔さんの個じゃない。 彼女に降りてくる、“ソレ”のもの。 だから俺は思う。 小蒔さんが、不安定に見えるから。 大丈夫なのか。 俺の相手をしてペースを乱されないのか。 自分の打ち方を出来るのか。 そう、思うのだ。 京太郎「……小蒔さん」 小蒔「はい?」 京太郎「………」 言葉を考える。 この人に、どんな言葉がいいのか。 悩んで、悩んで。 よし、と呟いて。 俺は小蒔さんを、見た。 京太郎「今日の試合、見てますから」 小蒔「はい、そうでしょうけど……」 京太郎「ですから、小蒔さん」 貴方の全力。 俺に見せ付けてください。 貴女の、確固たる意思を。 姫様の病み度が2上昇しました 938 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 22 51 52.04 ID 7+z1SiV1o [15/19] 【8月18日:昼】第二回戦試合当日 小蒔「―――」プシュー 京太郎「oh God……」 ……朝の、アレ。 それから試合が始まり、今は中堅戦が始まったばかり。 俺は今も頭からポンコツ音を鳴らす小蒔さんを見る。 先鋒。 それは宮守に喰われた、という感じだった。 +700点。 マイナスよりはマシ。 そういった感じではあるが、あれだ。 なんというか、張り切ってただけあって、うん。 すっごく声がかけずらい。 途中まで自分のうち筋でやってるのは、俺でも分かった。 最後の最後で、降ろしてきた。 それも分かった。 ただ、その。 なんというか。 京太郎(めっちゃ落ち込んでる……よな?) やっぱり、落ち込んでる。 なんとなくだが、それが分かるような気がした。 ちらり。 俺に小蒔さんの視線が向けられる。 だが次の瞬間には、顔を俯けてしまった。 小蒔「……ちょっと、お手洗いに行ってきます……」 霞「……大丈夫、小蒔ちゃん?」 小蒔「大丈夫、です………」 ふらふら、ふらふら。 そんな足取りで行ってしまう。 そこで、俺に向けられる視線視線&視線。 ゆっくりと振り向けば、石戸さん、狩宿さん、薄墨さんの笑顔があった。 ………うわぁい! 巫女さんの笑顔だぁ!! 京太郎「俺もトイレ行ってきます!!!」 殺されてまう!! 助けて姫様!! 9 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 23 25 15.13 ID 7+z1SiV1o [1/3] ふらふら、ふらふら。 そんな覚束ない足取りで咲を行く後ろ姿を捉えた。 小蒔さん。 俺が声をかけようと口を開く。 そのまま吸い込んだ息を吐き出せば、声となって出ただろう。 でも、声はかけられなかった。 何故か。 それは、本当にトイレに入ってしまったから。 京太郎(………あれ、この状況はやばくね?) 女子トイレの前に居る男子。 いかん、アウトだ。 むしろアウトじゃなくても利用者の視線を受けただけで死んでしまいそうだ。 ええ、そうですよね。 女子大会ですもんね。 野郎が何の用だ、ってもんですよね。 俺はそそくさと離れようと足を反対に向ける。 ただ。 小さく。 聞こえた。 鼻を啜る音。 小さく、嗚咽を漏らす声が。 京太郎「――――」 泣いている、のか? 俺は足を止める。 耳を澄ますまでもない。 あの人は。 泣いていた。 俺は、動けない。 そこまで、思いつめていたのか。 そんな、自失。 それに襲われていて。 動けなかった。 19 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 23 36 34.80 ID 7+z1SiV1o [2/3] 小蒔「戻、らなきゃ……」グスッ ふらり。 そんな呟きと共に小蒔さんが出てくる。 俺は、そこに居た。 びくりと、小蒔さんが震える。 その表情にあるのは、恐れ。 まるで子供が親に置いていかれた時のような、不安による恐れ。 恐怖と警戒心とがごちゃ混ぜになった、怯えた猫のような姿だと俺は思った。 小蒔「あ、あぁ……」カタカタ 京太郎「小蒔さん……」 小蒔「い、いや……嫌ぁぁぁぁあああああああ!!」 京太郎「小蒔さん!?」 不意に。 そんな絶叫が、響いた。 聞く者を一瞬で不安にさせる。 そんな恐怖の篭った、叫び声だ。 身を腕で抱きしめる小蒔さん。 ガタガタと。 まるで冬山に薄着で放置されたような震えの仕方で怯えていた。 俺はどうするべきか分からず、固まるしか出来ない。 嫌ぁ、嫌ぁ!!と。 次の瞬間には。 俺に縋り付く、小蒔さんの姿。 俺の思考が、停止した。 小蒔「ごめ、んなさい……」 小蒔「ごめん、なさい……―――」 小蒔「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい―――」 小蒔「ちゃんとできなくて、ごめんなさい。なんでもするから、だから―――」 京太郎「え、へ、は?」 ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい 36 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/15(火) 23 48 43.66 ID 7+z1SiV1o [3/3] 壊れたオルゴールのように。 何度も小蒔さんは謝罪を繰り返す。 逆に俺が冷静を取り戻すほどに。 小蒔さんのその姿は、凄惨に満ちていた。 京太郎「小蒔、さん……」 小蒔「ひっ!」ビクッ 俺が声をかけるだけ。 それだけで、深く恐怖に沈んだ瞳から涙が零れる。 小蒔「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!京太郎様に、ちゃんと結果を見せるって―――!」 京太郎「小蒔さん!!」 小蒔「――――ッ!!!」 俺が肩を抱き、声を上げる。 声が、止まる。 涙も止まる。 がくり。 力が、急激に抜けた。 慌てて俺が小蒔さんを支える。 抱き上げた、その瞬間。 小さく。 かすれた声が、俺の耳だけに届いた。 小蒔「ごめ、んね――――京、ちゃん……」 京太郎「え?」 今、なんて? 俺はそれを問いかけようとして、それが出来ないことを知る。 小さく、泣きつかれた子供が眠ってしまうように。 寝息を立てて、小蒔さんは寝てしまっていた。 京太郎「………ああくそ、何なんだよ畜生…」 がしがしと、俺は頭をかく。 とりあえず落ち着いてくれたのだ、それでいいだろう。 しかし、今の問題は……。 警備員1「君、ちょっと来てくれるかな?」ニコッ 警備員2「大丈夫、抵抗しなければ何もしない」 …………ああっ、不幸だ。 52 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00 02 47.65 ID j19jZCw/o [1/29] こってりと、警備本部で事情聴取を受けた俺は、目覚めた小蒔さんの鶴の一声で解放されることになった。 あのままだと、『少年A、全国大会出場選手に暴行か!?』という記事が作られかねなかった。 そう思うと非常に震える思いである。 しかし。 俺はちらりと、小蒔さんを見る。 何処か、さっきまでの雰囲気は無い。 落ち着いてる。 そんな感じだろうか。 理由を考えてみる。 だが、俺はそもそも女心なぞ分かりはしないのだ。 となると、あれだ。 こういう時は黙ってた方がいいだろう。 ……さっきまでの様子。 それを思えば、賢明な判断だろう。 小蒔「あ、あの……京太郎君」 京太郎「何ですか、小蒔さん」 小蒔「その、ね。ごめん、なさい……」 ごめん。 謝られると、どきんとする。 またあの状態になるんじゃないか。 そんな疑いが浮かぶ。 だけど、それはそんなに鬼気せまるものじゃなくて。 何処か、困ったような声だ。 小蒔「先鋒で、あんまり稼げませんでした……」 京太郎「いいじゃないですか、それくらい」 小蒔「へぅ…」 京太郎「石戸さんも、薄墨さんも、狩宿さんも滝見さんも居ます。皆を信じて、待ちましょうよ」 それとも信じれませんか、みんなが。 俺はそう問いかけると、小蒔さんはすぐに否定した。 なら悩んでも、しかたない。 後は、信じるだけだ。 俺に出来ることは、それくらいなんだから。 京太郎「さ、戻りますよー」 小蒔「……はい!京太郎君!」 変化ありませんでした。 54 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00 03 45.39 ID j19jZCw/o [2/29] 【8月18日:夜】 ――――永水は、敗退した。 その事実が、俺たちに圧し掛かる。 惜しかった。 どの高校も予選通過できる。 それだけ可能性ある試合だった。 それは事実だ。 何処か和気藹々とした雰囲気。 負けたばかりの高校とは思えない。 そういう優しげな空気がそこにはあった。 それが今、ここにあるのはまだ小蒔さんや薄墨さんの個人戦がある。 それもあるし、何より。 皆の第一は、優勝でなく小蒔さんなのだ。 彼女に尽くす。 それが彼女たちの意義。 麻雀をする意味だ。 だけど、全てに対して真剣だったのは事実。 勝てなかった。 でも、良い試合だった。 それがあるからこそ、今こうしていれる。 俺は小さく息を吐く。 疲れというよりも、安堵だ。 今日は、色々とあった。 試合のことも、事情聴取されたことも。 それにあの豹変した小蒔さんのことも。 あれは、何だったか。 深く考えるべきじゃない。 俺はそう思いながら、また足を伸ばす。 その小蒔さん。 彼女は今、ここに居ない。 それも当然だろう。 俺は今、風呂場に居るのだから。 162 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00 35 28.04 ID j19jZCw/o [11/29] 京太郎「あ~」 溶ける。 こういうのを極楽というんだろう。 時刻は深夜近い時間帯。 もう女子たちは風呂を使い終わった後で、俺の入浴時間になっている時間帯だ。 乳白色の湯。 なんともほどよい温度。 肌も艶々になるってもんである。 ……石戸さんのことを連想してませんよ? こほん。 しかし、こう広いと泳げそうな気もする。 貸し切るとそうしてみたくもなるが、何か空しくなってくるだけな気もするけれど。 というか空しい。 さっさと、上がってしまおう。 俺は湯から出て、脱衣所へ行く。 体を適当に拭い、半タオルで頭をガシガシと拭く。 そのまま足は俺の部屋の方角へ。 鍵を出し、ドアへとかける。 ガチャン。 鍵を開き、中へ。 俺は敷かれている布団へとダイブ。 ベッドとは違い、下が硬い畳でもはっきりと分かるふわふわ感。 うーんこの高級布団。 実に最高である。 そうそう、ここなんか特に柔らか―――「ぁ、ん……」 や、夜話やわやわやわああああああああああああ!!!?!? 181 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00 45 39.85 ID j19jZCw/o [13/29] 跳躍。 直立。 点灯。 離脱。 一瞬でその動作を行った俺は部屋のドアまで引き下がる。 見れば、ぽっこりと膨らんだ俺の布団。 明らかに中に誰か居る。 それがはっきり分かる状態だ。 もぞり。 布団が動く。 ひょこっと。 掛け布団が少し退き、そこに居る人が見えた。 小蒔「京太郎、様……」 京太郎「こ、ここここまこままま……小蒔さん!?」 アンタ何してんの!? 俺が震える手で思わず指差す。 ぽやん、とした顔。 少し赤み掛かって、なんとも色めかしい。 ……って、いやいやいや。 落ち着け俺よ。 クールになるのだ。 我が頭脳をフル活用し、活路を見出すのだ。 1、ここは俺の部屋じゃない。 答えはNO、俺の荷物が置かれ、俺の持つ鍵で開いたこの部屋が俺の部屋じゃないということはない。 2、小蒔さんが部屋を間違えた。 答えはNO、そもそも間違えても入れないだろJK。 ぬおおおおおおお!と俺が頭を抱える。 意味が分からない! そんな叫びが俺の思考を圧迫する。 しかも何だ、京太郎様って。 俺って様つけられる人間じゃないことですのよ? そう思っていると、目の前には小蒔さんの姿。 考えすぎていて接近を感知してなかったらしい。 手が、伸ばされる。 俺の、頬に。 え、いや、いやいやいやいやいや!!! 191 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 00 57 22.51 ID j19jZCw/o [14/29] 京太郎「落ち着いて!落ち着いてください!!」 小蒔「大丈夫です、落ち着いてますよ?」 嘘だ! そう言えたらなんと幸せなんだろうか。 にこりと。 そう微笑む小蒔さん。 待て待て、待ってほしい。 いきなり過ぎる展開でしょう。 俺がそう思い、叫びたくなるのをぐっと堪える。 よし、落ち着け。 冷静になったな、須賀京太郎。 とにかく今は、石戸さんを呼ぶべきだ。 そうすれば……。 小蒔「京太郎、様……」 京太郎「はいはい、お酒でも飲んだんですか?今石戸さん呼びますから――――」 小蒔「罰を、お与え下さい……」 京太郎「………WHY?」 小蒔「京太郎様に勝利を捧げられなかった、私に罰を与えてください………」 ふらふら。 近寄る、小蒔さん。 ぎゅっと。 抱きついてくる。 やめてくださいしんでしまいます。 いや、何で俺が罰っしなきゃいけないんだ? 俺が引きついた顔で、小蒔さんを見る。 聞くしかない。 そうそう、話せば分かってくれるもんだ。 京太郎「小蒔さん、罰とかそんなの、俺たちは友達じゃないですか」 罰なんてやれない。 というかやりたくもない。 俺がそう、柔らかく伝える。 小蒔さんは、少し俯いていた。 そうそう、落ち着けば分かってくれる人だ。 206 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/01/16(水) 01 14 03.90 ID j19jZCw/o [15/29] 京太郎様、子供は何人欲しいですか? 私は女の子が欲しいです。 きっと京太郎様に似て可愛い子になります。 男の子も、京太郎様に似てかっこいい子になるに決まってます。 名前も二人で考えて……いえ、京太郎様がお決めになるのでしたらそれに全て従いますよ? 小さくても、狭くてもいいです。 そんな家に住んで、家族で寄り添って生きていくんです。 素敵だと、思いませんか? あ、ワンちゃんとかもどうでしょう! 子供たちを守ってくれて、最後はその命の終わりで生命の大切さを教えてくれる。 とても偉大で、可愛いパートナーです。 あ、京太郎様はわんちゃんはお嫌いですか? なら、私が何でも京太郎様のお好きな動物の真似でもしますね。 京太郎様。 可愛がってくれますよね? だって、京太郎様ですから。 当然ですよね! あ、そうです。 京太郎様の好きな料理は何ですか? 京太郎様に食べさせて差し上げるものに妥協はしません。 でも、優しい京太郎様は不味くても「おいしい」って言ってくれますよね。 そんなの、私は納得できませんっ! これからずっと料理を作りますから、京太郎様に喜んで貰うために。 ああっ。 そうでした。 京太郎様にはまだ言ってませんでした。 私は貴方様と結ばれるなら家も出て行けます。 愛し合う二人は引き裂けません。 それは、九神様でも。 ……あ、京太郎様が婿入りしてくれるのなら、話は別ですよ? きっと霞ちゃんも、お父様もお母様もおじい様もおばあ様も歓迎してくれます。 そうだ、そうしましょう。 そうすれば、皆と一緒で毎日楽しいですよ! ……あ。 でも、浮気は駄目ですよ? 霞ちゃんも、初美ちゃんも、春ちゃんも巴ちゃんも可愛いですから。 私、そうなったらショックです……。 234 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 01 23 42.08 ID j19jZCw/o [16/29] ノンストップ。 そんなマシンガントークが俺に突き刺さる。 意味が、分からない。 ぐるぐると。 全ての言葉が俺の脳内で回っている。 すりすりと。 俺の胸元に擦り寄る小蒔さん。 まるで猫のように甘えてくるその姿。 気づけば俺はその頭を撫でている。 えーと。 うーんと。 ええっと。 京太郎「―――うん、そうですね!」 小蒔「~~~♡」 なんか悩むのも億劫だ。 もういいじゃないか。 可愛いし。 可愛いし。 大事なことなので2回言いました。 悪くないどころか、ここまで愛されるなんて滅多に無いだろ。 うんうん。 悪くない悪くない。 京太郎「助けて石戸さぁぁぁぁぁん!!!!!」 姫様がレベル4になりました 269 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 01 33 29.58 ID j19jZCw/o [20/29] 【8月19日:朝】 (⌒ 、 .. . ... . . . . . . .... .. . . . .. . . . .. .. .. .... . . . ... ( ヽ⌒ヽ 、 / / .. . . . .. . . . .. .... . ...( ) ... . . . . . . .. ___┐ / /ヽ `ヽ / |´ , へ , ⌒ヽ . .. . . . . . . .... . . . . . |___/ / . ... .. | | .. .... .. . . . . ( ' / ./ ヽノ ゝ `ヽ / .... . . . . . ... / . . . .. . . .. | . ...... .. .(⌒ ... .... . /... . . . . .. / | . . .... .... / / .... . . . . . .. | ... . . . . . . .... .. .... .. . . . .. / / . ..... . . . . . . .. ... | . .. ... . . チュン、チュンチュン.. ..... .. .. . . .. .. . . . . . ... ...... .. .... .. i / (⌒ 、 .. .... .. . . . .. . . ... , ⌒ヽ . . . . ... . .. .... .. . . . .. . .. ... ( ヽ⌒ヽ 、 ( Y⌒ ヽ 308 名前: ◆VB1fdkUTPA[!蒼_res] 投稿日:2013/01/16(水) 01 46 21.78 ID j19jZCw/o [22/29] 朝になった。 俺は抱きついたまま眠る、小蒔さんを見る。 何も無かったぞ。 一応言っておくけどさ。 一晩、抱き枕状態。 実に天国で、地獄の時間だった。 俺は今、幸せそうに眠る小蒔さんを見る。 冷静になった、俺。 昨日のアレは、何だったのだろうか。 それをふと考える。 いや、分かってる。 小蒔さんの好意。 それは、分かってる。 でも、こうまでなるのか。 それが俺には分からないのだ。 出会って、4ヶ月ほど。 世の中にはスピード結婚というのもあるので、一概にはいえない。 ただ、それにしたっておかしいじゃないか? 俺は何でかと考える。 こうまで、好意を持たれる。 まるで、それが根底にあったような。 小蒔「……ふぁ?」 京太郎「あ、起きました?」 その時。 短い声と共に、小蒔さんが起きる。 ぽけっとした顔。 昨日のことは何か悪い夢。 そんな反応でもしてくれないかと俺は思う。 ただ、俺と目があったその瞬間。 ふにゃりと、小蒔さんは笑っていた。 小蒔「えへへ……」 ………。 参ったなぁ……。 326 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 01 51 03.76 ID j19jZCw/o [24/29] 【8月19日:昼】 永水総動員。 それが先ほどまで、起こっていた。 見れば、狩宿さん、滝見さん、薄墨さん、石戸さんが息も絶え絶えという風体で座り込んでいる。 その周囲には、御札、破魔矢、塩、十字架(!?)などなど。 古今東西問わずの祓いを扱う道具が揃っていた。 そうだ。 先ほどまで、小蒔さんへと総動員で浄化の儀式が行われていたのだ。 結果は、言うまでもないだろう。 何も憑いていないのだから、変わりようが無い。 俺は隣に座る小蒔さんを見る。 なんというか、普段どおりである。 小蒔「もう、霞ちゃんってばひどいですっ!」 霞「ご、ごめんなさいね小蒔ちゃん………駄目ね、何も憑いてないみたい」 初美「きょうたろー、何したですかー?」 京太郎「何もしてません」 吐けば楽になるですよー。 そんなこと言ってくるこの人。 そらそうですよね。 いきなり自分たちの姫様がこんな風になってたら誰だって驚きますよね。 でも俺だって驚いてるんです。 小蒔「京太郎様、お散歩に出かけましょう!」 京太郎「え、いやあの……」 霞「……気をつけてね、小蒔ちゃん」ハァ 小蒔「はい!分かりました!」 京太郎「石戸さーん!?」 OKサインを出す石戸さん。 ただし、片目をぱちりと閉じられる。 任せたわよ。 そういう意味を俺は感じとり、頷く。 きっと、何か考えてくれるんだろう。 俺はそれを信じるだけ。 今は、それしかない……! 霞「はぁ……」 初美「……いいんですかー?」 霞「いいんじゃないかしら?」 春「姫様、大胆」ポリポリ 巴「なんというか、まぁ……」 感想をそれぞれ漏らす。 恋に燃える。 まさしく、そんな表現がぴったりと来る。 それが今の小蒔の状態だろう。 霞はぼんやりと、外を見る。 ちょうど、庭に出て行く京太郎と小蒔の姿がそこにはある。 傍から見れば、カップルに十分見える。 そんな(一方通行気味な)雰囲気がある。 霞は小さく息を吐く。 なんとも、とんでもない成長の仕方をしたものだと。 霞「須賀君、後は君次第なのかもね……」 これしか言えない。 ある意味、これは現実逃避であった。 411 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 21 42 47.69 ID BhheSlXYo [2/15] 【8月19日:夜】 夜となった。 明日は宮守高校のメンバーとの海水浴。 それに揃って出かけるらしい。 あの、白い人が居る高校だ。 俺はそれに幾らかの不安を覚えていた。 だが、そうも言えない。 それが今の状況だろう。 俺は、隣で丸まるように眠る小蒔さんを見る。 ……正確には、対処に追われて何もできなかった。 そう言うべきなんだろうけど。 小蒔「ん………」 京太郎「……はぁ」 すぅすぅ。 そう静かに寝息を立てる小蒔さんの頭を撫でる。 見れば、俺の着ている浴衣はしっかりと握られ、離れそうにない。 こうなると、どうしようもないのが俺が培った経験で分かる。 そう思っていると、部屋の扉をノックする音。 早い到着。 それを待ってました。 そんな気分で、俺は迎えた。 霞「あらあら、お楽しみ中かしら?」 京太郎「冗談でもそんなこと言わないでくださいよ……」 あらあら、と口元に手をやって笑む石戸さん。 なんとものんきな雰囲気である。 そのまま、石戸さんは小蒔さんを挟んだ反対に腰を落ち着ける。 視線は小蒔さんに。 何処までも優しげな顔をしている。 なんというか、母親みたいに。 母性あふれる、と言うべきだろうか? 霞「何か考えたかしら?」 京太郎「滅相もありません、マム!」 怖い。 433 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 22 19 48.13 ID BhheSlXYo [5/15] 霞「でも、小蒔ちゃんにも困ったわねぇ」 石戸さんがぼそりと。 何処か疲れたように呟く。 なんというか、お疲れ様です。 それくらいしか言葉が出ない。 そんな俺に向けられる視線。 ……なんでだろう。 凄く責められてる。 そんな気がするのは。 霞「とりあえずだけど、須賀君。小蒔ちゃんのことは君に任せることになるわ」 京太郎「やっぱりですか……」 霞「私たち総掛かりで駄目なら、鹿児島に戻って本家の皆様にお力を借りなきゃ駄目よ」 まぁ、何も憑いてないから無意味なんでしょうけど。 またため息をつく、石戸さん。 思案顔をして、俺を見る。 霞「……須賀君、そのうち私たちに姫様と同じく旦那様って呼ばれる気は無い?」 京太郎「意味が分かりません」 霞さんじゅうはっさいの従順度が1上昇しました 472 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 22 50 09.36 ID BhheSlXYo [9/15] 【8月20日】 宮守高校。 岩手県代表の、初出場チーム。 俺は岩手に行ったことはない。 ただ。 何故か、俺には景色が見覚えあった。 雪残る大地。 見慣れた、でも初めて見る学校。 笑いあう、5人の仲間と先生。 ああ。 そこに、俺は居る。 それを、俺は知っていた。 シロさん。 自然と名前が出る、その人。 白い髪を持った、眠たげな瞳の人。 そうだ。 俺は。 俺は……。 あの人を、俺は……。 京太郎「俺は………」 479 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 23 01 09.62 ID BhheSlXYo [10/15] 海。 それは何処か開放的な気分になる。 そういう場所だ。 俺は今、パラソルの下に居る。 日差しはそれなりに強い。 日焼け止めは、塗っておいたので問題ないだろうけど。 俺は少し、息を漏らす。 ああ。 なんというか、あれだ。 だるい。 実にそういう気分だろう。 俺は視線を、俺の周囲に向ける。 隣。 雑誌で顔を覆って寝転ぶ、シロさん。 俺のもう片方隣。 にこにこと、微笑む小蒔さん。 そして。 エイスリン「シロ!キョウタロ!コマキ!ジュース!」 京太郎「ありがとうございます、エイスリンさん」 小蒔「ありがとうございます」 シロ「置いておいて……」 エイスリン「アイスティーシカナカッタ!イイ?」 そして、エイスリンさん。 俺は小さく、息を吐く。 なんというか。 なんというか。 京太郎(空気、気のせいか重たいなぁ……) 506 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/16(水) 23 18 19.65 ID BhheSlXYo [13/15] 京太郎「シロさ……じゃなくて小瀬川さん、ジュース温くなっちゃいますよ」 シロ「シロでいいよ……ちょいタンマ、今起きるから…」 のそり。 そんな感じで起き上がる、シロさん。 エイスリンさんが「ハイ!」と手渡す。 それに、一瞬の空白。 見れば、「?」というような顔をするエイスリンさん。 シロさんは、じっと。 エイスリンさんを見ている。 しかし、それはもういいのだろう。 小さく礼を言うと、プルタブを開いていた。 喉が少し鳴る。 随分と喉が乾いていたようだ。 シロ「あー………」 ぽけっと。 小さく息を吐くシロさん。 何か溜め込んだ物を吐き出す。 そういう風にも見えた。 突然、シロさんが視線を俺に向ける。 そこにあるのは。 なんだろうか。 あるのは、少しの……。 シロさんが、ふと俺を見る。 考えが読めない。 そんな目だ。 いや、むしろ読めないからこそ。 その視線にあるものに気づけたのか。 シロさんは小さく欠伸。 眠たげに転がって、それから口を開いた。 シロ「ねえ、京太郎……ずっと昔にさ……何処かで、会わなかったっけ……?」 そんな気だるげな問いかけ。 ずっと昔。 そう、シロさんが聞く。 気づけば、小蒔さんも俺を見ていた。 空気は変わる。 何処か粘ついた、重たいコールタールのような。 そんな空気に。 視線を、隣に。 小蒔さんがそこには居る。 いや。 違う。 何かが、そこに居た。 シロさんと、目が合う。 シロさんに浮かぶのは、何だ。 俺に浮かんだ感情は、恐怖。 怖い。 恐ろしい。 この人は、小蒔さんなのか? そんな疑問。 そして、また感じたのは、懐かしさ。 まるで、ずっと昔。 何時からか知っていたような。 そんな、懐かしさ。 シロさんが小さく、笑った。 シロ「……別に、盗らないよ」 だるいし。 そんな言葉。 ふっと、空気が変わった。 545 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/17(木) 00 01 10.20 ID jwx27MTso [1/17] 京太郎「?」 エイスリン「??」 俺とエイスリンさん。 二人揃って頭上に疑問符を上げる。 だるい。 別に盗らない。 それだけで、空気は違う。 何処か静かな水面。 それを思わせるような感覚がある。 さっきまでが時化て荒れた海。 そう思えば、それくらいの落差はある。 シロさんが立ち上がる。 エイスリンさんに手を伸ばし、そのまま行く。 じゃあね。 そんな声。 それと共に、皆が遊ぶ方へと向かっていってしまった。 小蒔「むぅ……」 京太郎「………小蒔さん?」 小蒔「何でもありませんっ!」 何故か不機嫌な小蒔さん。 俺がそれに頭を捻ると、体を斜めに。 肩に頭を置いて、もたれかかる。 そういう形で、俺に寄りかかる。 京太郎「……あの?」 小蒔「京太郎様、このままにさせてください」 京太郎「……了解です」 静かな。 無言の時間が流れる。 なんというか。 うん。 京太郎(なんというか、流されてるなあ……俺) まあ、今はいいだろう。 空がこんなにも青いのだから。 今は、悩む必要は、無い。 【―――――】
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6163.html
はやり「はぁぁぁ~~.........」 靖子「.........」 咏「.........」 良子「.........」 はやり「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ......」 靖子「.........」チラッ 咏「...............」チラッ 良子「............はぁ」 良子「......えっと...はやりさん...?」 はやり「......なにかな?」 良子「どうかしたんですか......?」 はやり「......私、今日誕生日なんだ......」 (知ってるが......)(知らんけど......)(知ってますが......) はやり「あーあ......早く彼氏欲しいなぁー」 (無理だな)(無理だろ)(無理ですね) はやり「どっかにいい出会いとかないかなー?」 「すまんなぁ...京太郎」 「いえいえ、俺がやりたくてやってるだけですから」 「んじゃ、今日は女性が多いしホールに出てもらおうかの」 「わかりました」 まこさんの実家が経営している喫茶店の手伝い始めてはや二年目 大学に行きたいと親に伝えると自分で稼いで行くなら構わないと言われたのでバイトすることにした 昔に比べると麻雀の競技者は男性よりも女性の方が多くなっていた そんな高校三年生の秋 同じように喫茶店のバイトに来た 「どもっす」 「あー......京太郎か...っ!」 俺の顔を見るとまこさんがすぐさまかけよてきた 「どうかしたんですか?」 「いやそれが...」 まこさんが喫茶店の一か所を指差した その先にあったのは――― 「はややっ♪」 .. ------ .. ... ´ . . . . . . . . . . . . . ` ..、. -――┐ ┌―‐ 、/ . . . . . . . . . . . . . . . \ . . ./- 、 / 八 / / . . . ./ . . . . . . . . . . . . . .\{ ‘, <.. /} / / . . . ∧ . . . ∧ . .\ . . . . . \___ノ } .\ /└/ / . . . / ∨ . . ∧ . . . .\ . . . . l \ ┌┬' i . . . . // ./l l | . . | .l´ ̄ ∨ . . . \ . . l\ . .リ . . 「¨ . . |∨ . . . . .. // .∧l从l . | .{ -、 \{\ . \ .|__,∨ ! . . ! . ||. . . . . . // . ∧ l }八芹芋ミ \ァ芋苧ミ | . | . . | . .. . ||. . . . . .|. / { . . . . . . .| l ∧{ {. J刈 i. J刈'| . |⌒! . || . . . . . | { { . . . . . . .| l . . .| 乂_ツ 乂__ツ ! . !ノノ . || . . . . . | { ∨ . . . . .| l. . . l . ,,,, ' _ ,,, | .リイ| . . . . || . . . . リ { ∨ . | {\{ . .、 V } ...イ/ l .| | . . . . || . . . / \ ∨ . . .| | . . .|. .个 .... _  ̄ _ {-/ 、 l .| | . . . . ||. . /. ∨ .リリ . . リ . . | ./⌒ヾく{___/ /⌒'i .| | . . . . |八 . {. | .//----、 .l∧‘,‘, { { } -=ニ二乙' .{ |//にニ=- / ∧_} } -{ { / }__{乙)' .. //ノ^ソ ,ノ/ / `ー' `ー`イ { {‐┴、) \ /i. \------=彡'// にソ 乂 } __ ‐┘ ̄{\,ノ . \____彡'  ̄ ̄ ̄ / { 、/´ \ ./⌒´ \ノ / ---- ´ 上機嫌そうに麻雀をする牌のお姉さん、瑞原はやりさんだった 「はややっ!」 はやりんレーダーこと、イケメンレーダーにビビッと反応が 「どこ......どこ.........?」 辺りをキョロキョロと見渡してみる しかしどこにもいない 「はやや......?」 間違ったのだろうか いやそんなことは...... 「いらっしゃいませ、お嬢様」 「こちらが本日オススメの品になります」 目の前には私が注文したチーズケーキ そして私の横にいるのは はやり(い、いい.........イケメン!?) とびっきりのイケメンだった そしてそれが彼と私の初対面でもあった 京太郎「えっと......瑞原さん?」 はやり「はやり」 京太郎「......はやり..................さん」 はやり「今はそれでいっか♪」 京太郎「そう言えば今日誕生日でしたね」 はやり「うん......」 京太郎「もしかして年齢とか気にしてます?」 はやり「............」 京太郎「俺は気にしてませんよ」 はやり「......でも」 京太郎「そんなはやりさんにプレゼントです」 はやり「これは......?」 京太郎「開けてみてください」 はやり「う、うん」ガサゴソ 京太郎「.........」 はやり「こ......これって...」 京太郎「ちょっとキザすぎですかね?」 はやり「ううん......そんなことない...」ギュッ 京太郎「俺が嵌めてみてもいいですか?」 はやり「うんっ......うんっ!」 京太郎「じゃあいきますよ」 すっとはやりの左手の薬指に銀色の指輪をはめる 「ピッタリ.........」 薬指で光る指輪を見て顔がニヤニヤとしだすはやり 「あ...でも、これのお金......」 「お金って.........はやりさんのマネージャーやってから一回も困ったことないんですけど...」 「あ、そっか」 思い出したかのようにえへへとはやりが頬を緩めた あの日、喫茶店ではやりと出会ってから京太郎の生活は一変した まず、連絡先を聞かれ、仕事中だと断ると 「じゃあ終わるまで待ってるね♪」 と言い出したので京太郎は仕方なくはやりのことを放置すると本当にはやりは京太郎が上がるまで待っていた 根負けして連絡先を交換しするとその次の日から毎日のように連絡が来るようになった 麻雀をする人もしない人も知っている牌のお姉さんとメールを出来るのだ もちろん京太郎も毎日のように連絡を取り合った そして京太郎の大学の合格発表を同時にはやりから時間があるときだけマネージャーになってくれないか と提案を出されたのだ もちろん、二つ返事で承諾した 正直、下心もあった でも本心ははやりを支えたいと思ったからだ そして今に至るわけなのだが はやり「きょーたろーくーん」 京太郎「はいはい、なんですか」 はやり「こんなの私に渡しちゃうなんて......えへへ」 京太郎「なんです?」 はやり「責任、取ってもらうから♪」 京太郎「どんどこい、ですよ」 はやり「わーい♪」ギュー 京太郎「当たってる当たってる!///」 はやり「当ててるんだよ♪」 はやり「大好きだよっ京太郎くんっ♪」 カンッ
https://w.atwiki.jp/kyoshura/pages/81.html
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5750.html
544 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 15 54 23.94 ID IDg01zbNo [36/89] 京太郎「先輩ー、シロ先輩ー!豊音さーん!どうかしましたー?」 ビクッ。 そう、シロ先輩の肩が揺れた。 そんな気がした。 それに気づいたのは、俺だけかも知れない。 だから多分、気のせいだろう。 豊音「あ、京太郎くーん!エイスリンさん!お帰りー!」 京太郎「ただいまっす」 エイスリン「タダイマ!」 挨拶して、近寄る。 ふと見れば、何時も通りの先輩たち。 ゆっくりと、シロ先輩が振り返った。 シロ「……京太郎?」 京太郎「はい、どうしました?というか、何してたんです?」 豊音「何もしてないよー。散歩行こうって、シロが言って…」 シロ「………そういうこと」 ぷいっ。 そんな感じで視線を逸らすシロ先輩。 気でも抜けたようにベンチに腰を下ろしていた。 ………って、ちょっと待て。 まさかこのパターンって……。 シロ「京太郎、おんぶ」 京太郎「やっぱりか畜生!?」 ん、と手を俺に伸ばす先輩。 それに思わず叫ぶ。 予想通り。 それに小さく溜息を吐きながら、気合一発。 俺はシロ先輩を背負うと、エイスリン先輩、豊音さんに声をかけた。 京太郎「じゃあ、帰りましょうか」 皆の、ところに。 シロ「………きょーたろ…」ギュッ ・シロ、エイスリンの病み度が1上昇しました 575 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 16 14 41.27 ID IDg01zbNo [41/89] 【8月20日:朝】 両手に花。 そういう言葉がある。 女性などに、その艶やかさから『華のある人』などと言うように。 男がそんな花々を両の手に持っている。 つまりは一人が複数の女性を侍らせている状態を両手に花という。 つまり。 今の俺みたいな状態を、両手に花、というのだろう。 エイスリン「ウミ!」 胡桃「海!」 塞「海だねぇ」 京太郎「海ですねぇ……」 右腕。 シロ先輩の浮き輪と腕の間に通している手をエイスリン先輩がおっかなびっくり手に取っている。 左腕。 クーラーボックスを持つ手をバランス崩した部長が握っていた。 頭。 肩車した鹿倉先輩が麦わら帽子を被ってちょこんとそこにいた。 何でこうなっているか。 それを答えるのは、まぁ面倒である。 順に説明しよう。 鹿倉先輩がサンダルを無くして、ガラスが割れてて危なかったから俺が肩車して。 砂場に足を取られたエイスリン先輩が俺の右手をとってバランスを正し。 それによって崩れた俺の姿勢を臼沢部長が左手をとって支えた。 以上である。 だがまぁ、それはあくまで俺たち4人の認識で。 永水の皆さんとか、他の海水浴客なんかは俺のことを見ていた。 ……何か殺意すら感じるんですけど。 まぁそうですよね。 ぱっと見、俺が侍らせてるようにしか見えませんよね。 俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!! 主張するべきはしておくべきだけど、意味なさそうだ。 なんもかんもタイミングが悪いわ、本当に。 600 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 16 41 50.01 ID IDg01zbNo [46/89] 【8月20日:昼】 それぞれが思い思いに楽しむ中。 俺は一人、荷物番としてパラソルの下に居た。 まぁ、当然である。 むしろ率先してやるべきだろう。 選手たちの慰労でもある海水浴。 ある意味では俺は場違いというものだ。 遠目に、シロ先輩と鹿倉先輩は浮き輪で漂流。 エイスリン先輩と豊音さんは永水の人とビーチバレーだ。 そんな、平和な光景を見ているとふと、俺の頬に押し当てられる感触。 冷たい。 ……冷たい!? 塞「お疲れ様、須賀君」 京太郎「ぶ、部長!?」 振り返れば、そこには部長の姿。 手に持っているのはアイスキャンデーだ。 どっちがいい、と問われて俺はソーダ色のを選ぶ。 部長は俺の隣に座ると、俺と同じように小さくアイスキャンデーに舌を這わせていた。 塞「冷たっ」 京太郎「でもこれ美味いですね」 塞「私はさっきまで海に入ってたから、塩気のせいで余計に甘く感じるよ」 あむっ、と先輩の声。 あんまり見ないようにしつつ、俺も噛り付く。 しゃくっという音。 解れるように崩れたそれを咀嚼しつつ、俺はふと口に出した。 京太郎「豊音さんの言葉借りる訳じゃないんですけど」 塞「うん」 京太郎「なんつーか、こういうのも思い出になりますね」 やっぱり。 俺はそう言う。 永水の人たちも、先輩たちも。 その楽しげな表情に陰りはない。 綺麗な思い出。 きっと、そうなってくれるだろう。 615 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 17 16 51.18 ID IDg01zbNo [49/89] 塞「……そっか」 京太郎「そうですよ」 先輩が小さく、呟く。 俺も呟く。 日差しが強い。 それに目を細めて、ぬっ、と。 太陽を遮る影があった。 豊音「京太郎君!早く来て!!」 京太郎「豊音さん!?」 塞「どうしたの?」 エイスリン「シロ、クルミ!ナガサレタ!」 京太郎・塞「はぁ!?」 俺と部長が揃って立ち上がる。 見れば、浮き輪。 ぷかぷかと流されているのが見える。 潮に浚われてるー!? 京太郎「あああああ!部長、行ってきますー!!」 塞「えちょ、わわっ!?」 部長にアイスキャンディーを渡し、猛ダッシュ。 ああもう! あの人たちは本当にもー!! 変化ありませんでした。 616 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 17 18 17.53 ID IDg01zbNo [50/89] 【8月20日:夜】 海からの帰り道。 人気の少ない電車の車窓から見える東京の街を俺は見ていた。 今日は、色々とあった。 それは勿論トラブルもあったけど、何事にも発展していない。 よくある笑い話になるようなものばかりだろう。 俺はうっつらと舟を漕ぐ皆を見る。 はしゃいでいただけあって、疲労の色は濃い。 それは俺も同じだけど、元々の体力は俺が一番ある。 だからこそ、俺は眠りにつく皆の中で一人起きていた。 視線は、俺の膝に。 そこに頭を乗せて寝ている、鹿倉先輩。 今日、シロ先輩と流されていったあの時。 俺と塞さんの通報を受けたライフセーバーの人が来た時の安心した顔。 そして今の眠る表情。 とてもだが、年上には思えないようなあどけなさがある。 ……これ言ったら、絶対に怒られるだろうけど。 ガタンッ。 電車が揺れる。 軽い体を持つ鹿倉先輩がびくりと反応。 目をぱちりと開いた。 俺と目が合う。 京太郎「あ、起きました?」 胡桃「………」 「∀」としている口。 そのまま、ゆっくりと汗が顔ににじみ出る。 表情が変化しない。 それに俺が「どうしました?」と声をかける前。 先輩は勢いよく、頭を起した。 京太郎「あれ、どうし―――痛っ!?あたっ、何で叩くんですか!?」 胡桃「う、うるさい!デリカシーなさすぎ!!」 京太郎「なんで!?」 胡桃「うるさいうるさいうるさい!!」 そう言って、ふん、と腕を組んでそっぽ向く先輩。 そんな赤くなるくらい興奮して怒らなくてもいいのに……。 従順度が1上昇しました 660 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 20 18 01.71 ID IDg01zbNo [55/89] 【8月21日:朝】 私にとって、大事なことは三つある。 それぞれが、私を作る構成材料だ。 一つ、ダルいこと。 私は労力を発揮する、というのが嫌いだ。 結果的に無駄になることはしない。 雨が降れば雨音を聞きながら部屋の天井の染みを数えることもなく、じっと。 ただただ眺めているだけでその日を過ごすくらいに何もしない。 二つ、今の状態が変わること。 今の関係。 部活の皆の関係が崩れることは、ダルいことだ。 少なくとも、私は全員とも気に入っている。 私の中にある、ダルくない。 友達たちの関係。 そして、三つ。 今では、これが一番大事になってしまった。 なんで、ということを考えるのも、ダルい。 だけど、それは確かに私の中にある。 シロ「………」 京太郎「Zzz………」 私が見下ろす、彼。 何処かだらしなく顔を歪めた、安心しきった表情で眠る、京太郎。 三つ目。 それが、京太郎。 何時、じゃない。 多分、いつの間にか、だと思う。 私の中にあるこの感情を自覚したのは。 私は、彼が好き。 ………なんだろうか? 分からない。 ただ思うことが、ある。 エイスリンにも、豊音にも、塞にも、胡桃にも。 いや、他の誰かでも。 京太郎が一緒に居ると、酷く不快。 そう、不快だった。 シロ「………ダルい」 710 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 20 57 30.18 ID IDg01zbNo [58/89] ギシリ。 鈍く軋むベッドのスプリング。 京太郎が小さく、「ん…」と声を漏らす。 起きないでね。 私は無言でそう告げる。 起きたら、めんどくさいことになるから。 私はそのまま、彼の上に跨るように。 京太郎を見下ろす。 ああ、不味いな。 鍵は勝手にフロントから借りてるんだった。 こんなことしてる場合じゃないのに。 そうは思っても、体は。 私の体は、動く。 膝立ちから、四つんばいに。 京太郎の私の顔が、ぐんと近づいた。 寝息が、私の頬を撫でる。 薄く開いた唇。 ゆっくりと、京太郎の唇を触れる。 ざらり。 乾いた触感が、私の指を刺激した。 シロ「―――――」 シロ「いい、よね……?」 うん。 別にいいよね。 719 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 21 01 51.91 ID IDg01zbNo [59/89] イタダキマス 739 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 21 14 54.23 ID IDg01zbNo [60/89] ─────── ───── ─── ── ─ . 目が覚めたら、とんでもないことになってた。 そんな経験は無いだろうか。 妙な寝苦しさ。 それを覚えた俺が目を覚ましたのは朝の5時過ぎのことだ。 随分と早く目が覚めた。 そう思いつつ、俺は身を起そうとして、気づいた。 体が動かない。 というより、何かが居る。 目が冴え、思考がクリアになっていき、今の現実を認識する。 オーケーオーケー。 目が冴えたぜ。 俺は油断なく、しかし一気に布団を剥ぐ! 京太郎「……シロ先輩?」 そこに居たのは、少し肌蹴て、丸まっている、シロ先輩の姿。 朝日が目に入ったのだろうか。 うっすらと、目を開く。 シロ「ん……もう少し、寝る……」 京太郎「あ、はい。了解っす」 じゃなーい!? え、え? どういうこと? 何でシロ先輩が居るの? 思わずループ仕掛ける思考。 それを晴らすために一路俺は洗面所に向かう。 そこで、判明する。 俺の首筋とか、鎖骨とかに残る、赤い痕。 ………ねぇ、これってキスの痕とかそんなんじゃないよね? ね? え、嘘でしょ? まだ夢でも見てるのか俺。 749 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 21 24 34.93 ID IDg01zbNo [61/89] そんな俺の問い。 それに結構な時間がかかったのか、物音。 見れば、シロさんが装いを正している姿だ。 そのまま、ぺたぺたとサンダルを鳴らして俺の横に。 肩を、ぽん、と。 そうして無表情のまま。 俺を見た。 シロ「京太郎」 京太郎「は、はい……?」 シロ「私は気にしない、京太郎も気にしない。いいね?」 じゃ、朝ごはんで。 そう言って出て行く、シロさん。 え。 ええ? 京太郎「ええええええええええ!?」 シロの病み度が1上昇しました 768 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 21 31 24.05 ID IDg01zbNo [63/89] 【8月21日:昼】 衝撃の朝から、三時間くらい。 麻雀を打つシロ先輩を見ながら、俺は頭を抱えていた。 記憶が無い。 昨日は俺、普通に部屋に帰って寝た……はずだよな? 疑心暗鬼がさらなる疑問を呼んで、何が本当か分からなくなってきた。 ただ、ちらりと。 俺はシロ先輩に視線を向ける。 先輩は、俺と目を合わせた。 そして小さく、舌を出す。 それだけだ。 やっちまったのか、俺。 マジなのか、俺よ。 覚えてないとか最低すぎるぞ。 そんなことで頭を抱える。 そこでふと、俺への視線を感じた。 見れば、鹿倉先輩だ。 胡桃「頭抱えて何やってるの?」 京太郎「いえ、別に……」 胡桃「何か悩んでるなら聞くよ!」 言えるわけねーです! そう言えたらどれだけ幸せなことか。 俺は頭を再度抱える。 鹿倉先輩は、そんな俺の様子に頭を捻るばかりだった。 変化ありませんでした 805 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 22 02 46.05 ID IDg01zbNo [66/89] 【8月21日:夜】 一度、シロ先輩と一人で接触するか? 俺はレクレーション室で考える。 今朝の真偽。 それを確認するだけでも俺には何かのプラスになるだろう。 従順に話してくれるか。 それはまだ分からないが、悩んでるよりは確実だろう。 俺が一人考えていると、ドアが開く。 まさかのシロ先輩かとも思ったが、違う。 豊音さんだ。 豊音「京太郎君、こんばんわー」 京太郎「こんばんわです、豊音さん」 ふわふわと。 そんな雰囲気で挨拶をしてくる豊音さん。 そんなこの人を見て、俺の脳裏に一つの考えが浮かぶ。 相談。 出来るだろうか。 先生には、正直、言えない。 それはシロ先輩も同じだろう。 でも、部活の仲間たち。 それなら。 俺はそう思う。 ああでも。 この人がもし、それを聞いたとして。 どんな反応を、示すのだろうか。 それが俺には、怖かった。 だからこそ、口つぐむ。 俺は話を切り上げる。 そうするように。 小さく笑みを浮かべた。 京太郎「お休みなさい、豊音さん」 夜が来る。 863 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 22 48 05.36 ID IDg01zbNo [73/89] 【8月22日:朝】 あの日から二日目。 今日も悩む。 なんてことはない。 もう考えても分からないものは分からないのだ。 なら、何らかの接触がシロ先輩からあるはずだ。 多分、きっと。 体が軽い。 こんな爽快な気持ちは初めてだ。 悩み無用。 CMは良い言葉を言うものである。 胡桃「何で朝からスキップしてるの?」 エイスリン「キョータロ、ウレシソウ!」 京太郎「いえいえ、悩みなんて悩んでも無駄って分かったんです!」 朝日が輝く! なんて爽やかな日なんだろうか。 体が軽ry 胡桃「……それって根本的には解決してないよね?」 京太郎「げっはぁぁぁ!?」 鹿倉先輩の言葉のボディーブロー。 それに俺が崩れ落ちる。 そう、だった。 確かに解決した訳でもなんでもなかった……。 そうだよ! ただの現実逃避だよ! 悪かったな! エイスリン「キョウタロ、ファイト!」 手をぎゅっと握り、ファイティングポーズを取るエイスリン先輩。 ああもう、本当にこの人は癒されるなぁ。 924 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 23 14 27.63 ID IDg01zbNo [81/89] 【8月22日:昼】 胡桃「それで、何に悩んでたの?」 京太郎「いや、何でもないですって!」 昼過ぎ。 散歩に出た俺の後ろでそう告げる鹿倉先輩。 俺はその人に何もない。 大丈夫。 そんな色々な表現で問題ないことを告げる。 しかし、この人の眉は歪んだまま。 どう考えても納得してないのが丸分かりである。 胡桃「お姉さんに相談できないこと?」 京太郎「お姉さん……?」 胡桃「私年上だよ!?」 お姉さん。 そう言われると思わず考えてしまった俺に鹿倉先輩が突っ込む。 はっはっは。 こうして反応するだけでも駄目です。 俺がそう言いたげに笑みを浮かべると、顔色が固まる。 ああ、きっとこの人は何も言わず“潰す”とかそういうこと考えてるな。 俺は静かにそう予測する。 もう流石にそれなりに分かるわ。 京太郎(………これがシロ先輩にも使えればなぁ…) ままならない。 本当にままならないものだ。 944 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 23 27 11.56 ID IDg01zbNo [84/89] 【8月22日:夜】 京太郎「エイスリン、先輩……?」 エイスリン「ウゴカナイデ」 俺は今現在、困惑していた。 俺の部屋。 そして、そこに居るのは俺だけのはずだ。 時刻は深夜。 それに程近い時を時計の針が示している。 聞こえる音。 それはペンを奔らせる音。 そして時計の音だ。 なんで、こうなっているんだったっけ。 ゆっくりと、思い返す。 そうだ。 確か、先輩がいきなり俺の部屋に来たのだ。 思いつめたような。 何かを我慢しているような顔だった。 そんな、気がする。 そうして今やっているのは、俺の絵描きだ。 どうにも落ち着くのに、これが一番らしい。 俺はそれに困ったような空返事を返して、今に至る。 この人は、何をしたいのだろうか。 普段のエイスリン先輩は、物静かだけど活発で、それでいて恥ずかしがり屋。 そんなイメージがある。 だけど、さっきの。 あの顔。 まるで、自分のやりたかったことを他人に先越されたような。 そんな、顔。 エイスリン先輩は、俺を見る。 気のせいだろうか。 そこに、薄ら寒いものを感じたのは。 990 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/12(土) 23 58 57.80 ID IDg01zbNo [89/89] エイスリン「デキタ!」 出来た。 という声が響く。 手は慣れた手つきでスケッチブックを閉じ、そしてくるり。 ペンを一回しして耳へと挟んだ。 エイスリン「アリガト、キョウタロ!」 京太郎「いえ、気分転換になったのなら十分ですよ」 そこにあるのは、普段通りの先輩。 にこにこと、笑っている先輩。 じゃあね、と先輩が去っていく。 それに俺は拍子抜けすら感じつつ、出て行く先輩を見送る。 なんというか。 本当に絵を描きたかっただけみたいだな。 京太郎「寝る、か……」 うん、ゆっくりと寝るとしよう。 14 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 00 07 57.27 ID OMedMnLEo [1/13] ────── ──── ─── ── ─ 今手に取った、京太郎の絵。 私はそれを慎重に、丁寧にスケッチブックから外す。 そして、一つのファイルを出した。 そこにあるのは、今までの京太郎。 新しい、一番のページにその京太郎を私は仕舞う。 そして、ペンで日時を記入。 ベッドに転がるように、私は京太郎を胸に抱いていた。 エイスリン「フフ…」 ここには、私が出会った頃からの京太郎が居る。 こうして、眺めるしかできない。 そんな京太郎が、ここにはある。 幸せ。 小さく噛み締める幸せ。 私は日本語が苦手。 それに、少し恥ずかしい。 だから、何時もこっそり京太郎の絵を描いていた。 ああ、それは。 それは、誰にも渡さないでいい、私だけの京太郎。 だから、まだ。 エイスリン「モット、描キタイ」 京太郎のことを。 もっと。 病み度1上昇 87 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 16 19 59.35 ID OMedMnLEo [7/13] 【8月22日:朝】 もはや慣れてすらしまったホテルの天井。 それを見て俺は目を覚ます。 周辺確認。 誰もいない。 それに妙な安心感を覚える俺。 もしかして、夢遊病みたいに勝手に行動してた、とかは無いみたいだ。 気のせい、だろうか。 俺の周り。 それが妙に殺伐としている風に感じる。 そんなことありえないのに。 俺は食堂に集まった宮守の皆を見渡し、そう思う。 そうだ。 皆の空気が悪くなる、なんてない。 全国大会に負けた後だって、あんなに暖かい空気だったのだ。 ありえない、馬鹿な考えだな。 俺は一人納得する。 しかし、だ。 京太郎「なんか臼沢先輩と鹿倉先輩と飯食う回数増えましたね、そういや」 塞「偶然でしょ?」 胡桃「でしょ」 そうかなぁ。 いや、もしかすると無意識にシロ先輩を避けてたからかも知れない。 嫌悪とかじゃなくて、冷静になるために。 俺だって男である。 布団の中に女の人が居て、しかも意味深なこと言われればどきどきもする。 しかもシロ先輩みたいに可愛らしい人ならなお更だ。 意識の切り替え。 そのために距離を取っている……かもしれない。 うーん、ありえそうなのがまた。 塞「まぁ、皆で食べてるんだから変わりは無いでしょ」 胡桃「無いよ」 なーんか丸め込まれてるような気がしなくもないんだけどなぁ。 100 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 16 43 10.87 ID OMedMnLEo [10/13] 【8月23日:昼】 京太郎「……」 豊音「~♪」 家でペットを飼ってる人。 そんな人は経験あると思う。 自分の後ろをついてくるペットの姿とか、そういうのだ。 今、俺の中にある感情はそれと非常に似通っていた。 前を行く俺。 後ろに続く豊音さん。 ちょっとした買い物ついでの散歩だったのだけど、なんでこうなってるのだろうか。 いや、何で着いてきてるんですか、と聞いてもいいんだ。 良いんだけど……。 豊音「あれ、どうしたのー?」 京太郎「何でもないっす!」 豊音「そうなのー?」 ……なんといいますか。 『何で着いてきてるんですか』と聞いたらすっごい悲しそうな顔する。 そんな確信があるのだ。 だから俺は口に出さず、何も言わない。 豊音さんも当然、何も言わない。 ただ、そんな無言はどうにも長く続かないものだ。 気づけば、俺は豊音さんと並んで歩いている。 会話を少し交えつつ。 例えば好きなものとか。 身の回りのこととか。 そんな単純なこと。 そもそも、会話なんてものは話題となるものがあって、共感や理解があれば続くものだ。 気づけば、結構話し込んでいたような気もする。 笑って、すっきりもしたような気がする。 よし、と俺。 意識を切り替えて、行こう。 明後日から、個人戦が始まるのだから。 俺にやれること。 それをやっていこう。 144 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 19 11 35.89 ID Itsf4tojo [5/53] 【8月23日:夜】 京太郎「今戻りましたー」 豊音「ただいまー」 胡桃「おかえり豊音ー須賀君」 塞「おかえり、散歩?」 京太郎「ええ、まぁ」 豊音「じゃあ私部屋に戻って着替えてくるよー」 胡桃「行ってらっしゃい、戻ってきたら麻雀しよ!」 レクレーションルーム。 そこで椅子に腰掛けていた臼沢部長、鹿倉先輩に声をかける。 どうやら暇していたのか、麻雀をするつもりだったらしい。 京太郎「あれ、シロ先輩とエイスリン先輩は居ないんですか?」 胡桃「二人とも居ないよ」 塞「シロがひとりでに外出なんて珍しいよね」 京太郎「ですねぇ」 牌を手元で遊ばせながら部長が言う。 確かに珍しい。 今頃何してるんだろうか? エイスリン先輩にシロ先輩。 もう時間も時間、そろそろ帰ってきて欲しいものだけど。 胡桃「心配?」 京太郎「そりゃそうですよ、女の子なんですから」 女性の一人歩き。 それは心配するには十分だ。 いくら東京が明るい街であっても、それだけ人は多い。 相対的に変質者も多いだろう。 多分、きっと。 そう俺が思っていると、にやにやと笑う臼沢部長が俺に声をかけてきた。 塞「須賀君は過保護だねぇシロ達に」 京太郎「後輩として、男として当然です。勿論先輩たちだってそうですよ」 居なくなってたら心配する。 俺が当然だと言わんばかりに二人にもそう告げると、急に会話が止まる。 何でだ? 塞の従順度が1上昇しました 193 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 19 46 36.03 ID Itsf4tojo [10/53] 【8月24日:朝】 むすっとしてる。 俺を見上げるシロ先輩の表情を例えるなら。 というか、どういう顔しているかと言うのならそれだろうか。 不機嫌。 実に無言でそれを主張している顔だ。 はて。 俺は何かしただろうか? いや、したかも知れないのだけど覚えてないのが一昨日あるけど。 まぁそれは置いておこう。 今現在、朝食終了。 今日の昼過ぎには団体戦の決勝が終わるかも知れない、という時間だ。 そんな中、俺は部屋に戻ったのではあるが、何時の間にかシロ先輩はそこにいる。 いや、着いて来て当然のように部屋に入ってきただけなんだけども。 ええと、部屋に帰らそうとしたんだっけ? そしたら、今に至るんだったか。 京太郎「シロ先輩、何でそんな怒ってるんですか……」 シロ「怒って、ない」 京太郎「いや、怒ってるでしょう!?」 じゃなきゃそんな顔しない。 俺は表情変化を見分けるプロなのだ。 それくらい、もはや慣れて分かる。 しかし、だ。 何で怒るんだろうか? 帰れ、と言って怒ってる……そんな訳ないな。 となると、この間の件だろうか。 朝の、アレ。 もしかして、それをはっきりさせてないから怒ってる……のか? 京太郎「あの、先輩?怒ってる理由って……この間の朝のあれですか?」 シロ「………違うよ」 目を逸らし、バツが悪そうにそう言う。 あれ? 俺が頭を捻る。 この間のことで怒ってる訳じゃない。 ということは、怒るようなことは起こっていない。 そう取れるだろう。 と、いうことは。 俺、一線は越えてない? マジで!? 京太郎「あ、はは……はぁ~~~……ッ!!」 シロ「?」 俺が思いっきり息を吐き出す。 いやぁ、心が軽い! あれだけが心に引っかかってたからなお更だ。 ふふふ、今夜は枕を高くして眠れそうである。 京太郎「……って、あれ?」 じゃあ、あのキスマークはどうなるの? 今冷静になると、あれはどう考えても誤魔化しとかそういう問題じゃない気がする。 聞いてみたい。 でも怖い。 なんというジレンマだろうか。 シロ「………ねぇ、ここに居てもいい?」 京太郎「へ?あ、ええ、もうしょうがないからいいですけど……」 シロ「じゃあ、ここに居る……」 俺の思考の間をついて、シロ先輩がそう言う。 怒ってたように感じたのが、俺がここに居ても平気と言うと、嘘みたいに静かになる。 枕を抱き、ベッドの上で丸まる。 そしてそのまま、瞳を閉じてしまった。 ………まさか、寝るつもりだったけど部屋に戻るのがダルかった。 そんな感じの理由なのか……? シロ「………寝る?」 京太郎「寝ませんよ!!」 シロの従順度が1上昇しました、ぞろ目ボーナス(特別)で次の判定の従順度上昇コンマ範囲を大きくしましょうかね 261 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 20 19 31.13 ID Itsf4tojo [14/53] 【8月24日:昼】 『試合、終了――――!!』 京太郎「………終わり、ましたね」 胡桃「そうだね」 塞「ああ、そうだね……」 テレビの前。 俺は無言でその結果を瞳に映す。 終わり。 全国団体。 それが今、終わった。 今、それを見ているのは俺と鹿倉先輩、臼沢部長だ。 妙な無言。 そんな空気がそこにはあった。 鹿倉先輩を見る。 何時も通りの表情。 そこには、でも、確かに。 一瞬の悲しみがあった。 多分。 それは、あの舞台に立てなかった。 そういう後悔もあるんだろうか。 俺はあまり見ないようにする。 少し、何かをこするような。 そんな音が聞こえたのだ。 ただ、それは直ぐに止まる。 椅子から降りる音。 それに俺と臼沢部長が視線を向ける。 何処に。 そう問う。 鹿倉先輩は背中を向けたまま。 振り返らず、少し震えた声で、言った。 胡桃「飲み物、買ってくるよ」 京太郎「………分かりました」 胡桃「うん、二人とも待っててね」 先輩が出て行く。 がちゃん。 そういう音がして、ドアのロックが自動で降りた。 342 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 20 48 17.59 ID Itsf4tojo [18/53] 塞「……泣いてた、かな?」 京太郎「どうでしょうか、鹿倉先輩は強い人なので」 臼沢部長の問い。 それに俺はぼかすように答える。 泣いてた。 それを態々、言うことない。 そういう態度で俺は答えると、「そっか」と答える部長。 空白の時間が少し出来る。 その空気。 塗り替える言葉。 短く。 小さく。 部長が放つ。 塞「……行きたかったなぁ、あそこに」 そんな呟き。 ほろり。 それがトリガーであったように。 小さい水滴が部長の瞳から毀れ出る。 あれ。 おかしいな。 戸惑った声。 俺は無言でハンカチを差し出す。 それが、切っ掛け。 もう耐える必要がない。 ハンカチを見た瞬間、それを体が理解してしまった。 ぼろっと。 小さく泣く部長。 俺はそれに、ただ手を添えておくことしか出来なかった。 ゆっくりと。 手を握る。 部長が立ち上がった。 「ちょっと貸して」と、声かけて。 俺の胸に、顔を埋めていた。 この時。 部長の、鹿倉先輩の夏は、本当の意味で終わったのだろう。 346 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 20 50 30.58 ID Itsf4tojo [19/53] 【8月24日:夜】 京太郎「……大丈夫ですか、臼沢部長」 塞「ん……ごめんね、ありがとう」 時間が少し過ぎる。 気づけば、もうすぐ夕方だろうか。 ……結構な時間、抱きしめてた。 そんな気がする。 顔を見合わせ、毀れ出る笑い。 なんだかおかしくて、笑ってしまった。 塞「あははははっ……京太郎君、さっきも言ったけど、ありがとう」 京太郎「いえいえ……って、京太郎?」 塞「そ、これで私の部長としてのお仕事はおしまい。ある意味、もう君の先輩じゃないからね」 京太郎「そんなこと―――『だから』…?」 にこり、と笑う部長。 何処か晴れ晴れ……そんな雰囲気さえあった。 塞「だから、もう部の先輩後輩じゃなくて……京太郎君と私は友達、って間柄じゃないかな?」 京太郎「はい?」 塞「……あれ、嫌だった?」 京太郎「いえそんな!」 慌てて否定。 いや、部長が俺をそれくらい大切な。 大切な仲間に思ってくれている。 そうだと思うと、なんだろう……凄く、うれしい。 それに目元が熱くなりそうな気もする。 苦笑する部長は、また俺を見て続けた。 塞「友達だからね、私のこともこれからは塞って、呼んでくれないかな」 京太郎「はい、了解です部長……あっ」 塞「あ、部長って言ったね?」 京太郎「す、すいません!つい癖で…」 にぃ、と腕を組んで笑む塞さん。 俺はそれに小さく、頭を掻いて答える。 シロ「―――――え?」 え? 539 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 21 25 43.24 ID Itsf4tojo [26/53] 声が聞こえた。 ドアが開く音は、無かった。 いや、気づかなかったのか。 視線を、俺の背後。 ドアへと向ける。 そこには、二人。 シロ先輩。 そして、エイスリン先輩が居た。 エイスリン先輩は、笑顔。 違和感すら感じるような、満面の笑み。 反対に。 シロ先輩は。 先輩は……。 シロ「何、してたの?」 何処か、怖い声で。 塞さんを、見ていた。 塞「ああ、シロ。おかえり。いや、ちょっと京太郎君と話してただけ―――」 シロ「答えて、塞」 ふらり、ふらり。 浮遊するように一歩。 また一歩と、近づくシロ先輩。 その動きに、生気はない。 びくり。 少し震えた塞さんが短く、「あ、ああ」と声を搾った。 塞「団体が、試合が終わったからね。もう私も部長なんかじゃなくて、京太郎君の友達として呼び方を変えたんだ」 シロ「京太郎」 京太郎「本当です」 嘘を言わせない。 そういう空気がある。 シロ先輩が俺を見た。 何を考えているか分からない、暗い瞳が俺を写している。 そのままゆっくりと、口を開くのが見えた。 シロ「私も―――先輩、なんて言わなくていい、よ」 554 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 21 31 30.72 ID Itsf4tojo [27/53] シロ「シロ、でいい」 エイスリン「ワタシモ!」 少し、空気が軽くなった。 俺は詰まっていた空気を吐き出し、はい、と頷く。 シロさん、エイスリンさん。 俺がそう言って、顔を見る。 頷くエイスリンさん。 少し考えた後、同じように頷くシロさん。 空気が晴れる。 張り詰めた風船。 それが割れるんじゃなくて、普通に空気が出て行った。 そんな感じだろうか。 見れば、そこに居るのは何時ものシロさん。 さっきのは、何だったんだろうか。 俺は少しの興味と、本能。 それに揺られ、息を吐く。 深く考えない方がいいだろう。 俺は小さく、息を吐いた。 569 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 21 34 39.95 ID Itsf4tojo [29/53] 【クスクス】 【やっぱり幸せになれないんだね】 【早くこっちにおいで】 【“ ”が可愛がってあげるから】 584 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 21 37 47.77 ID Itsf4tojo [30/53] 【8月25日:朝】 個人戦の抽選日。 うちの学校からはシロさん、エイスリンさんが出場することになっている。 豊音さんは残念ながら能力制限で出場逃し。 鹿倉先輩、塞さんは防御型ということもあってかこれも出場を逃した結果だ。 つまり、宮守の2枚看板火力。 その二人が個人戦に挑むのである。 さて、その抽選発表が今日の昼から。 現在は朝、何をしているかと言うと……。 胡桃「充電、充電!」 エイスリン「クルミ!ウゴカナイデー」 京太郎「何なんですかこの構図」 今、俺が鹿倉先輩を“充電”しているその状態をエイスリンさんが絵に描いていた。 妙にシュール。 そんな感じの光景である。 というか、鹿倉先輩ってシロ先輩とだけ充電してなかったか? まぁそんな疑問は、エイスリンさんの言葉で消えるんだけど。 エイスリン「クルミ、キョウタローノ子供ミタイ!」 胡桃「え!?」 京太郎「はいぃ!?」 え、何でそんないきなり? しかも満面の笑みでそう言ってるしこの人。 そんな俺の疑問。 それは聞こえていないのか。 ただただ、笑顔なエイスリンさんがそこにいた。 エイスリン「ア、デモ!キョウタロノ子供ナラ、クロイロオカシイ!」 京太郎「黒色?って、ああ髪の毛の色ですか」 エイスリン「ウン!私トキョータロ、カミイッショ!」 京太郎「あっはは、だったら絶対金髪の子供ですねー」 エイスリン「ア……ウン……///」 京太郎「?」 胡桃「変態!」 京太郎「ええ!?何でですか!?」 649 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 22 01 40.09 ID Itsf4tojo [36/53] 【8月25日:昼】 中継が入る。 組み合わせ中継。 皆がそれを見つめている。 シロさんの相手が決まる。 エイスリンさんの相手が決まる。 それだけ。 ほんの一時間という放送。 それは終わった。 場に残ったのは、俺、鹿倉先輩、エイスリンさん、シロさん。 何やら鹿倉先輩が考えを二人に披露しているようで、俺は蚊帳の外だ。 だけど、ぽろり。 そう聞こえた中に、俺の名前があった。 ような気がする。 胡桃「―――以上!ということで頑張っちゃってね!」 エイスリン「ガンバル!」 シロ「頑張る」 京太郎「えええ!?エイスリンさんはともかくシロさんを頑張らせるだと!?」 俺の聞き間違いじゃないよね? 今、シロさんが「頑張る」って言ったよね!? 思わず戦慄。 鹿倉先輩、恐ろしい人……! 俺が慄く。 シロさん、エイスリンさんが俺を見た。 なんか視線が怖い。 まぁ、それは俺の気のせいなのだろう。 皆が解散。 俺は自分の部屋に戻る。 ノック音。 それにはい、と俺は答える。 ノックの感じは、少しテンポが悪い。 もしかすると。 俺の予想は当たる。 そこに居たのは、何時もの。 眠たげな目をした、シロさんだった。 京太郎「あの、どうしまし――――」 822 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 22 35 02.28 ID Itsf4tojo [41/53] ふわっ。 そんな風。 そして温かさ。 それが突然、俺に襲い掛かる。 固まったまま、俺は視線を下に。 胸元。 そこには、白色。 シロさんの、頭が見える。 抱きつかれてる。 それを理解するまで、結構の時間がかかった。 ような気がする。 多分。 いや、実際の接触時間はほんの数十秒なんだけど。 がちゃん。 鍵の閉まる音。 かちゃ。 チェーロックがかかる音。 その迷いのない動作。 俺が何かを言う前に。 先輩がまた俺に近づく。 ゆっくりと。 俺の脇から腰へと手を回し。 ぴったりと。 体を寄り添わせるように。 抱きつく。 京太郎「………」パクパク 絶句。 本当に今の状態は、それだ。 何を言うべきか。 そもそも喋っていいのか。 それが分からない状態だ。 シロ「京太郎…」 くぐもった声。 はい。 そうも答えれないほど、動揺していた。 シロ「喋らなくて、いい―――でも、聞いて」 静かに、そんな声で、シロさんが話す。 俺は小さく頷く。 それしか出来ない。 それを受けて。 シロさんが少し体を離して。 俺を見上げる。 シロ「私は………京太郎が、欲しい」 欲しい。 俺が、欲しい。 伝えた言葉。 それを肯定するように、首筋に唇を落とすシロさん。 それが、この間の俺の首筋についていた正体だと。 俺に教えるように。 シロ「ん……」 京太郎「痛―――ッ!」 カリッ。 痛み。 そして温かさ。 まるで猫が傷を舐めるように。 噛んだ痕を小さく舐める。 だけど、俺もそれで冷静になれた。 逆に。 痛みで正気を取り戻した。 そう言ってもいいかも知れない。 シロさんの肩を掴む。 そして、引き離す。 「あ…」と言う声。 そんな、甘さのある声。 俺を求める声なのだと。 そう思わせられると、思考がまたふやけそうになる。 だけど。 俺は息を呑む。 聞きたいことが、あったから。 889 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 23 18 32.08 ID Itsf4tojo [45/53] 京太郎「―――何で、今なんです?」 そう、俺は聞く。 今、つまりは大会なのに。 この人は、ダルい。 そうは言っても、麻雀には真面目だったはずだ。 仲間を大事にしているはずだ。 いきなりだ。 こんなことをいきなり、された。 俺にはそれが、分からない。 混乱している。 時間が欲しい。 俺の脳みそはそう叫んでいる。 ああそうだ。 訳が分からない。 何でこんな。 こんなことになっているのかも。 それは、問いかけ。 俺の問いかけ。 シロさんは、答える。 シロ「京太郎に、愛して欲しいから」 シロ「私だけを見て欲しいから」 シロ「エイスリンにも、塞にも、豊音にも、胡桃にも」 シロ「渡したくない」 シロ「私だけを見て、ほしい」 シロ「それだけ」 シロ「それだけ」 シロ「他の子と、京太郎が話してる」 シロ「それだけで、嫌」 892 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 23 20 12.39 ID Itsf4tojo [46/53] シロさんが近づく。 俺が一歩下がる。 逃げれない。 俺の脳裏にそんな考えが浮かぶ。 渡したくない。 そう、言った。 愛している。 俺を。 だけど。 それは。 一方通行すぎるんじゃないか? 俺には分からない。 シロさんが、俺の目の前に。 シロ「京太郎――――」 京太郎「―――――」 963 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/01/13(日) 23 35 42.75 ID Itsf4tojo [51/53] シロ「京太郎……」 京太郎「し、シロさん………」 手を引かれる。 ああ。 なんでだろうか。 逆らえない。 俺は、逆らえなかった。 ベッド。 シロさんの体が小さく跳ねる。 ぎしり。 俺の体重が、かかる。 待て。 待て待て待て。 俺は何をしている? こんな、いきなり。 俺はだって、まだ何も言っては。 言っては……。 シロ「――――来て」 京太郎「――――――」 【END:全ては薄氷の関係】
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3442.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361874491/ 京太郎「東横ー。いるか?」 桃子「いるっすよ。席に座ってるっす」 京太郎「ああ、そこにいたのか。何やってるんだ?」 桃子「パソコンで麻雀をやってるっす。見ればわかるじゃないっすか」 京太郎「見ればってお前……」 桃子「……」 京太郎「……」 桃子「……はぁー。ノリ悪いっすね! ここは『いや見えねえよ!』とか言うところっすよ!」 京太郎「それで悩んでる奴にいきなりそんなこと言えるか!」 桃子「まったく、次からは気をつけるっすよ」 京太郎「はいはい……。で、麻雀って誰とやってるんだ? ネット麻雀ってやつ?」 桃子「んーネットはネットっすけど、学内ネットでやってるっす」 京太郎「そういうのもあるのか。てことは相手は同じ学校の人だな」 桃子「そうっす。麻雀部が最近始めたみたいっすね。掲示板にチラシが貼ってあったっす」 京太郎「へー。挑戦者来たれ! みたいな感じか?」 桃子「そういう感じではないっすね。チラシには麻雀に興味ある人歓迎って書いてたし」 桃子「何度か勧誘も受けてるから部員集めの一貫だと思うっす」 京太郎「初心者歓迎ってことか」 桃子「興味あるなら須賀くんもやってみたらどうっすか?」 京太郎「いや、俺はいいよ。ノートパソコン持ってないし、そもそも麻雀の役もわからないしな」 京太郎「興味はあるからよければ観戦させてくれ」 桃子「いいっすよー。私の勇姿を見るがいいっす!」 京太郎「おう、期待してるぞ」 桃子「くーっ! また勝てなかったっす!」 京太郎「麻雀部3人を相手に2位なら十分凄いじゃないか」 桃子「これでも麻雀の腕には自信があるんすよ。そこらの麻雀部員にも引けをとらないくらいには」 桃子「なのにこのかじゅって人にはなかなか勝てないっす」 京太郎「麻雀って運に左右されるんだろ? そういうこともあるさ」 桃子「20局以上打って勝ったのは数回だけ。さすがに悔しいっす……」 京太郎「20局で数回……。麻雀はよくわからないんだけど、それはどのくらい強いってことなんだ?」 桃子「ええと、そうっすね。風越女子は知ってるっすか?」 京太郎「そりゃもちろん。長野の女子麻雀部では一番強いとこだろ」 桃子「その風越でレギュラーになれる。少なくともそれくらい強いと思うっす」 桃子「まあもちろん、実際に打つのはダメって人も中にはいるっすけどね」 京太郎「そんなに強いのか……ん? なんか書いてるみたいだぞ」 かじゅ『打ち筋からしていつも打ってくれている人だろうか? 今日も来てくれてありがとう』 むっきー『また負けちゃいました。やっぱり強いですね。一度だけでも麻雀部に見学に来てくれませんか?』 カマボコ『しつこかったらごめんなー。でも毎日来てくれて本当に嬉しいんだ』 カマボコ『見学に来たから入れ、なんてことは言わないし、それに来てくれればきっと気に入ると思うんだ』 かじゅ『気が向いたら来て欲しい、と言いたいところなのだが私たちには時間がない』 かじゅ『だから君が麻雀のことを好きなら、ぜひ部室に来て欲しい。後悔はさせない』 京太郎「おお……。凄い勧誘だな。ほら、返事書こうぜ」 桃子「……今書くっす」 default player『気持ちは嬉しいです。でもごめんなさい』 ---default playerはログアウトしました--- 京太郎「……ってあれ?」 桃子「どうかしたっすか?」パタン 京太郎「いや、見学くらい行ってもいいんじゃないか? あれだけ熱心に言ってくれてるんだしさ」 桃子「……まあいいじゃないっすか。ほら、帰るっすよ」 京太郎「あっ、おい」 桃子「先に行ってるっすよー」 京太郎「ちょ、ちょっと待て。先に行かれたらまた見つからなく……」 桃子「校門から出るまでに見つけられなかったら明日の昼ご飯おごりっす!」タッタッタッ 京太郎「いきなり何言って……って待て、走るなー! 見つからなくてもおごらないからな!」 桃子「見つけたら私がおごってあげるから頑張って探すっすよー!!」タッタッタッ 京太郎「絶対見つけてやる……!!」 その後東横のことは校門の辺りで電話をかけて、その着信音で見つけた。 東横には卑怯っす! ノーカウントっす!! と怒られた。理不尽だ。 ---3日後--- 京太郎「東横ー、いるか? 今何やってる?」 桃子「パソコンで麻雀っすよ。見ればわかるじゃないっすか」 京太郎「見れたらこんなこと聞かないっての」 桃子「……他人のコンプレックスにズバズバ切り込んでくるっすね」 京太郎「この前スルーしたらノリ悪いとか散々言ったよな!?」 桃子「記憶にないっす!」 京太郎「まったく……。麻雀はこの間の麻雀部の人とか?」 桃子「そうっすよー」 京太郎「俺あれから役とか覚えてみたんだよ。また見せて貰っていいか?」 桃子「いいっすよ。今ちょうど終わったところなんでちょっと待つっす」 京太郎「了解」 桃子「……いつもはすぐ次の局に入るんすけど今日はちょっと時間かかるっすね。席を外してるみたいっす」 京太郎「まあそういうこともあるさ。ゆっくり待とうぜ」 京太郎「……ん? あれ、今日はこの前みたいにチャットで勧誘されてないんだな」 桃子「そうなんすよね。今日は勧誘してこないみたいっす」 京太郎「脈なしと思って諦めたんじゃないか?」 京太郎「4月が終わっても勧誘してたってことはメンバーが足りないんだろうし、他の人を探すことにしたとか」 桃子「そう、かもしれないっすね。まあ何度も断っちゃったししょうがないっす」 京太郎「……毎日のようにパソコンで打ってるんだし麻雀は好きなんだろ? なんで入らなかったんだ?」 桃子「んー、まあ大した理由じゃないっす。こういう体質っすから集団行動とか苦手なんすよ」 桃子「今までこんなに必要とされたことがなかったから嬉しかったは嬉しかったっすけどね。ただ……」 京太郎「ただ?」 桃子「言うのはちょっと恥ずかしいっすけど、やっぱり、直接言ってもらうのに憧れる」 桃子「目の前で、私の目を見て必要だって言って欲し――」 そこまで言ったとき、突然教室のドアが開かれ ゆみ「麻雀部3年の加治木ゆみだ!」 そんなことをいいながら、上級生が1人教室へと入ってきた。 穏やかな放課後に突如乱入してきたその人は、教室の真ん中までツカツカと足を進め、 忙しげに周りを見渡したかと思うと大きく息を吸い込んだ。 そして―― ゆみ「私は君が欲しい!!」 京太郎・桃子「「!?」」 大声でそんなことを叫んだ。 クラスメイト達は遠巻きにして成り行きを見守っている。 下級生の教室で突然あんなことを大声でいう上級生が相手だ。普通なら俺だって関わろうと思わない。 でも事情を知っているからにはどうにかしないとなーみたいな責任感が芽生えてしまう。 だからまずは、目を白黒させている友人を焚きつけてやろう。 京太郎「東横。よかったな、まだ勧誘諦めてなかったみたいだぞ!」 桃子「その笑顔をやめるっす!」 京太郎「でもほら、東横の望み通り直接誘いに来てくれたわけだし」 ワタシノハナシヲキイテホシイ!!> 桃子「まあそれは心底嬉しいっす」 桃子「須賀くんは茶化してると思うっすけど、私の中では嬉しさが溢れかえってるっすよ」 マジか。いやまあ茶化しているわけではないんだけど。 桃子「ただそれはそれとして、今あそこに行くのはちょっと恥ずかしいっす……」 ワタシニハキミガヒツヨウナンダ!!> 京太郎「注目の的になれるぞ。本望じゃないか」 桃子「限度があるっす!」 今も叫んでるもんな。見た目と違って情熱的な先輩らしい。 スコシデイイ、ハナシヲシヨウ!!> 京太郎「冗談はともかく、ここまで来てくれたんだし、麻雀部に入りたいとは思ってるんだろ?」 桃子「それはそうっすけど……」 京太郎「よし、じゃあ行くぞ」 桃子「ちょ、手を引っ張らないで……!」 ゆみ「頼む、姿を見せて――」 京太郎「あの、ちょっといいですか?」 ゆみ「!! ああ! もち、ろん……だ…………」 念願の新入部員が来たというのになぜか語尾が弱々しい。 ってそうか、東横のこと見えないんだったな。 ゆみ「その、もしかして君が私たちと麻雀を一緒にやっていた人、なのか……?」 俺しかいないと思って目に見えて落ち込む先輩。 美人のしゅんとした姿を見ていると、なんというか、もっといじめたくなってしまう。 まあかわいそうだからやらないけど。 京太郎「あれは俺じゃないですよ。ちゃんと女子です」 ゆみ「本当か!! あ、い、いや、これは君が悪いとかそういうわけではなくてだな」 落ち込んだ様子から一転して明るい表情に。そして間を置かず見せる焦った姿。 ああ、可愛いなこの人。クールビューティーな見た目とのギャップが凄くいい。 京太郎「大丈夫ですよ、事情は聞いてますしわかってます」 ゆみ「そ、そうか。ありがとう」 京太郎「それで俺の隣にいるのが先輩の探しているやつです」 ゆみ「……? すまない。隣には誰もいないように見えるのだが」 京太郎「見えないけどいるんですよ。ほら、ここです」 桃子「どうも、初めまして。東横桃子っす」スゥ ゆみ「」ビクッ 京太郎「あ、やっぱり驚きますよね。いつものことなんで気にしないでください」 桃子「他人に言われると無性に腹が立つっすね」 ゆみ「君は一体いつからそこに……いや、そうか。君はそういう体質なんだな」 桃子「自分で言うのもなんですけど、受け入れるの早いっすね」 ゆみ「チャットの会話から何か理由がありそうだとは思っていたのでな」 ゆみ「我ながら少々派手なことをしたかなと思ったが、結果的には間違っていなかったようだ」 京太郎「いま少々って言ったか?」ヒソヒソ 桃子「言ったっすね。ちょっと見習いたいっす」ヒソヒソ ゆみ「聞こえてるぞ……まあ、それはともかくだ。改めて言わせてもらいたい」 ゆみ「東横くん。私は、私たちには君が必要だ。麻雀部に入って欲しい」 加治木先輩は、真っ直ぐに東横の目を見つめてそう言った。 傍から見ていてもこの上なく真剣に言っているのだと感じる。 東横の望み通り、もしかしたらそれ以上のシチュエーション。 これならきっと麻雀部に入るだろうと東横のほうを見ると 桃子「…………」 あれ、なんか微妙な表情。 京太郎「東横?」 桃子「うーん」チラリ 京太郎「?」 ゆみ「……」ソワソワ 桃子「えっと、一つ条件、というかお願いがあるっすけど……」 ゆみ「何だ? 何でも言ってくれ」ガタッ 東横はなぜか加治木先輩ではなく俺の方を向く。 そして―― 桃子「……須賀くんも麻雀部に入って欲しいっす」 京太郎「……は?」 突然、そんなことを言い出した。 ゆみ「……その、須賀くん……でいいのかな」 京太郎「……へ!? あ、はい!」 ゆみ「今の東横くんの提案なのだが君としてはどうだろうか」 京太郎「ええと、そのですね……。と、東横? なんでいきなりそんなこと」 桃子「えっと、どうしても嫌なら無理にとは言わないっす。わけも……」チラリ ゆみ「?」 桃子「……別に隠すようなことじゃないしすぐ教えるっす。ただ、出来れば須賀くんにも麻雀部に入って欲しいっす」 桃子「ダメっすか……?」ウワメヅカイ 京太郎「う……」 京太郎「か、加治木先輩はどうなんですか」メソラシ ゆみ「あ、ああ。突然で驚いたが麻雀部としては断る理由はない」 ゆみ「……というか、その、入って貰わないと凄く困る」 ゆみ「君にとっても突然みたいだし困惑していると思う」 ゆみ「君にも都合があるだろう。だから助けると思ってとは言わない」 ゆみ「それでも、君がもし少しでも麻雀に興味を持っているなら、麻雀部に来て欲しい」 ゆみ「……だめだろうか?」ウワメヅカイ 京太郎「うう……!」 右を向けば東横が、左を向けば加治木先輩が、上目遣いで俺を見ている。 タイプは違うけれど美人といって差し支えない2人。 京太郎(……こんなの断れるかー!!) 京太郎「俺でよければよろしくお願いします」 ゆみ「本当か! ……ありがとう」フカブカ 京太郎「ちょ、頭を下げるのはやめて下さい!」 京太郎「さっき麻雀に興味があるなら来て欲しいって言ってたじゃないですか。だから入るんですよ」 ゆみ「……うん、そうか。須賀京太郎くん。入部してくれてありがとう」 ゆみ「東横くんは……」 桃子「女に二言はないっす! 加治木先輩、よろしくお願いします」 ゆみ「ああ、よろしく。……東横くん、ありがとう。君のおかげで私たちは大会に出ることが出来る」 桃子「私も興味があったからネトマしてたんですよ。何度も断ってたのに直接誘いに来て貰えたなんて……本当に嬉しいっす!」 桃子「それより、誘った私が言うのもなんっすけど須賀くんはこの場で決めちゃってよかったんすか?」 京太郎「どうせ放課後暇してたしさ。それに麻雀に興味を持ったってのも本当だぜ」 桃子「無理してないならよかったっす」エヘヘ ゆみ「2人とも、入部ありがとう」 ゆみ「それでは早速だが、2人がよければ今から麻雀部に来て貰いたい。部員の紹介もしたいんだ」 桃子「私は大丈夫っす」 京太郎「俺も特に予定はないです」 ゆみ「よし、じゃあ私は先に廊下に出ているよ。あまり長居しても迷惑だろうし」 京太郎(……はっ!? 急展開すぎてここが教室だって忘れてた) 京太郎(冷静になるとクラスメイトの視線が痛い……!!) ゆみ「ん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ、なんでもないです。廊下で待ってて下さい」 京太郎(明日の反応が怖いな……)ハハハ 加治木先輩が先導して、俺と東横はその後をついていく。 意識しないと声が聴こえないくらいの距離を取り、ついて来ているか確認しているのかときおりこちらを振り返る。 京太郎(東横と話しやすいように気を遣ってくれたのかな) 京太郎(せっかくだし今のうちに聞いておくか) 京太郎「なあ、東横。俺を誘った理由って何だったんだ?」 桃子「え? ああ、ほら、私ってこういう体質じゃないっすか」スゥ 京太郎「話してるときに消えるな!」 桃子「冗談っすよ。こうやって意識して消えることも出来るっすけど、基本的には人に見つけてもらえない厄介な体質なんすよ」 京太郎「ああ、知ってる。俺が見つけられたのも偶然だったしな」 桃子「加治木先輩が教室に来て、誘ってくれて嬉しかった。でも私がこういう体質なのは知らなかったじゃないっすか」 京太郎「まあそんな体質があるなんて普通思わないよな」 桃子「それで、こういう体質の私とコミュニケーション取るのって大変っすよね」 桃子「私から話しかければ驚かれる。話しかけて貰おうにも私のことは見えないから、いるかわからないところに声をかけるしかない」 京太郎「ん……楽と思ったことは確かにないな。けど面倒だとか思ったことも一度もないぜ」 桃子「ありがとうっす。須賀くんはそうやって受け入れてくれたっすね」 桃子「麻雀部の人たちは私を必要としてくれた。でもそれと私を受け入れるかっていうのは別っすよね」 桃子「加治木先輩もきっと私に合わせてくれると思うっす。だけど他の人たちもそうやって受け入れてくれるか不安だったっす」 桃子「だから私との付き合いに慣れてる須賀くんが入ってくれたら安心だなって。それが理由っすよ」 京太郎「……気にしすぎじゃないか?」 桃子「そういうと思ったっす。須賀くんは私の体質は知ってても苦労までは知らないっすからね」 京太郎「それを言われるとな……。まあ不安だっていうなら、俺でよければいくらでもいくらでも入るよ」 京太郎「でもあそこまでして必要としてくれる麻雀部だ。きっと東横の心配するようなことにはならないと思う」 桃子「私の取り越し苦労だったらそれが一番っすね。そうすると須賀くんには迷惑かけただけになっちゃうっすけど」ニコッ 京太郎「さっきも言ったろ。好きで入ったんだって。……お、着いたみたいだぞ」 ゆみ「ここが麻雀部だ。入ってくれ」ガラッ 京太郎「おじゃまします」 桃子「おじゃまするっす」 智美「ゆみちんおかえりー。期待の新入部員はどうだ……ってあれ?」 睦月「ええと、先輩。もしかして麻雀の相手はそっちの男の子だったんですか?」 ゆみ「ああいや、ちゃんと女子だったよ。ええと……」キョロキョロ ゆみ「すまない東横くん。姿を見せて貰えるか」 桃子「はいっす。私はここっすよ!!」バーン 智美「」ビクッ 睦月「」ビクッ ゆみ「」ビクッ 京太郎(おー、みんな驚いてるなー) ゆみ「すまない、どうもまだ慣れていないようだ……」ドキドキ 桃子「私は慣れてるので気にしないで欲しいっす」 ゆみ「そうか……なるべく早く慣れるようにするよ」 智美「ゆ、ゆみちん……」 ゆみ「ん? どうした」 智美「私はついに霊感を獲得したみたいだ!」 ゆみ「失礼なことをいうな!」 睦月「その、先輩。彼女が新入部員ですか? 今のは手品かなにかですか?」 ゆみ「ああ、彼女が今日から麻雀部に入部する東横桃子くんだ。今のについては彼女自身から聞いたほうがいいだろう」 桃子「改めまして、今日から麻雀部に入部することになりました東横桃子っす」 桃子「私は極端に存在感が薄くて、中々気づいて貰えない体質なんすよ。 さっきのも隠れていた訳じゃなくて私はずっとそこにいたっす」 桃子「こういう体質っすから迷惑かけることもあると思うっすけど、これからよろしくお願いします」ペコリ 睦月「そうだったのか……ごめんなさい、驚いてしまって」 智美「私もごめんなー。でももう驚かないぞ」ワハハ 智美「しかし世界は広いなー。こんな体質もあるなんて」 睦月「そうですね。目の前にいたのに気づけなかったなんて……」 京太郎(2人とも驚いたみたいだけど、気味悪がったりはしていない) 京太郎(別に特別な反応じゃない。普通の人なら誰だってこんな反応をするはずだ) 京太郎(まあでも……)チラリ 桃子「……」 京太郎「な、俺の言ったとおりだったろ」 桃子「……そうっすね!」 智美「ところでゆみちん。そこの金髪の子は誰なんだー」ワハハ ゆみ「ああ、こっちは須賀京太郎くん。彼も同じく新入部員だ」 京太郎「須賀京太郎です。麻雀は初心者ですがよろしくお願いします!」 睦月「うむ、よろしく。一気に2人も入ってくれて嬉しいよ」 智美「君も新入部員かー。鶴賀麻雀部史上初めての男子部員だな!」 睦月「まあ共学化したのも今年からですしね」 京太郎「ははは……泥を塗らないように頑張ります」 智美「頼むぞー少年」ワハハ ゆみ「さて、次は私たちが自己紹介する番だな」 智美「まずは部長の私からかなー」ワハハ 京太郎「えっ」チラリ 桃子「えっ」チラリ ゆみ「……私は部長じゃないぞ」 智美「……このくらいでは泣かないぞ」ワハハ 京太郎「す、すみません!」 桃子「ごめんなさい!」 智美「冗談だよ、冗談。期待通りの反応してくれて嬉しいぞー」ワハハ 智美「私は蒲原智美だ。麻雀部の部長をやってるぞー」 京太郎「いやその、すみません。よろしくお願いします、蒲原部長」 智美「智美」 京太郎「え?」 智美「智美って下の名前で呼んでくれ。私たち3年生は早ければ6月の頭には引退しちゃうからなー。早く仲良くなりたいんだー」ワハハ 京太郎「ええと、それじゃよろしくお願いします。智美部長」 智美「よろしくなー京太郎」 桃子「よろしくっす! 智美部長!」 智美「よろしく……モモって呼んでいいかー?」ワハハ 桃子「……! はいっす! 嬉しいっす!」 智美「よかったー。よろしくなーモモ」 睦月「じゃあ次は私が。私は津山睦月。部長たちとは違って2年生だ」 京太郎「よろしくお願いします、えっと……」 睦月「……? ああ、そうか。よろしく、京太郎くん」 京太郎「はい! よろしくお願いします、睦月先輩」 睦月「うむ」 桃子「私もよろしくっす! 睦月先輩!」 睦月「うん、よろしく。モモ」 ゆみ「さ、最後は私か……」 京太郎「どうかしましたか?」 ゆみ「い、いや。なんでもないんだ」 ゆみ「2人とも知っていると思うが改めて」コホン ゆみ「私は加治木ゆみ。3年生だ」 桃子「よろしくっす! ゆみ先輩もモモって呼んで欲しいっす」 ゆみ「ああ、わかった。よろしくな、モモ」 京太郎「よろしくお願いします、ゆみ先輩」 ゆみ「――!」カアァ 京太郎「……ええと、本当に大丈夫ですか?」 ゆみ「だ、大丈夫だ!」 ゆみ「よろしく、きょ、きょう……うぅ」 ゆみ「ちょ、ちょっと待ってくれ」スーハー 京太郎「はい、ゆみ先輩」 ゆみ「――――!!」カアァァァ 桃子(空気読まないっすねー) 睦月(あれはわざとやってるのかな) 智美(期待の新人だなー)ワハハ ゆみ「……その、すまない。須賀と上の名前で呼ぶことにしていいだろうか」 京太郎「え? え、ええ。いいですよ」 ゆみ「それと私のことも加治木先輩と呼んでくれると助かる」 京太郎「わかりました……」 京太郎(俺嫌われたのかな……)ズーン 桃子「そんなことないから安心するっす」ポン 京太郎「え、今の声に出てたか!?」 桃子「顔見れば須賀くんの考えてそうなことくらいわかるっす」 桃子「……あ、そうだ。今度から須賀くんも私のことはモモって呼んで欲しいっす」 京太郎「ああ、これから頑張ろうな。モモ」 桃子「一緒に頑張るっす! 京太郎!」 --------------------------------------- ゆみ「自己紹介も済んだことだし麻雀を打とうか。モモとはネットで何度も打っているが実戦での実力も知りたいしな」 桃子「私は実戦のほうが得意っすよー」フフフ ゆみ「それは楽しみだな。須賀くんも一緒に入ってもらっていいか?」 京太郎「いえ、俺は実戦どころかネットでもやったことないので……」 ゆみ「それなら最初は見学からだな」 京太郎「はい、そうさせてもらいます」 智美「誰か一人のをじっくり見てるといいと思うぞー」 京太郎「わかりました。じゃあモモ……」 桃子「あ、私はやめたほうがいいっすよ」 京太郎「え?」 桃子「勉強するつもりなら私のは見ないほうがいいっす」 京太郎「……? まあそういうなら。ええとそれじゃあ――」 京太郎(やっぱり強い人のほうがいいよな。かじゅは加治木先輩だろうし) 京太郎「加治木先輩。見てていいですか?」 ゆみ「わ、私か!?」 京太郎「だ、駄目なんですか?」 ゆみ「い、いや。ちょっと驚いただけだ」コホン ゆみ「私で良ければ参考にしてくれ」 京太郎「え、ええ。もちろんです」 智美「ゆみちん。そういうのちょっと直した方がいいなー」ワハハ ゆみ「わ、わかってるっ」 智美「じゃあ始めるぞー」タン 桃子「負けないっすよ」タン 睦月「ネトマで何度も負けてるけど、先輩として最初くらいは……!」タン ゆみ「私も譲る気はないぞ」タン ………… ……… …… … 【南二局】 智美「リーチ。ゆみちんをまくってやるぞー」ワハハ 桃子「……」タン 睦月(うーん……降りよう)タン ゆみ(蒲原の捨て牌は……)チラ ゆみ(こっちかな)タン ……… …… … 智美「テンパイ」 桃子「ノーテンっす」 睦月「ノーテンです」 ゆみ「テンパイだ」 智美「うっ、また止められてたか。今回はわからないと思ったんだけどなー」ワハハ ゆみ「蒲原とは何度も打ってるからな。なんとなくわかるさ」 京太郎(南二局まで終わって、振り込んだのは睦月先輩と蒲原先輩が一回ずつ) 京太郎(加治木先輩ももちろんだけど、他の3人も全然振り込まないな) 京太郎(……見ててもどうやって止めてるのかさっぱりわかんねえ!!) ゆみ「須賀くん? どうかしたか?」 京太郎「あーその。染め手とかは分かるんですけど、今のとかどうやって止めてるのかなと思いまして」 ゆみ「ああ、なるほど。基本的には捨て牌を見て予測しているんだ。筋とか色々あるんだが……まだ君には早いな」 京太郎「はい」キッパリ ゆみ「そう断言されても困るな」ハァ ゆみ「他にも相手を直接観察して理牌や目線を見ているが、これは慣れるまではやめたほうがいいだろう」 ゆみ「まあ特に理牌は相手の癖を知らなければわからないから、あまり使うべきではないのかもしれないが……ん?」 京太郎「」ポカーン 智美「」ポカーン 睦月「」ポカーン ゆみ「ど、どうした?」 京太郎「い、いえ。そんなことまで考えて麻雀をしているんだなと」 ゆみ「まあ必ず当たるわけではないし、そんなに大したことではないさ」 ゆみ「というか須賀くんはともかく、蒲原と津山は知っているだろう」 睦月「いえ、そういう技術があるのは知ってますがこんな身近に実践している人がいたなんて……」 智美「私はそこまでの余裕はちょっとないなー」 ゆみ「何もずっと見ているわけじゃないぞ? 重要なところだけ見ればいいんだ」 ゆみ「まあその辺りは対局が終わったら教えようか。雑談はこの辺りにして、次の局に行こう」 桃子「…………」 京太郎(そういえばモモのやつさっきから全然話してないな。集中してんのかな……?) 【南三局】 睦月(ラス親かあ。まだ焼き鳥だしここでなんとか)タン ゆみ(今のところトップで2位のモモとは約1万5千点差) ゆみ(配牌は四向聴か)タン タン タン タン タン タン…… 桃子「リーチっす」タン 京太郎(モモは索子の染め手っぽいな。これくらいはわかるぞ!) 睦月(一向聴から中々進まない……!)タン ゆみ(形聴は狙えそうだな)タン 智美(ううん、引きが悪いなー)タン 京太郎(あれ、リーチしたのにみんなあんまり反応してないな) 桃子「……」タン ゆみ(役牌が重なった。これなら上がりも狙えるか)タン 京太郎(索子!? しかも1枚も見えてない三索!?) 桃子「ロン! 立直、混一色で7700っすよ!」 ゆみ「なっ!?」 智美・睦月「えっ!?」 ゆみ「モモ、リーチ宣言は……」 桃子「ちゃんとしたっす!」 京太郎「俺も聞いてました。そんな小さな声じゃなかったと思うんですが……」 ゆみ「ん……そうか。それはすまない」 ゆみ(さっきの反応からして蒲原も睦月も、モモのリーチ宣言を聞いていない) ゆみ(かといってモモも須賀くんもそんな嘘を付きはしないだろう) ゆみ(つまりおそらく――――) 【南四局】 ゆみ(配牌はあまり良くないか……どこまで対抗できる分からないが、やるだけやってみるとしよう)タン 智美(今のは何だったんだー?)タン 桃子(フッフッフ。ネトマのリベンジ達成はもうすぐっすよー)タン 睦月(リーチが聞こえなかったなんて、こんなの初めて)タン ゆみ「チー!」タン 桃子(仕掛けが速いっすね) ゆみ「ポン!」タン 智美(東を鳴かれたかー。いや、でもこれは速いというか……) ゆみ「チー!」タン 睦月(こんな先輩らしくない無理矢理な仕掛けをなんで……?) ゆみ「ポン!」タン 京太郎(四副露!? なんでここまで急ぐ必要が……) 桃子(ううー、なるほど。そういう手もあるんすね……) ゆみ「ロン。東のみ」 1位 加治木ゆみ 2位 東横桃子 3位 蒲原智美 4位 津山睦月 【終局】 桃子「いやー参ったっす。初見では絶対負けない自信があったんすけどねー」 ゆみ「たまたま運がよかっただけだよ。トータルではおそらく私が負け越すさ」 桃子「そもそも東場で消えられるのが普通なんすよ。まさか南二局までかかるとは思わなかったっす」 京太郎「ええと、モモ。何の話?」 桃子「最後の二局のことっすよ。ゆみ先輩が私に振り込んだのは見たっすよね?」 京太郎「ああ。加治木先輩にしてはおかしいなと思った」 ゆみ「あのときだが、私にはモモの捨て牌が見えていなかった……いや、それでは正確ではないな」 ゆみ「私にはリーチ宣言も聞こえていなかった。モモのことが認識できていなかったんだ」 京太郎「……はい?」 睦月「よかった。聞こえなかったの私だけじゃなかったんですね」 智美「むっきーも聞こえてなかったか。私も聞こえてなかったぞー」ワハハ 京太郎「いや、確かにモモは存在感薄いですけど一緒に麻雀してて消えるなんて……」 桃子「ほら、来る途中にもやったじゃないっすか。私は自分の意志でも消えられるんすよ?」 京太郎「……あー。そういえば」 桃子「麻雀でやると私だけじゃなく牌も消せるんすよ。正確に言えば気づかなくさせるっすけど」 京太郎「つまり相手に警戒されなくなるし、振り込むこともなくなるってことか? そりゃすごいな」 桃子「気づかれない私の唯一の利点といっても過言じゃないっす! まあまさか初見で破られるとは思わなかったっすけど……」 京太郎「ああ、加治木先輩が鳴きまくってたのはそれで……」 ゆみ「破るなんて大層なものじゃないさ。たまたま運よく行っただけだ」 ゆみ「どうせ見えないなら防御するのも不可能だからな。上がられたら確実に まくられてしまうし、なら鳴いて速く手を進めてしまえというだけだよ」 桃子「まあ理屈ではそうっすけど……私が鳴けないから手が遅いってのもわかった上でやったんすよね。凄いっす!」 ゆみ「ネトマのときから極端な面前思考で気になっていたから試してみたんだ。上手くいって幸いだった」 京太郎「なんというか……追いつける気がしない」 智美「気にするな京太郎。私もだー」 睦月「私なんてリーチ宣言聞き逃したとしか思ってませんでしたよ……」 ゆみ「さて、じゃあもう1局打とうか」 桃子「次は負けないっすよー」 智美「京太郎、私が抜けるから代わりに入るんだー」ワハハ 京太郎「え!? でも俺ほんと初心者で……」 睦月「私も入ってすぐ打たされたよ。とりあえずやってみよう?」 ゆみ「とりあえず簡単なルールさえ分かっていれば大丈夫だ。別に練習だし軽い気持ちでいいぞ」 京太郎「……そうですね。よろしくお願いします!」 ………… ……… …… … 京太郎「」ズーン 智美「見事に飛んだなー」 桃子「見事に飛んだっすねー」 睦月「先輩の倍満と跳満に続けて振り込み……」 ゆみ「その、すまない。どうも運がよすぎたようで……」アセアセ 京太郎「い、いえ。手加減しちゃ練習になりませんしね……」ハハハ ――帰り道―― 智美「それじゃあ私たちはこっちだから」 桃子「また明日っすー!」 睦月「さようなら先輩。京太郎くん、また明日」 京太郎「はい、お疲れさまでした」 ゆみ「ああ、また明日」 下校途中の大きな交差点。鶴賀の生徒の多くはここで大きく二手に分かれて帰宅する。 俺達麻雀部もそのご多分に漏れず、俺と加治木先輩は右へ、部長と睦月先輩とモモは左へと分かれることになった。 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎「……その、加治木先輩自転車押してますけど家遠いんですか?」 ゆみ「あ、ああ。学校まで大体自転車で20分ちょっとかかるな」 京太郎「そうなんですか。……急いでるようでしたら俺に気を遣わなくても大丈夫ですよ」 ゆみ「いや、今日は特に何もないから大丈夫だ。途中まで……い、一緒に帰ろう」 京太郎「そうですか……」 ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎「……」テクテク 京太郎(……き、気まずい!!) 京太郎(なんか会話もぎこちないし、嫌われたのか苦手に思われたのか……) 京太郎(こっちから話しかけないほうがいいかな。でもこのまま無言ってのも……) 京太郎(うん、悪いところがあったら直せばいいんだしな。もう一回声をかけて) ゆみ「須賀くん!」 京太郎「は、はいぃ!!?」 京太郎(な、なんだ!? なんかしたか俺!?) ゆみ「その、だな……」 京太郎「……」 ゆみ「……」 京太郎「…………」 ゆみ「……すまない、ちょっと情けないことで話すのに心の準備が必要でな」 京太郎「……?」 ゆみ「ふぅ……」スーハー ゆみ「……その、私は男子と話すのが得意ではなくてな」 京太郎「……は?」 ゆみ「君に対してそっけない態度を取っていると思うのだが、決して君のことが嫌いとかそういうわけではないんだ」 京太郎「え、いやでも部活とか教室ではそんなこと全然」 ゆみ「麻雀なら君に対しては指導するという立場でいられるからな。普通に話すのに比べれば大した緊張はない」 ゆみ「教室は……あのときの私はどうかしていた」カァァァ ゆみ「部員を見つけることだけを考えていて、他のことは何も頭になかった。緊張なんてする暇もなかったよ」 京太郎「そうだったんですか」 ゆみ「だから、その、だな。君を不快にさせてしまったかもしれないが、決してわざとというわけではないんだ」 京太郎「ははは、嫌われたのかと思ってましたよ」 ゆみ「す、すまない……」シュン 京太郎「い、いえ。そういうつもりでは」 京太郎「言ってくれて嬉しかったですよ。言われなかったら誤解したままだったかもしれないです」 ゆみ「ん……そうか。そういってくれると助かる」 京太郎「でも意外ですね。男子とか苦手な風には見えないです」 ゆみ「ふむ、まあ女の子らしい見た目ではないからな」 京太郎「そんなことないですよ!」 ゆみ「はは……うん、そう言ってくれるのは嬉しいよ」 京太郎(本心なんだけどなあ……) ゆみ「男子と話すのが苦手な理由は、まあ単純に話す機会がなかったんだ」 京太郎「小さい頃から女子校だったんですか?」 ゆみ「いや、そういうわけではないんだが、私は小さい頃から何かと男子を注意するような役回りになることが多くてな」 京太郎「あー……」 ゆみ「今日一日一緒にいただけだが、何となく分かるだろう?」 京太郎「ええ、なんとなくわかります」 ゆみ「自分から言うことはそんなになかったんだが、女子から注意してくれとよく頼まれた」 ゆみ「そのせいで男子からは敬遠され、女子からはさらに頼られ、男子と普通に話す機会をほとんど持てなかった」 ゆみ「その上女子校に入学してしまったからな。自業自得ではあるんだが、慣れようがなかったんだ」ハハハ 京太郎「共学化したときとかはどうだったんですか?」 ゆみ「麻雀部に来るかもしれないと思ってやはり緊張したよ。結果は……まあ今日見た通りだが」 京太郎「あはは……」 ゆみ「まさか1人も入らないとは思わなかった。まあ確かに麻雀をやりたい子がわざわざ鶴賀に来るわけはないんだが」ハァ ゆみ「だから今日、モモと君、2人も入ってくれて本当に感謝している」 京太郎「モモはわかりますけど俺もですか?」 ゆみ「ああ、もちろんだ」 京太郎「でも俺は男子ですし、麻雀も初心者ですよ」 ゆみ「確かに大会には出たいし、そのために部員を集めていた。 でも私が卒業した後、部員不足で麻雀部が潰れてしまっては悲しいだろう?」 ゆみ「女子だろうと男子だろうと、麻雀の経験があろうとなかろうと関係ない。私は君が入ってくれてとても嬉しかったよ」ニコッ 京太郎「――!」カァァ ゆみ「うん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ。なんでもないです」 京太郎(ほんと先輩はストレートだな……!) 京太郎「そういえば部員って今日いたので全員なんですか?」 ゆみ「? あれで全員だがそれが?」 京太郎「いえ、麻雀の団体戦って5人でやるじゃないですか。1人足りないんじゃないかと」 ゆみ「ああ、そのことか。確かに説明していなかったな」 ゆみ「蒲原には幼馴染がいるんだが、その子が4人集まったら入ってくれると言っているらしいんだ」 京太郎「ああ、じゃあモモが入ったからその人も入ってくれるんですね」 ゆみ「そういうことだ。彼女は初心者と言っていたかな。君と一緒だ」 京太郎「へーそうなんですか。よかったです、1人初心者で気後れしてたんで……」ハハハ ゆみ「誰だって始めたときは初心者だよ。これから上手くなればいい」 京太郎「今日の加治木先輩とモモの会話聞いてたらそうは思えませんよ……」 ゆみ「モモのは彼女の生まれ持った資質だけど、私のは練習の賜だ。努力次第だが私くらいにはなれるさ」 京太郎「うーん、なれますかねえ」 ゆみ「なに、これから私たちが教えるんだ。独学で学んできた私より上手くなって貰わないとな」 京太郎「ははは、そうですね。ご指導よろしくお願いします」ペッコリン ゆみ「ああ、任された」フフッ 京太郎「それじゃあ俺はこっちなんで」 ゆみ「ああ、それじゃあ……もうこんなところか。君との話に夢中で気がつかなかった」 京太郎「ありがとうございます。――あ、そうだ。加治木先輩」 ゆみ「なんだ?」 京太郎「加治木先輩が男と話すの苦手っていうの、きっと思い込みだと思いますよ」 ゆみ「そうだったらいいが、現に私は君にぎこちない態度を取ってしまっていたと思うのだが……」 京太郎「全くないとは言いませんが、そういうのって大体俺が急に話しかけたときとかじゃないですか」 京太郎「多分話すのが苦手というよりは、何を話せばいいのか分からないんですよ」 ゆみ「それは確かにそうだが、その2つにあまり差はないんじゃないか……?」 京太郎「だってほら、先輩と俺、帰り道は普通に話してたじゃないですか」 ゆみ「ふむ、確かに言われてみればそうだな」 京太郎「あんまり固く考えなければいいんですよ。そうすればきっとすぐ直ります」 ゆみ「ああ、君の言うとおりかもしれないな。でも、須賀くんだからというのもあると私は思う」 京太郎「えっ……」ドキッ ゆみ「私に話しかけてくる男子はほとんどいなかったからな。高校に入ってからは須賀くんが初めてだ」 京太郎「あ、ああ。そういう……」 ゆみ「すぐには慣れないと思うが、これからも話しかけてくれると嬉しい」 京太郎「え、ええもちろんです」 ゆみ「ありがとう。それではまた明日。部室で」 京太郎「さようなら……」 京太郎「……」 京太郎「…………」 京太郎「天然でやってんのかあれは!?」 ――自室―― 京太郎「お、咲からのメールか」 京太郎「1日ぶりだな。どれどれ……」 咲『京ちゃん元気?』 京太郎『おう、元気だぞ。昨日はメールなかったけどどうしたんだ?』 咲『本を読んでたらそのまま寝ちゃって……』 京太郎『はは、お前らしいな』 咲『うぅ……そ、そんなことより、今日私文芸部に行こうとしたんだよ!』 京太郎『おお、ついに入部し……行こうとした?』 咲『う、うん。その、ドアの前までは行ったんだけど、中がすごく和気あいあいとしてて入りづらくて……』 京太郎『まあもう5月だからなあ』 咲『どうしよう京ちゃん! 私文芸部に入れないよ!!』 京太郎『いやそのくらい気にせず入れよ……そもそもなんで4月に入らなかったんだ?』 咲『ええと、ほら、清澄に行った友達がいるじゃない?』 京太郎『ウチの中学から清澄に結構行ってたよな? 図書委員のやつ?』 咲『ううん、そっちじゃなくて班で一緒だったクラスの子』 京太郎『ああ、あいつか。結構仲良かったよな』 咲『そうそうその子。まあ京ちゃんとほどじゃなかったけどね』エヘヘ 京太郎(俺基準って……まあいいか) 京太郎『それでそいつがどうしたんだ?』 咲『うん、その子に一緒に文芸部に見学に行かない? って誘ったんだけど断られちゃって』 京太郎『へー、見学くらい行ってくれてもいいのにな』 咲『まあ先週誘った私も悪かったんだけど』 京太郎『先週!? ちなみにあいつ部活入ってるのか?』 咲『入学してすぐ園芸部に入ったよ。私も見学に付き合ったの』 京太郎『断られるに決まってんだろ!!』 咲『やっぱりそうだよね……』 京太郎『っていうか4月に行ってない理由にはなってなくないか?』 咲『ええと、さっき言ったとおり4月の初めにあの子と一緒に園芸部に行ったんだけど、私も体験入部したんだ』 京太郎『咲は花育てるのも好きだったよな』 咲『うん、最初はお花を育てるの楽しいし、本は1人でも読めるからここに入ろうかなと思ったんだけど……』 京太郎『ふむふむ』 咲『園芸部って土とかお花の鉢運んだりするんだ。それが結構重くて……』 京太郎『あー、それがきつくてやめたのか』 咲『そのくらいじゃやめないもん!』 京太郎『え? じゃあなんでやめたんだよ』 咲『ええと、頑張って運ぼうとしたんだけどお花植えてるプランターこぼしちゃって……』 京太郎『お、おう。まあでも一回くらいならやめるほどではないんじゃないか』 咲『ううん、何度も』 京太郎『…………』 咲『無言はやめてぇ!!』 京太郎『ま、まあ居づらくなって園芸部やめたのはわかった。それで?』 咲『え?』 京太郎『体験入部のうちにやめたんだろ? なら文芸部だって体験入部期間に行けたんじゃないか?』 咲『そ、それはそのう……』 京太郎『……うん、言わなくていいぞ。大体わかった』 咲『うぅ……で、でも勇気出したよ! 先週は友達誘ったし、今日は部室の前まで行ったもん!』 京太郎『まあなんだ。咲が頑張ったのはよくわかった。でももう少し頑張ろうな』 咲『京ちゃぁん……』 京太郎『入っちゃえば意外となんとかなるもんだぜ。俺も今日部活入ったけどみんな歓迎してくれたよ』 咲『京ちゃん部活入ったの!? 何部?』 京太郎『麻雀部』 咲『麻雀……京ちゃん麻雀出来たっけ?』 京太郎『いや全く。完全に初心者だよ。でも歓迎してくれた』 咲『そっか』 京太郎『咲は麻雀出来るのか?』 咲『……うん、出来るよ。昔よく家族でやってた』 京太郎『へー、なら麻雀部入ったらどうだ?』 咲『麻雀部?』 京太郎『ほら、清澄の麻雀部って聞いたことないからきっと強くないだろ? なら5月からでもウチみたいに歓迎してくれるさ』 京太郎『それに麻雀部なら大会でお前と会えるかもしれないしさ』 咲『……そうだね。考えてみる』 京太郎『まあ最終的には咲が後悔しないようにすればいいと思うけどな』 咲『これだけ言っておいて結局それ? ……うん、でもありがと』 京太郎『おう』 咲『ところで京ちゃん。大会で会えるかもってもしかして女子と合同の部活なの? そういえば鶴賀って元女子校だったよね?』 京太郎『ああ、というか俺以外全員女子だよ』 咲『な、何それ!!』 京太郎『何って……去年まで女子校だったし麻雀部も俺含めて今のところ5人だしな。そういうこともあるだろ』 咲『どうせハーレムだー! とか思ってるんでしょ!』 京太郎『初心者俺1人だぜ? そんな余裕ねえよ。……まあ嬉しくないって言ったら嘘になるけど』 咲『京ちゃんのバカ! もう知らない!!』 京太郎「おおう……まあ部活入れないって相談してきたのに、俺は部活でハーレムだって言ったらそりゃいい気分はしないか」 京太郎「なんて返すかなあ。ってあれ、咲からメールが」 咲『言い忘れてた、おやすみ!!』 京太郎『おやすみ。別に男子が俺だけだから入ったわけじゃないからな!』 咲『うん……その、私急に怒っちゃったけど、京ちゃん怒ってない? 明日もメールしていいよね?』 京太郎『これくらいで怒るわけないだろ? 明日は俺からメールするよ』 咲『京ちゃんありがとう!!』 京太郎『俺も悪かった。また明日』 京太郎「10時半か。ちょっと早いけどもう寝……ん? 加治木先輩からメール?」 ゆみ『今日はありがとう。男子と話したのは久々だったよ』 京太郎『いえ、俺も楽しかったですよ。それにしてもアドレス交換しましたけど、まさか今日メール貰えるとは思いませんでした』 ゆみ『蒲原に話したらその日のうちにメールするべきだと言われたんだが……』 京太郎(早く仲良くなるようにって部長が気を遣ってくれたのかな……うん、まあ嬉しいんだけど) ゆみ『男子にメールしたのは初めてなのだが何かおかしなところがあっただろうか』 京太郎『いえありませんよ。せっかくですし、教本で気になったところがあるのでよければ教えて下さい』 ゆみ『勉強熱心だな。いいぞ、なんでも聞いてくれ』 京太郎『それじゃあ――』 ………… ……… …… … 京太郎「ロ、ロン!! 立直平和で裏ドラは……乗った! 3900です!」 ゆみ「む……」 京太郎「よっしゃあ! やっと加治木先輩から直撃取れた!」 智美「ついにゆみちんから直撃かー。気分はどうだー」ワハハ 京太郎「最高です!」 桃子「後は私から直撃取れば全員制覇っすね!」 京太郎「モモ、一度消えないでやってみないか?」 桃子「消える前に頑張るっす!」 京太郎「せめて東場は消えないでくれよ……」 桃子「気合で頑張るっす!」 京太郎「うぅ……」 佳織「うわー凄いね京太郎くん!」 京太郎「ははは、佳織先輩には負けますよ」 佳織「? 私加治木先輩からロンしたことないよ?」 京太郎「あははは……」 京太郎(代わりに初めての麻雀で役満上がってるんだよなあ……) 睦月「おめでとう京太郎くん。でもまだ打ってる最中だからほどほどに」 京太郎「あ、すみません。つい嬉しくて」 睦月「ふふ、私も初めてのときははしゃいだから気持ちはわかるよ」 京太郎「睦月先輩がはしゃぐのってあんまり想像つかないですね」 ゆみ「今の須賀くんのような感じだよ。まあそのうち見られるさ」 京太郎「そのうち?」 ゆみ「津山はプロ麻雀せんべいをよく食べているだろう?」 京太郎「そうですね。俺も睦月先輩に影響されて食べ始めましたよ」 ゆみ「いつの間に……まあいい。津山はレアカードが当たったとき、人が変わったように喜ぶんだ」 睦月「そ、そんなことないですよ!」 京太郎「へー。楽しみにしてますね」 睦月「しなくていいから!」 智美「3人とも、そろそろ次の局行くぞー」 ゆみ「そうだな。すまない」 京太郎「この勢いでトップを狙います!」 ………… ……… …… … 京太郎「結局3位か。配牌は良かったんだけどなあ」 桃子「京太郎は牌効率がまだまだっすね。いくら配牌がよくてもそれじゃ勝てないっすよ」 京太郎「一応考えてるつもりなんだけど難しいな。筋とか壁とかそういうのは決まってるから覚えやすいんだけど」 桃子「え? もう覚えたんすか?」 京太郎「ああ、教本読んだり加治木先輩に教わったりしてるからな。もうバッチリだ!」 桃子「見た目と違って真面目っすねー……ってゆみ先輩に?」 京太郎「見た目は関係ないだろ! そうだけどどうかしたか?」 桃子「部活でそんなにじっくり話してるの見たかなーと」 京太郎「ああ、帰ってからメールで教えて貰ってるんだよ」 桃子「む。個人指導っすね」 京太郎「まあそうなるな」 桃子「羨ましいっす!」 京太郎「は?」 桃子「私もゆみ先輩に教えてもらいたいっす!」 京太郎「それを俺に言われてもなあ」 ゆみ「私なら構わないぞ」 京太郎「加治木先輩!?」ビクッ ゆみ「あんまり驚かれると傷つくな……」 京太郎「す、すみません」 ゆみ「い、いや、冗談だ。気にしないでくれ。……それよりモモ、聞きたいことがあったらいつでもメールしてくれて構わないぞ」 桃子「ほんとっすか!?」 ゆみ「ああ、後輩の指導も先輩の役目だ。なるべく速く返信するよ」 桃子「嬉しいっす! ゆみ先輩大好きっすー!」 智美「ゆみちん、ちょっと来てくれ」コイコイ ゆみ「?」テクテク 智美「部員が集まって嬉しいのはわかるけど、最近ちょっと詰め込み過ぎてないかー?」 ゆみ「そんなつもりはないんだが……」 智美「牌譜持ち帰る量も増えたし、他校の研究も本格的に始めたんだろー?」 ゆみ「バレていたのか」 智美「これでも部長だぞー」ワハハ ゆみ「……まあそうだな。お前の言うとおり以前より熱心にやっているよ」 ゆみ「折角部員が集まったんだ。1回戦で負けて終わりなんて嫌じゃないか」 智美「それには同意だなー。でも少しくらい分けてくれてもいいんだぞ」 ゆみ「そうだな……」ムゥ 智美「私とゆみちんの仲だろ? 遠慮せず言ってくれていいぞ」 ゆみ「ん……こういうのはなんだが、私のほうが向いていると思うんだ」 智美「やっぱり私じゃ力不足かー」ワハハ ゆみ「いや、性格的に」 智美「想定外の方向から突き刺さったな……」 ゆみ「遠慮するなと言ったのはお前だろう」 智美「そっちから来るとは思わなかったぞ」 ゆみ「まあ1人でやったほうが効率的だというのもなくはないがな」 智美「じゃ、じゃあアドバイスの方なら! それなら私でも出来るぞ!」 ゆみ「私がやると言ったことだしな。それを任せるというのも」 ゆみ「それに……」チラッ 智美「?」 ………… ……… …… … 桃子「むっちゃん先輩! この間話してた喫茶店に行く話っすけど、今日の帰りどうっすか?」 睦月「今日は予定もないし……うむ、行こうか」 桃子「かおりん先輩はどうっすか?」 佳織「~♪」 京太郎「佳織先輩、モモが呼んでますよ」 佳織「えっ!? ご、ごめんね桃子さん」 桃子「私はこっちっすよ」 佳織「あわわわ……」 京太郎「気にしないでください。そのうち見つけられるようになりますよ」 桃子「京太郎が言うんじゃないっす!」 睦月「あはは、京太郎くんはどうする? 一緒に行く?」 京太郎「行きたいんですが課題が残ってるので……」 睦月「そう……あ、そうだ。この前約束したプロ麻雀カード、ダブってるやつ持ってきたよ」 京太郎「おお、ありがとうございます!」 佳織「キラキラだねー」 睦月「結構貴重なレアなんだ。大事にしてね」 京太郎「はい!」 ゆみ「」ジー 智美「どうしたゆみちん。恋する乙女かー」ワハハ ゆみ「なっ!? バ、バカを言うな!!」 智美(からかいがいがあるなー)ワハハ ゆみ「……私はあんな風に仲良くなれていないからな。せめて麻雀で距離を縮めたい」 智美「そんなことないと思うけどなー」 ゆみ「それに実際大した負担ではないんだ。頼ってもらえるというのは純粋に嬉しいしな」 智美「まあゆみちんがそういうなら。でも無理はダメだぞ」 ゆみ「ああ、わかってるよ」 京太郎「智美部長、加治木先輩! 早く帰りましょう!」 ゆみ「すまない、今行く……っと」フラッ 京太郎「大丈夫ですか?」 ゆみ「少しふらついただけだ。心配ない」 桃子「先輩も喫茶店行かないっすか?」 ゆみ「ありがとう。だけど牌譜の整理があるから遠慮しておくよ」 桃子「残念っす……」 智美(……やっぱり心配だなー) 京太郎「こんにちはー……ってあれ。部長だけですか」 智美「みんなまだみたいだなー」 京太郎「じゃあ来るまで教本でも読んで……」 智美「なあ京太郎、息抜きするなら何がいいと思う?」 京太郎「唐突ですね」 智美「いいからいいから」 京太郎「そうですねー……まあ普通に遊びに行くのが一番じゃないですか?」 智美「やっぱりそうだよなー」ワハハ 京太郎「急にどうしたんですか?」 智美「最近ゆみちん根詰めてるだろ? 息抜きに買い物に誘ったんだけど断られちゃってなー」 京太郎「そういえばたまに辛そうにしてますね」 智美「だろー? 大会まで時間がないのは確かだけど、あれで持つのか心配なんだ」 京太郎「時間がないといっても無理が続くほどではないですしね」 智美「気を抜いてくれればまた違うと思うんだけどなー。京太郎、何かゆみちんに息抜きさせるいい方法はないかー?」 京太郎「ただ誘うだけだとダメだったんですよね? うーん……」 智美「まあすぐじゃなくてもいいさ。考えておいてくれ」 京太郎「わかりま……」 ゆみ「」ガラッ 京太郎「」ビクッ 智美「」ビクッ ゆみ「ど、どうしたんだ?」 智美「い、いや。なんでもないぞー」ワハハ ゆみ「怪しいな……何かよからぬことでも考えてたんじゃないだろうな」 京太郎「そ、そんなことないですよ! それよりその雑誌はなんですか?」ガタタッ 智美(ナイスフォローだ京太郎!) ゆみ「バ、バカっ! 近い!」カアァァ 京太郎「はっ! す、すみません!」カアァァ 智美(……わざではないんだろうなー) ゆみ「ざ、雑誌だったな。これは麻雀の専門誌だよ」コホン 京太郎「そ、そういえばそういう名前の見たことあります」 ゆみ「初心者向けのコーナーもある。参考になるだろうから読んでみるといい」 京太郎「へー、読んでみますね」ペラペラ 京太郎「……ん?」 ゆみ「どうかしたのか?」 智美「どれどれ……高校生チャンプ宮永照?」 京太郎「ええ、はい」 智美「確かに美人だから気になるのもわかるけど、女子2人の前でそれは感心しないなー」ワハハ ゆみ「須賀くん、そうなのか……」ジー 京太郎「違いますよ!」 智美「ワハハ、冗談だ」 ゆみ「わ、私はわかっていたぞ」 京太郎「加治木先輩……まあいいです。えっと、前に住んでたところに宮永って幼馴染がいるんですよ」 ゆみ「なるほど、同じ名字だな」 京太郎「そいつも女子なんですけど、なんとなく雰囲気が似てるなーと思いまして」 ゆみ「宮永照のいる白糸台は東京だろう? 須賀くんは前に住んでいたところも長野だったと聞いた覚えがあるのだが」 京太郎「ええ、そうなんですけど他人の空似とは思えなくて」 智美「ふーん。なら親戚なのかもしれないなー。その子も麻雀は強いのか?」 京太郎「いえ、そもそも打ってるところも見たことが……」 京太郎「あ、いや。そういえば家族麻雀はしていたみたいです。俺も最近聞いたんですが」 ゆみ「ふむ、仮に宮永照がその幼馴染の親戚だとすると、我が部には高校生女子麻雀チャンピオンの 親戚の幼馴染がいることになるわけか」 智美「世間は狭いなー」 京太郎「近いのか遠いのか微妙な繋がりですけどね」ハハハ 佳織「何を話してるんですか?」ガラッ モモ「私も入れて欲しいっすー!」 佳織「わっ! 桃子さん!?」 睦月「最初からいたよ」クスクス 智美「みんな来たかー。今は京太郎が女子麻雀チャンプの知り合いだって話をしてたんだー」ワハハ 京太郎「ちょっと部長!?」 桃子「なんと、衝撃の事実っす! さては今までの麻雀素人っぷりも演技っすね!?」 佳織「京太郎くんそんな人と知り合いなの!? 凄いねー。でもおんなじ初心者だと思ってたからちょっと寂しいな」 京太郎「モモ悪ノリするな! 佳織先輩、智美部長のもモモのも嘘ですからね!?」 佳織「智美ちゃん嘘だったの? もう、信じちゃったじゃない」 ゆみ「正確にはチャンピオンの親戚の幼馴染かもしれないというところだな」 睦月「反応が難しいですね……」 京太郎「雑誌見てての雑談ですから! もうやめて下さい……!」 桃子「その屈辱は麻雀で晴らすっすよ! さあ勝負っす!」 京太郎「お前のせいでもあるからな!? 畜生、今日こそは勝ってやる!」 桃子「受けて立つっすよー!」 ゆみ「はは、今日は最初は1,2年生に譲ろうか」 智美「私たちは見学だなー」 睦月「ありがとうございます。モモも京太郎くんも、2人で盛り上がってるけど私も負けないよ」 佳織「私も頑張ります!」 ………… ……… …… … ――帰り道―― 京太郎「それじゃみなさんまた明日」 佳織「また明日」 睦月「さようなら」 智美「2人ともまたなー」 モモ「今日の雪辱はまた果たすっすよ!」 京太郎「今日だけで何度も果たされたよ!」 ゆみ「はは、4人ともまた明日」 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎(何度も一緒に帰ってるけど、やっぱり別れてすぐは会話が途切れるなあ) 京太郎(俺から話しかければいいんだろうけど……)チラ ゆみ「……」ソワソワ 京太郎(……うん、もうちょっと待ってみよう) 京太郎「……」テクテク ゆみ「……」カラカラカラ 京太郎「……」テクテク ゆみ「……す、須賀くんっ」 京太郎「はい、何でしょう」 ゆみ「その、だな。今日は初めての2位おめでとう」 京太郎「ありがとうございます!!」 ゆみ「うわっ」ビクッ 京太郎「いやもうほんと嬉しかったんですよ! いつ話振ってくれるかなってそわそわして……って」 ゆみ「」 京太郎「そ、その、すみません……」 ゆみ「ふっ、くくっ……」 京太郎「加治木先輩?」 ゆみ「ふふ、すまない。ついおかしくてな」 京太郎「う……ついはしゃぎすぎましたけど、初めての2位なんですよ。嬉しくて当然じゃないですか」 ゆみ「それにモモの上を行ったのも初めてだった」 京太郎「そうです。目標が2つ同時に達成できたんですよ。そりゃ喜びますって!」 ゆみ「うん、まあ気持ちはわかる。でもな」 京太郎「?」 ゆみ「まだ君は部に入って間もないが、その努力を私は誰よりもよく知っているつもりだ」 ゆみ「君はよく努力している。そんなに喜ばなくともこれから何度でもなれるし勝てるよ。私が保証する」 京太郎「加治木先輩……」ジーン ゆみ「うん? どうした」 京太郎「いえ、感動してました」 ゆみ「なっ!?」 京太郎「他人に真正面から評価されるってこんなに嬉しいものなんですね……!」 ゆみ「大げさだな……そういう感動はもっと大事なときに取っておいたほうがいい」 京太郎「じゃあ今度は1位になったときにまた言って下さい」 ゆみ「ん……まあいいだろう」 京太郎「はい、頑張ります!」 ゆみ「ではそのためにはもっと実力を上げなければな」 京太郎「え……」 ゆみ「須賀くんの牌譜も集まってきたしな。ちょうど言いたいことがあったんだ」 京太郎「ええと、今日のところはいい気分のままでいさせて頂けたりとかは……」 ゆみ「1位を目指すんだろう? わかっているとは思うが、須賀くんの実力はまだまだ足りていないぞ」 京太郎「それはまあ、最初に2位になった後はいつも通り3位や4位ばかりでしたし……」 ゆみ「なら勉強だ。まず君は対子を集める傾向があるな。何か意味はあるのか?」 京太郎「いや、その、ポンってどこからでも鳴けるから得だなーと」 ゆみ「まあそんなところだろうと思っていた」ハァ ゆみ「単純に有効牌の数を考えてみてくれ。塔子なら両面待ちで8枚、嵌張や辺張でも4枚あるだろ? 対して対子では2枚しかない」 京太郎「……おお、言われてみれば!」 ゆみ「まあもちろん場に出ている枚数や手役との兼ね合いもあるがな。基本的には対子より塔子を残すことを考えてくれ」 京太郎「勉強になります」 ゆみ「さて、次は……」 京太郎「ま、まだあるんですか!?」 ゆみ「当たり前だ……む、もうこんなところか」 京太郎「あ、分かれ道ですね。それでは俺はここで……」 ゆみ「帰ってからメールするから返信するように」 京太郎「ですよね……」 ゆみ「ああ、それじゃあまた夜に」カラカラカラ 京太郎「はい、さようなら」テクテク 京太郎「加治木先輩結構スパルタだよなあ。まあ親身になってくれてるってことだけど」テクテク 京太郎「……ん? あれ、なんで加治木先輩歩いて帰ってたんだ? ……ん、メールが」 ゆみ『さっきはああ言ったが、正直君がモモに勝てるのはもっと先のことだろうと思っていた』 ゆみ『モモのステルスは偶然だけで勝てるようなものじゃない。麻雀を初めて一週間ほどで勝てたのは誇っていいと思う』 ゆみ『君の打ち方については帰ってからメールで言うつもりだったんだが……その……』 ゆみ『君に言われたことが恥ずかしくて、誤魔化すように言ってしまった』 ゆみ『きつい言い方になってしまったと思うんだが、よければこれからも頼ってほしい。すまなかった』 京太郎「……頼らないわけないのになあ」ハハ 京太郎(歩いてたのはすぐメールするためだったんだな) 京太郎「さて、なんて返そうかな。まずは気にしてないということと、それからお礼と……」 ――自室―― ゆみ『今日はここまでにしておこう。また明日』 京太郎『ありがとうございました。また明日よろしくお願いします』 京太郎「ふー……おお、2時間も付き合って貰ってたのか!?」 京太郎「部長に言われたばっかりなのに頼りすぎた……ちゃんと息抜きのしてもらい方考えないとなあ」 京太郎「ま、今はそれより咲からのメールに返信を……っと」 京太郎『悪い悪い、返信遅れた』 咲『もーいつもはすぐ返ってくるのに1時間も来ないから心配したよ』 京太郎『悪かったよ。それより今日は何かあるのか?』 咲『ううん、特にはないかな。今日は京ちゃんの話聞かせてよ』 京太郎『その言葉を待ってた! 聞いてくれ!』 咲『な、何?』 京太郎『今日初めて2位になれたんだよ!』 咲『京ちゃんおめで……2位?』 京太郎『2位だよ! 悪いか!』 咲『すっごく喜んでたから1位になったのかなって思ったんだけど……』 京太郎『初心者が麻雀部相手に2位になったんだから十分凄いだろ!』 咲『京ちゃんも今は麻雀部じゃない』 京太郎『それはそうだけど! 初めてトップ2になれたんだよ!』 京太郎『咲も麻雀やってたなら初めて2位になったときの気持ちわかるだろー』 咲『……そうだね。きっと嬉しかったんだと思う』 京太郎『思う?』 咲『昔のことだもん。でも、うん。昔は楽しくやってた気がする。だから思う、かな』 京太郎『そうか……それと、咲に聞きたいことがあるんだけどいいか?』 咲『なあに?』 京太郎『今日麻雀の雑誌読んだんだ』 京太郎『それに高校生女子麻雀チャンピオンのインタビュー載ってたんだけど、そのチャンピオンの名前が宮永照っていうんだよ』 京太郎『その宮永照って人は東京の高校に通ってるんだけど、なんとなく雰囲気がお前に似てるから気になったんだ』 京太郎『もしかして親戚だったりするか?』 ………… 京太郎「メール返って来ないな……なんかマズイこと聞いちまったか? とりあえず……」 京太郎『その、答えにくかったら無理に答えなくていいぞ? こっちも突然聞いて悪かったし』 咲『ううん、大丈夫……その人は、宮永照は私のお姉ちゃんだよ』 京太郎『お前にお姉さんなんていたのか?』 咲『うん、京ちゃんと会う前にお父さんとお母さん別居しちゃってたから』 咲『私は長野でお父さんと住んでるんだけど、お姉ちゃんは東京でお母さんと一緒に住んでるの』 咲『……そういえば京ちゃんに私の家族の話したことなかったね』 咲『ちょうどいいし聞いてもらっていいかな? ちょっと相談したいこともあるんだ』 京太郎『確かになかったけど……俺が聞いていいような話なのか?』 咲『別に隠すようなことじゃないし気にしないで』 京太郎『そっか。それなら咲、久々に電話かけてもいいか?』 咲『うん、いいよ。……ありがとう京ちゃん』 京太郎『もしもし、聞こえるか?』 咲『もしもし、聞こえるよ』クスクス 咲『それじゃあ話すね。ええと、どこから話そうかな』 咲『家族麻雀をよくしてたって話はしたよね?』 京太郎『ああ、この間聞いた』 咲『私ね、実は家族麻雀そんなに好きじゃなかったんだ』 京太郎『そうなのか? 家族で出来るなんて楽しそうだななんて思ってた』 咲『うん、私の家ではね。お金をかけて麻雀やってたんだ』 京太郎『それで負けてたのか?』 咲『ううん、そんなことないよ。多分勝ち越してた』 京太郎『じゃあお金をやり取りするのが嫌だったとか?』 咲『それもちょっと違うかな。勝っても怒られてたんだ。負けたらお金を取られるし、勝ったら怒られる。京ちゃん、これどう思う?』 京太郎『なんというか……酷い話だな』 咲『でしょ? だから私は麻雀のことがそんなに好きじゃないんだよ』 京太郎『……』 咲『それで相談っていうのはここからなんだけど……』 京太郎『おう、ゆっくりでいいぞ』 咲『えっとね。京ちゃんが読んだっていう雑誌なんだけど、私も見たんだ』 京太郎『もう知ってたのか?』 咲『うん、お父さんから見せてもらってたんだ』 咲『私ね、一度東京へ、1人でお姉ちゃんに会いに行ったことがあるんだ』 京太郎『1人で行けたのか?』 咲『ちっちゃい子じゃないんだから行けるよ! 京ちゃんは私のことをなんだと思ってるの!?』 京太郎『悪い悪い。続けてくれ』 咲『うん、それで家まで行ったんだけど、お姉ちゃんは一言も口を聞いてくれなかった――』 咲『お姉ちゃん、きっとまだ私のこと怒ってるんだ』 京太郎『怒ってる?』 咲『家族麻雀の話で、負けたらお金を取られる、勝ったら怒られるって話はしたよね? それで私はどうしたと思う?』 京太郎『どうしたって……麻雀をやらなくなったとかじゃないのか?』 咲『ううん、違うよ。私はね、±0にしちゃえばいいんだって思ったんだ』 咲『それならお金を取られないし、取らないから怒られることもないから』 京太郎『……は? いや、そんなの狙ってできるものじゃないだろ?』 咲『狙ってやったんだ。狙えるようになったって言ったほうがいいかな。ちっちゃい私の精一杯の抵抗だった』 京太郎『……凄いな』 咲『あはは、ありがと。でもお姉ちゃんは私の勝ちを狙わないやり方が気に入らなかったんだと思う』 咲『きっと、だから今でも私と話してくれないんだ』 京太郎『……咲はお姉さんと仲直りしたいのか?』 咲『うん、だから雑誌の記事を見て、麻雀部に入ればお姉ちゃんとまた会えるかもしれないって思ったんだ』 京太郎『ああ、俺もそう思う』 咲『それで麻雀部に入ろうかどうか迷ってるの』 京太郎『結局文芸部には入らなかったんだろ? 麻雀部に入ればいいじゃんか』 咲『でもさ、京ちゃん。お姉ちゃんを怒らせた原因は麻雀なんだよ?』 咲『その麻雀を使ってお姉ちゃんに会おうなんて余計に怒らせたりしないかな?』 京太郎『それは……』 咲『麻雀部に入らなければ、時間はかかるかもしれないけどその内お姉ちゃんは私のことを許してくれるかもしれない』 咲『麻雀部に入ればすぐお姉ちゃんに会いに行ける。でも、もっと怒らせて私のことをずっと許してくれなくなるかもしれない』 咲『京ちゃん、私はどうしたらいいのかな……』 京太郎『……咲は麻雀のことどう思ってるんだ?』 咲『え?』 京太郎『だからさ、咲は麻雀のこと好きなのか?』 咲『……さっき言ったじゃない。あんまり好きじゃないよ』 京太郎『でもさ、それは勝つことじゃなくて、±0を目指してたからじゃねーのかな』 咲『……』 京太郎『俺はさ、麻雀始めたばっかだけど、勝てるとすげー楽しいよ』 京太郎『初めて3位になれたときでも嬉しかったし、今日初めて2位になれたときなんかは思わず叫んじまった』 京太郎『まだ1位になったことはないけど、なれたらきっともっと楽しいんだろうなって思う』 京太郎『咲はどうだ? 1位になって楽しいとか嬉しいって思うことなかったか?』 咲『……昔、まだ家族で仲良く麻雀でやってたとき、1位になれたら凄く嬉しかった』 咲『そうだね。京ちゃんの言うとおり、あの頃は家族仲良く、楽しく麻雀やってた』 京太郎『そっか。それなら咲は麻雀部に入るべきだ』 京太郎『今度は勝つことを目指して、楽しんで麻雀をすれば、それをお姉さんに見てもらえば、きっと咲のこと許してくれるよ』 咲『そう、かな』 京太郎『ああ』 咲『……うん、そうだね。会わなきゃ何も始まらないよね。わかったよ京ちゃん。明日、麻雀部に行ってみる』 京太郎『ああ、それがいいよ』 咲『相談に乗ってくれてありがとう、京ちゃん』 京太郎『気にするな……そうだ。咲、ちょっといいか?』 咲『何?』 京太郎『さっきお前麻雀部に入ればお姉さんにすぐ会えるみたいなこと言ってたよな? 県大会に勝つ前提とは随分偉くなったなあ』 咲『ふぇっ!? も、もう、揚げ足取らないでよ! 京ちゃんのバカ!』 京太郎『ははは……実際咲は強いのか?』 咲『京ちゃんなんか足元にも及ばないくらい強いよーだ!』 京太郎『……』 咲『な、何か言い返してよぉ……』 京太郎『いやまあ、あの宮永照と家族麻雀で±0狙ってるやつだと思うと……』 咲『お、お姉ちゃんだって高校入って上手くなってるはずだよ!』 京太郎『と言ってもなあ』 咲『うぅぅ……』グスン 京太郎『はは、冗談だよ』 咲『もう、あんまりからかわないでよ……』 京太郎『面白いからついな』 咲『ついじゃないよ! こっちは本気で気にするんだからね!』 京太郎『悪かったって。それじゃあな』 咲『またね。……京ちゃん、今日はありがとう』 京太郎『気にするなって。またなんかあったら電話しろよ。大会で会おうぜ』 咲『うん、大会で』 女生徒「残りは私がやっておくから。須賀くんは部活行ってていいよ」 京太郎「いいのか?」 女生徒「いいっていいって。私帰宅部だし。部活頑張ってねー」 京太郎「おう、ありがとな」 京太郎(今日こそは1位になるぞー! ……あ、階段に加治木先輩が) 京太郎「加治木先輩、これから部活に行くところですか?」ウエミアゲ ゆみ「ん、須賀くんか。そのつもりだよ」 京太郎「じゃあ一緒に行きましょう。昨日聞きそびれたところがあるんですけど途中で聞いていいですか?」 ゆみ「ああ、構わな……」フラッ 京太郎「加治木先輩!?」 ドタッドタタタタッ! 京太郎「いてててて……加治木先輩、大丈夫ですか?」シタジキ ゆみ「あ、ああ、大丈夫だ。ありがとう、今どく……痛っ!」 京太郎「どうしたんですか!?」 ゆみ「き、気にするな。なんでもないっ」 京太郎「なんでもないわけないじゃないですか! ……足ですか?」 ゆみ「……そうだとしても君に迷惑をかけるわけにはいかない。先に部室に行っていてくれ」 京太郎「……そういうこと言うならこっちにも考えがありますよ」ムッ ゆみ「?」 京太郎「だっことおんぶと肩を貸す。どれがいいですか?」 ゆみ「……は?」 京太郎「保健室まで連れて行くって言ってるんです。さ、だっことおんぶと肩を貸す。どれにします?」 ゆみ「ま、待て! そんなどれを選んでも恥ずかし……い、いや。そもそも必要ないと言っているだろう!?」 京太郎「あんな声出して何言ってるんですか。選ばないならだっこで運びます」 ゆみ「なっ」 京太郎「よいしょっと」グイッ ゆみ「う、うわっ! な、なんでよりにもよってお姫様だっこなんだ!? というかそもそも重いだろう!?」 京太郎「一番持ちやすいからです。それとむしろ軽いくらいですから大丈夫です……さあ、保健室まで行きましょうか」 ゆみ「わ、わかった! 肩を借りるから! だから下ろしてくれ!!」 京太郎「始めからそうやって人の好意を受け取ればいいんですよ……っと」 ゆみ「好意じゃないとは言わないが、とてもではないが素直には受け取れないな……」 京太郎「加治木先輩、腕はちゃんと肩に回しました?」 ゆみ「ああ、回した」 京太郎「じゃあ行きますよ。ゆっくり歩きますね」 ゆみ「ありがとう」 京太郎「……」 ゆみ「……」 京太郎(加治木先輩と話すのは最近慣れてきたけどさすがにあんなことした後だとキツイな……) 京太郎(なんであんなことしたんだろう……)ズーン ゆみ(ん……私が肩に手を回しやすいように少し屈んでくれているのか) ゆみ(その体勢で歩くのは決して楽ではないはずなのに。……優しいやつだな) ゆみ(さっきの強引な三択も、普段の須賀くんなら絶対にやらないはずだ) ゆみ(それでもやったということは、それはきっと――) ゆみ「なあ須賀くん」 京太郎「はっ、はい!」 ゆみ「そんなに力を入れなくても……いやそういう話になるかもしれないな」 ゆみ「その、さっきのことなのだが……」 京太郎「?」 ゆみ「さっきの君は怒っていたのか?」 京太郎「……当たり前じゃないですか」 ゆみ「……理由を聞いてもいいか?」 京太郎「決まってるじゃないですか。加治木先輩がまた無理しようとしたからです」 ゆみ「私は無理なんて――」 京太郎「してるから倒れたんです」 ゆみ「ぐっ」 京太郎「無理して倒れたのに、なんでさらに無理しようとするんですか」 ゆみ「君には――」 京太郎「関係ない、なんて言わないでくださいよ。自分が麻雀部にどれだけ大切か知らないわけでもないでしょう」 ゆみ「むぅ……」 京太郎「ほら、早く言わないとまたお姫様だっこしますよ」 ゆみ「や、やめろ! わかった、言うから!」 ゆみ「……麻雀部は私が麻雀をもっと本格的にやりたいから、なんて身勝手な理由で作ったんだ」 ゆみ「だから自分で出来ることなら自分でやりたい。他人に無駄な負担はかけたくない」 ゆみ「雑務は私がやるから、君たちには純粋にただ麻雀を楽しんで欲しいんだ」 京太郎「……はあ」 ゆみ「な、なんだ」 京太郎「加治木先輩は優秀なんですから、出来ること全部やろうなんて思ってたらパンクするに決まってます」 ゆみ「そんなことは……」 京太郎「実は部長から加治木先輩をなんとか息抜きに誘えないかって相談を受けてたんですよ」 ゆみ「何?」 京太郎「部活の仲間が辛そうにしてるのに純粋に麻雀を楽しむなんて出来ませんよ」 ゆみ「…………」 京太郎「あ、保健室ですね。その、無理しないって考えて貰えると嬉しいです」 ゆみ「……ああ」 京太郎「失礼します……先生はいないみたいですね」 ゆみ「ああ、外出の張り紙はないからすぐ戻ると思うのだが……」 京太郎「とりあえずこの椅子に座って下さい。湿布探しますね」 ゆみ「ああ、ありがとう」 京太郎「ええと、湿布は……お、あった」 ゆみ「ああ、それじゃ渡してく――」 京太郎「それじゃ脱がしますね。足上げて下さい」 ゆみ「ああ……って、え?」 京太郎「」スルッ ゆみ「んっ」 京太郎「」スルスルスルッ ゆみ「ふあ」 京太郎(綺麗な足だな……触ってみた――はっ!?) 京太郎(な、何やってんだ俺!? 咲の手当てずっとしてたからその癖か!?)ダラダラダラ 京太郎(か、加治木先輩が意外と平気にしてるかも……) ゆみ「……」カアァァァァ 京太郎(やっちまったー! ど、どうする!?) 京太郎(……ああ、でも白くてスラっとして艶々としてて、いつまでも見ていたくなるような――) ゆみ「す、須賀くん。あまり見られていると、その、恥ずかしいのだが……」カアァァァ 京太郎「す、すみません!!」バッ ゆみ「あ……」 京太郎「あ……」 謝ろうと顔を上に向けると、顔を真っ赤にした加治木先輩と目があった。 ゆみ「……」 京太郎「……」 ゆみ「…………」 京太郎「……………」 ゆみ「――き」 保険医「誰かいるの? ごめんね席外しちゃ……」ガラッ 保険医「……ええと、お邪魔だったかしら?」 京太郎・ゆみ「「そんなことないです!!」」 保険医「んー軽い捻挫ね。病院に行く必要はなし。湿布を貼ってれば明日、明後日には治ってると思うわよ。もちろん安静にね」 ゆみ「ありがとうございます」 保険医「それと疲れてるみたいね。顔色悪いわよ。若いから無理は効くでしょうけど、ちゃんと休みは取ったほうがいいわ」 ゆみ「……はい」 保険医「部活はやってるの?」 ゆみ「麻雀部に入ってます」 保険医「それならやっても大丈夫ね。これから行くのかしら」 ゆみ「そのつもりです」 保険医「そう。ここには松葉杖とかはないから、彼氏くんはちゃんと連れてってあげるのよ」 ゆみ「かっ……!? 京太郎「ただの後輩です!」 保険医「そう」クスクス 保険医「まあ無理はしないことね。大会も近いんだし怪我で実力を発揮できないのはつらいわよー」 ゆみ「……わかりました。ありがとうございます」 保険医「お大事にー」 京太郎「ありがとうございました」ガラッ 京太郎(……さっきまでは怪我に気が行って意識しなかったけど、肩を貸すとかなり密着するな……) 京太郎(加治木先輩、普段凛としてるけど触れると女の子らしく柔らかいんだな……特に胸とかバストとかおもちとか) 京太郎(それになんかいい匂いも……) ゆみ「須賀くん」 京太郎「ひゃいっ!」 ゆみ「ど、どうした?」 京太郎「い、いえ。なんでもないです」 ゆみ「そうか。……須賀くん、ちょっと聞きたいことがあるのだが」 京太郎「なんです?」 ゆみ「……君は躊躇せずお姫様だっこをしたり私のソックスを脱がしたりしてきたが……女性の扱いに慣れているのか?」 京太郎「……はい?」 ゆみ「普通はああいうことをやるときは多少なり躊躇するものだと思うのだが」 ゆみ「君は自然にやるものだからこっちも反応が遅れてな……」 京太郎「お姫様だっこなんて慣れてないですよ! やったのも初めてです!」 京太郎「……その、あのときはちょっとカチンと来まして、勢いでといいますか……」 ゆみ「ふむ」 京太郎「脱がした方はですね。その、幼馴染みの手当てをいつもやっていたのでついそれと同じように……」 ゆみ「なるほど……須賀くん」 京太郎「はい」 ゆみ「それは直したほうがいい。いつかきっと問題を引き起こす」 京太郎「あはは……でも大丈夫ですよ」 ゆみ「何?」 京太郎「大切な相手じゃなきゃあんなに焦ったりしませんから。そういう相手ならきっと怒るくらいで許してくれます」 ゆみ「――っ」カァァ 京太郎「加治木先輩?」 ゆみ「だからそういうところを直せと言っているんだ……」ハァ 京太郎「す、すみません。もしかしてそんなに嫌でした……?」 ゆみ「そういうわけじゃ……いや、もういいか」 ゆみ「須賀くん」コホン 京太郎「は、はい」 ゆみ「意地を張っていた私を引っ張ってくれてありがとう」 ゆみ「1人じゃ保健室へ行くのは正直厳しかったと思う。手当てをしようとしてくれたこと、嬉しかったよ」 京太郎「……はい!」 京太郎「すみません。遅くなりましたー」ガラッ 智美「おお、2人とも何してた……」 睦月「そ、そんなにくっついてどうしたんですか?」 ゆみ「くっつ……! あ、足を捻ったから肩を貸してもらっているだけだ!」 佳織「歩けないみたいですけど大丈夫ですか?」 ゆみ「ああ、座っていれば大して痛まないし、明後日には治ると言われたよ」 桃子「そんなに重傷じゃなくてよかったっす」 智美「今日は部活やらずに帰るのかー?」 ゆみ「いや、痛むのは足だけだし参加するよ。須賀くん、すまないが椅子まで運んでもらっていいか?」 京太郎「もちろんです」 ゆみ「……っと、ありがとう。対局が終わるまで君の牌譜を見ていこう」 京太郎「よろしくお願いします」 ………… ……… …… … 智美「それじゃそろそろ帰るかー」 ゆみ「まだ早くないか?」 智美「怪我人は早く帰って安静にしなさい」 ゆみ「む……」 京太郎「はは……そういえば加治木先輩、その足で自転車に乗れますか?」 ゆみ「さっきに比べれば痛みも引いているしまあ大丈夫だろう」 智美「……ゆみちん、ちょっと歩いてみてくれるか?」 ゆみ「ああ……痛っ」 智美「ゆみちん、そんな足で自転車漕ごうなんて無理はよくないぞー」 睦月「そうですよ。悪化しちゃいます」 ゆみ「そう言われてもな。バスを使おうにも私の家からバス停までは遠いし、両親も仕事だ」 京太郎「家まで肩を貸す……のはちょっと外では恥ずかしいですね」ハハ ゆみ「出来れば校内でもそう思って欲しいんだがな。もちろん感謝はしているが」ハァ ゆみ「それに、そもそも須賀くんに家まで付き合わせるのは悪いだろう」 京太郎「俺が歩く分には大丈夫ですよ。いい運動です」 ゆみ「ん、そうか……」 ゆみ「……ああそうだ。そんなことをしなくてもタクシーを呼んで――」 智美「思いついたぞー!」ワハハ ゆみ「もら……蒲原、嫌な予感はするがとりあえず言ってみろ」 智美「失礼な。今回は名案だぞー」 桃子「どんな案なんすか?」 智美「京太郎がゆみちんの自転車でゆみちんを送ればいいんだ」 睦月「ああ、二人乗りですか」 ゆみ「ま、待て。他人の前でそんな……」 智美「肩を貸すくらい密着してたんだからこれくらいは大丈夫だろー?」 ゆみ「うっ……」 佳織「でも智美ちゃん、二人乗りなんてやってたら危ないし注意されちゃうんじゃないかな?」 ゆみ「そ、そうだ。だからタクシーを――」 智美「非常事態なんだしいいだろー。それに学校が見えなくなるまではゆみちんを乗せて押せばいいし」 佳織「そっか。それもそうだね」 ゆみ「妹尾!?」 桃子「まあいいじゃないっすか。タクシーは高いっすし、それに二人乗りやってるくらいじゃ誰も見ないっすよ」 睦月「二人乗りそんなに嫌なんですか?」 ゆみ「い、嫌というわけでは……す、須賀くんはどうなんだ!?」 京太郎「二人乗り自体は中学の頃よくやってたので、加治木先輩が嫌でなければいいですよ」 ゆみ「」 桃子「問題が片付いたところで帰るっすー!」 智美「ゆみちん、置いてくぞー」 睦月「それじゃ、肩貸しますね」 ゆみ「ありがとう。ついでに頼みがあるんだがタクシーを――」 睦月「京太郎くん、自転車乗り場からはよろしく」 京太郎「任されました!」 ゆみ「ああ、うん。わかっていた。私はいい後輩たちを持ったよ」 京太郎「照れますよ」 睦月「照れますね」 佳織「照れちゃいます」 桃子「照れるっすよー!」 ゆみ「よし、お前たちは明日までに『麻雀何切る?』を1冊終わらせて来い」 智美「後輩たち、あんまりからかっちゃダメだぞー」ワハハ ゆみ「蒲原は2冊だ」 智美「ワハ!?」 智美「ゆみちん、ここまで自転車を押して貰った気分はどうだ?」 ゆみ「見られてばかりで全く落ち着かなかった……二人乗りくらい目立たないと言ったのは誰だ」 桃子「二人乗りじゃなくて京太郎が押してたじゃないっすか。6人いて1人だけ自転車に乗って押されてればそれは目立つっすよ」 智美「どこの女王様だって感じだなー」ワハハ 京太郎「まあ嘘は言ってなかったですね」 ゆみ「嵌められたか……」 桃子「人聞きが悪いっすねー」 睦月「まあまあ、明日には誰も覚えてませんよ」 ゆみ「そうだといいんだがな」ハァ 京太郎「じゃあ前乗りますね」 ゆみ「ああ、今後ろに移る」 京太郎「よっ……と」 ゆみ「……そ、それじゃあ捕まるぞ」ギュッ 京太郎「!?」ビクッ ゆみ「ど、どうかしたのか?」 佳織「わわわ……」カァァ 睦月「凄い……」カァァ 桃子「だ、大胆っすね」カァァ 智美「どうかってゆみちん、それはこっちのセリフだぞ」カァァ ゆみ「え、えっ?」 ゆみ「だ、だって少女漫画とかでは二人乗りするときはこうやってギュッと抱きしめて……」 桃子「どんだけ乙女っすか!」 智美「本気で言ってるんだよなー……」 ゆみ「ど、どこがおかしいんだ!? ちゃんと捕まらないと危ないだろう!?」 睦月「抱きしめなくても腰を掴んだり荷台やサドルを持ったりすれば落ちないのでは……」 ゆみ「……!!」 智美「いや、そんなその発想はなかったみたいな顔されてもなー」 佳織「と、とりあえず京太郎くんを離してあげたらどうでしょう?」 ゆみ「え?」 京太郎「」パクパク ゆみ「う、うわっ! す、すまない!!」バッ 京太郎「……はっ!? い、いえ! こちらこそ!」 桃子「何がこちらこそなんすか?」 京太郎「……いや、なんでもないぞ?」 桃子「ところで感想は」 京太郎「柔らかくていい匂いがし……しまった!?」 睦月「素直だね」 智美「正直者だなー」ワハハ ゆみ「」プシュー 桃子「……さて、それじゃあそろそろ帰るっすか」 智美「邪魔者はお暇するかー」 京太郎「ま、待った! せめてこの空気をどうにか――」 睦月「そうですね。早く帰りましょう!」 佳織(何でもいいからここから逃げ出したいなあ……) 京太郎「睦月先輩!? 佳織先輩もだんまりはやめましょうよ!」 智美「それじゃあまた明日なー」ワハハ 京太郎「ちょっとー!?」 スタスタスタスタ…… 京太郎「ほ、本気で帰りやがった……」 ゆみ「」プシュー 京太郎「え、ええと、その加治木先輩。さっきのは……」 ゆみ「い、いや、いいんだ。悪いのは私だから」 京太郎「そんなことは……」 ゆみ「と、ともかく! 自転車を出してくれ!」 京太郎「は、はい! 加治木先輩の家遠いですもんね!」 ゆみ「あ、ああ! 早く行かないと日が暮れてしまう」 京太郎「わかりました! それじゃしっかり捕まって――」ハッ ゆみ「あ……」ジー 京太郎「そ、そういう意味じゃないですからね!?」 ゆみ「わ、わかっている! それじゃあ荷台を掴んで……」 京太郎「大丈夫ですか?」 ゆみ「ああ、ちゃんと掴んでいる」 京太郎「それじゃ出しますよー」 ゆみ「よろしく頼む」 京太郎「……」シャー ゆみ「……」シャー 京太郎(中学のとき、咲とよくこんなふうに二人乗りしてたなー) 京太郎(初めてやったときは咲が憧れだったって言って横乗りしたっけ) 京太郎(ちょっと漕ぎだしたら咲が倒れそうになったからすぐやめたけど。あいつ悔しそうな感じで涙目になってたな) 京太郎(その後も何度か挑戦しようとしたから止めるのが大変だった。あいつ変なところで頑固だからなあ) 京太郎(咲とのどうでもいい話とか結構楽しかったな。そのうちあいつの重さがない自転車が物足りなくなったりして) 京太郎(風を切る感覚も感じる重さも似てるけど、見える景色はやっぱり向こうと違う。……当たり前か) 京太郎(……おんなじ長野なのにな)ハァ ゆみ「なあ、須賀くん」 京太郎「なんですか?」 ゆみ「二人乗りはよくやっていたと言っていたな」 京太郎「そうですね。前に言った幼馴染をよく乗せてました」ハハ ゆみ「そうか。……間違っていたらすまないのだが、今そのときのことを思い出してはいなかったか?」 京太郎「……もしかして声に出したりしてました?」 ゆみ「そういうわけではないが、ため息をついたり考え込むような顔をしていたからな」 京太郎「はは……加治木先輩には敵わないですね」 ゆみ「それで、これももしなんだが」 京太郎「何がです?」 ゆみ「今、寂しい、と思っていないだろうか」 京太郎「寂しい……ですか」 ゆみ「ああいや、違っていたらそう言ってくれ。別に何か特別な根拠があって言っているわけではないんだ」 京太郎「ん……考えたこともなかったですけど」 京太郎「けど、言われれば寂しかったのかもしれないです」 京太郎「俺、幼馴染……咲って言うんですけど、そいつと毎日メールしてるんですよ」 京太郎「昔からよくメールはしてたんですけど、引越す前は毎日なんてことはなかったです」 ゆみ「ふむ。聞いた私が言うのも何ではあるが、違うところにいるんだ。それくらい普通じゃないか?」 京太郎「いえ、そこじゃないんです」 京太郎「咲は地元の高校に行ったんで、やっぱり中学の友達もたくさん一緒のところ行ってるんですよ」 京太郎「咲とのメールにもよく出てくるんですけど、それがちょっと羨ましいなとかいいなとか思っちゃうんです」 京太郎「こっち来て使ってる道も、普段登校に使ってる道はもう見慣れた風景になってるんですけど」 京太郎「今こうやって違う道を行くとやっぱり全然見覚えがなくて」 京太郎「前のところはどこ行っても大体見慣れてたんで、自分はここの人間じゃないんだなとか感じたんです。 京太郎「それでさっきため息ついちゃったんですよ」 京太郎「そんなこと考えてると、俺はなんで1人でこっち来たのかなってちょっと後悔が」 ゆみ「……そういえば須賀くんがこっちに来た理由を聞いていなかったな」 京太郎「ああ、親の仕事の都合ですよ。まあ向こうで一人暮らしすることも出来たんで、決めたのは自分です」 ゆみ「高校生が1人で暮らすのは言うほど簡単じゃない。自分のせいだなんて思う必要はないさ」 京太郎「加治木先輩……」ジーン ゆみ「……まあ私もしたことはないからどんなものかわかるわけではないが」 京太郎「加治木先輩……」ジー ゆみ「と、ともかくだ! 自分が選んだからしょうがないなんて思わず、寂しければ素直にそう思えばいい。そのほうが楽になる」 京太郎「……そうですね。ありがとうございます」 ゆみ「……」シャー 京太郎「……」シャー ゆみ(あまり表情は明るくなっていないな……ああ) ゆみ「寂しくて、じゃあどうするかまで言わなければ片手落ちか」ボソッ 京太郎「何か言いました?」 ゆみ「いや、なんでもない」 ゆみ「……須賀くん。この先に急な坂道があるのが見えるか?」 京太郎「ああ、結構急ですね。しっかり捕まってください」 ゆみ「ああ」ギュッ 京太郎「っ!? か、加治木先輩!?」グイッ ゆみ「きゃっ! ハンドルを急に切るな! 危ないだろう!?」 京太郎「それはすみません! でも何ですかいきなり!?」 ゆみ「き、急な坂だからしっかり捕まったんだ。それに……」 京太郎「それに?」 ゆみ「……このほうがいいかと思ってな」 京太郎「……ええと、それは、まあ、さっきのも嬉しかったですけど」 ゆみ「そ、そういう意味じゃない! 君は寂しいのかもしれないと言っていただろう?」 京太郎「そ、そっちですか」 ゆみ「私は地元を離れてはいないから、君がどれほど苦しいか分からない」 ゆみ「でも、君のつらさを和らげたいとは思う。そのためにはこうするのがいいと思った」 ゆみ「君の故郷にいなかった私が君のその寂しさを埋めたいというのはおこがましいかもしれないが、それでも私を頼って欲しい」 ゆみ「君は、私の大切な後輩だからな」 京太郎「……そんなに心配されるような顔してました?」 ゆみ「ああ、何かしてあげたいと思うくらいにはな」 京太郎「……まったく、加治木先輩は背負い込みすぎですよ。 麻雀部のことだけで倒れちゃったのに、俺のことまで背負ってどうするんですか」 ゆみ「う……」 京太郎「でも、ありがとうございます」 ゆみ「ああ、いい声だ」 京太郎「これからも頼っていいですか?」 ゆみ「もちろん。いつでも頼ってくれ」 京太郎「それじゃ、加治木先輩も俺を頼ってください」 ゆみ「うん?」 京太郎「麻雀はまだ全然敵いませんけど、でも牌譜の分析とか出来ることはやりますから」 ゆみ「しかし……」 京太郎「ただでさえ倒れたのに、この上さらに加治木先輩に頼るなんて言ったら部長に何言われるかわかりませんよ」 ゆみ「だが私が勝手にやっていることで負担をかけるわけには……」 京太郎「加治木先輩が俺に大切だって言ってくれたのと同じで、俺にとっても加治木先輩は大切な先輩なんですよ!」 ゆみ「……それを言われるとはな」フゥ ゆみ「量を減らそうと思っていたんだが、そう言ってくれるならお願いするよ」 京太郎「任せてください!」 京太郎「…………」シャー ゆみ「…………」シャー --------------------------------------- ゆみ(……今まで意識していなかったが、背中、広いな。それに固い) ゆみ(男子とこんなに密着したのは初めてだが、体の作りがこんなに違うのか)ポー ゆみ(……前はどうだろう)サワッ 京太郎「」ビクッ ゆみ(腹筋の辺りも引き締まっている。細身だけど筋肉質だ。鍛えているんだな……今さらか。部活の前にお姫様だっこをされ――) ゆみ(いかん、自分で考えていて恥ずかしくなってきた)カアァァ ゆみ(いつの間にか鼓動も速くなっている)ドクンドクン ゆみ(こ、これは須賀くんに伝わっているんじゃないだろうか)ドクンドクン ゆみ(……もっとこう、トクントクンと可愛らしくならないものかな)ハァ ゆみ(……須賀くんも緊張しているんだろうか) ゆみ(……えい)ピト ドキドキドキドキ…… ゆみ(私よりも速い。私よりも緊張してくれているのか。……なんだか嬉しいな) ゆみ(心地いい音だ。もう少し、家に着くまでこのまま――) --------------------------------------- 京太郎(……ぴったりくっついてるな)ドキドキ 京太郎(加治木先輩と密着したの今日何度目だ!? 今まで一度もこんな経験なかったのに!) 京太郎(ああ、背中に柔らかいおもちが……いかん、運転に集中しろ集中!) 京太郎(ふー……うん、少し落ち着いてきた) 京太郎(柔らかく包まれてるみたいでなんか安心する。こういうの母性っていうのかな) 京太郎(加治木先輩が言ったとおり、ギュッとされてると寂しさが和らいできた) ドクンドクン…… 京太郎(……ん? なんだこの振動) 京太郎(これは……心臓の音か。もしかして加治木先輩も緊張して――) ゆみ「」サワッ 京太郎(って!? な、何やってんだこの人!?)ドキドキドキドキ 京太郎(寂しさなんか吹っ飛んだけど! ただでさえ我慢してんのに!) 京太郎(この人ついこの間まで男と話すの苦手とか言ってたよな!? 話してなきゃいいのか!?) ゆみ「ん……」ピト 京太郎(背中に耳を……まさか俺の心臓の音聞いてるのか? うおお、恥ずかしい!!) 京太郎(ど、どうしよう。何か話しかければ離れてくれ――) ゆみ「――もう少し、このまま――」ボソッ 京太郎(……まあ、俺も加治木先輩の音聞いたんだしお互い様か) 京太郎(家まであと少しだし、このままでいいか) 京太郎(俺もそのほうが嬉しい……って何考えてんだ俺)ドキドキ --------------------------------------- ――加治木宅前―― 京太郎「加治木先輩、家ってここですか?」 ゆみ「……ん? ああ、ここだ――」ポー ゆみ「――っ!?」バッ ゆみ「す、すまない! ずっとこんな、だ、抱き締めるような真似を……!」 京太郎「い、いえ、大丈夫です。全然」ドキドキ ゆみ「そ、そうか。それとその、さっきの君のお腹を確かめようと思ったのも……」 京太郎「そっちも少しくすぐったかっただけですから大丈夫です」ドキドキ 京太郎「……って確かめ?」 ゆみ「っ! な、なんでもない!」 ゆみ「そ、そんなことより」コホン ゆみ「私のためにこんな遠回りまでしてくれてありがとう、須賀くん」ニコッ 京太郎「っ!!?」ドキィ!! ゆみ「うん? どうかしたか?」 京太郎「い、いえ。なんでもないです」ドキドキ ゆみ「そうか、それならいいのだが……」 京太郎(な、なんだ急に? 加治木先輩の笑ったとこ初めて見たってわけでもないのに)ドキドキ ゆみ「なんだか顔が赤いな……もしかして私が重くて疲れたのだろうか」シュン 京太郎「」ムッ 京太郎「そんなことないです!!」 ゆみ「わっ!」 京太郎「部活の前にも言ったじゃないですか! 加治木先輩は重くなんてないです!」 ゆみ「そ、そうか。そこまで強く言われると照れるな……」カアァァ 京太郎「あ……すみません」 ゆみ「まあそう言ってくれたのは嬉しいよ。ありがとう」フフッ 京太郎「っ!」ドキッ 京太郎(さっきからのこれは) 京太郎(加治木先輩が自分のこと卑下するのがなんか嫌で、笑うと胸が高鳴って) 京太郎(ああ、もしかして) 京太郎(――俺、加治木先輩のこと好きになったのか) ゆみ「須賀くん? 本当に大丈夫か?」 京太郎「大丈夫です。むしろスッキリしました」 ゆみ「? まあそれならいいんだが」 京太郎「それより加治木先輩。牌譜渡して貰っていいですか?」 ゆみ「ああ、そうだったな。それじゃあ半分――」 京太郎「全部下さい」 ゆみ「何?」 京太郎「これからは牌譜の整理と分析は俺がやります」 京太郎「加治木先輩は作戦を考えたり自分の練習をしたり、加治木先輩じゃなきゃ出来ないことをやって下さい」 ゆみ「しかし……」 京太郎「最初はやり方を聞くことになると思いますけど、でもすぐに覚えます!」 京太郎「麻雀部の、加治木先輩の役に立ちたいんです!」 ゆみ「……自転車に乗っているとき、お願いすると言ったしな」フゥ ゆみ「わかった。それじゃあ牌譜の整理と分析は君に頼んだよ」 京太郎「はい!」 ゆみ「ちなみにこれだけあるんだが本当に大丈夫か?」ドサッ 京太郎「お、おお……すごい量ですね」 ゆみ「やはりこの量は……」 京太郎「いえ、大丈夫です! やってみせます!」 ゆみ「そうか……ただ、失敗を経験した者として言うが、無理だと思ったら私を頼るんだぞ」 京太郎「倒れる前に頼ります」ハハ ゆみ「それじゃあ須賀くん、自転車の鍵を取ってもらっていいか?」 京太郎「あ、はい、これです。足まだ痛みます?」 ゆみ「ん……歩くのは少しつらいな。まあ明後日には治ると言っていたから大丈夫だろう」 京太郎「そうですか……その、加治木先輩」 ゆみ「なんだ?」 京太郎「明日の行きも送らせて貰えませんか」 ゆみ「なっ!? あ、明日の行きとはつまり登校のことか」 京太郎「はい」 ゆみ「し、しかし登校時間には人も多いし朝からというのは目立ちそうだな……」 京太郎「二人乗りが目立つなら、人が多くなったらまた押しますよ」 ゆみ「余計に目立つだろう!?」 京太郎「じょ、冗談です」 京太郎「無理にではないですけど、もし痛むようなら明日も大変かなと思ったので……」 ゆみ「むぅ……」 京太郎「……」 ゆみ「……」 ゆみ「……そうだな。お願いしてもいいだろうか」 京太郎「はい、喜んで!」 ゆみ「ありがとう。それじゃあこれを」 京太郎「これは……自転車の鍵ですか?」 ゆみ「ああ、明日も来るんだ。自転車のほうが楽だろう? どうせ私は使えないしな」 京太郎「ありがとうございます!」 ----------------------------------------- 京太郎「そろそろ帰りますね」 ゆみ「ああ、今日は助かった」 ゆみ「保健室へ連れて行ってもらって、家まで送ってもらって、牌譜を引き受けてもらって、明日も来てもらう」 ゆみ「君には借りが随分と出来てしまったな」 京太郎「どれも好きでやってることですから。気にしないでください」 ゆみ「私はいい後輩を持ったよ。……何か埋め合わせをしないとな」 京太郎「いえ別にそんな……」 ゆみ「後輩に助けて貰いっぱなしの先輩というのも情けない。私に出来ることなら何でもいい、考えておいてくれ」 京太郎「……わかりました。考えておきます」 ゆみ「ああ」 京太郎「それじゃあ加治木先輩、また明日」 ゆみ「また明日。今日はありがとう」 京太郎(いい後輩かあ……)シャー 京太郎(いつか、後輩としてじゃなく俺を見てもらえるように、頑張ろう) -----------------------------------------
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3951.html
前話 次話 有珠山次鋒(……こいつの便利) まこ(またか!) 由子(やりにくいのよー) ハオ「ロン」 ハオ(負けるために日本に来た訳じゃない) 有珠山次鋒(……こいつ……あれ?) 由子(残念だけど、私はあんたが欲しがるようなものは持ってないのよー) ハオ(清澄……ここまでついてることある?) まこ「ロン!」 由子(あー……有珠山にかきまわされたのよー) みさき「次鋒戦終了!!1位は清澄です。強豪姫松と臨海がここでは静かでしたね」 理沙「……有珠山!」 みさき「有珠山は……4位です」 理沙「そっちじゃない!」 次鋒戦結果 1位清澄523+832=1355 2位臨海555+334=889 3位姫松396+101=497 4位有珠山137+80=217 久「お疲れ様、大活躍じゃない」 まこ「あぁ……有珠山は気をつけたほうがええ」 久「へぇ……」 まこ「あいつらなんかあるぞ」 久「覚えておくわ。じゃ、もっと差を広げてこようかしら」 ハオ「悪い……まかせる」 明華「まかされました」 ネリー「大丈夫ー?」 明華「分かりません。だけど、勝ちにいきます」 由子「ごめんなのよー……清澄バカヅキしすぎなのよー」 洋榎「かまへんかまへん。いっちょ、ひっくり返してくるわ」 漫「主将、お願いします!」 洋榎「まかしとき!」 恭子「気を付けてください」 絹恵「お姉ちゃん、オカンからメールや」 洋榎「なんや?」 絹恵「愛宕洋榎が強いとこ見せてこい、やて」 洋榎「……嫌というほど見せたるわ!」 洋榎の補正が変化しました 有珠山次鋒「…………」 有珠山中堅「いや、なんか言って行きなさいよ」 みさき「中堅戦、開始です!」 久(さて……これでどうかしら……え?) 明華(うわ、面倒くさいです) 洋榎(なんやこいつ……) 有珠山中堅「ツモ」 有珠山中堅(……アレ?失敗?) 明華(ある意味失敗、ですけどね) 久「ツモ!」 洋榎(またついとるな~) みさき「前半戦終了!清澄がいまだトップです!」 理沙「……有珠山、変わってる」 みさき「有珠山?……野依プロもだいぶ変わってる方ですよ?」 理沙「同じこと言ってる!」 みさき「野依プロもです」 久「あー……確かに面倒な相手ね」 和「そんなオカルトありえません」 優希「出た!のどちゃんの決め台詞!」 和「だからそういう訳ではありません!大体ですね…」 京太郎「まぁまぁ」 咲「お、落ち着いて。ほら、ちょっと変わった状況なだけかもしれないし…」 まこ「お前が言うんか」 明華「やりにくいんで代わってもらえませんか?」 智葉「そんなルールねーよ」 ダヴァン「諦めて頑張ってクダサイ」 明華「ちぇー」 洋榎「どやった!?点足りない!?分かった!!」 絹恵「いや自分で言うてどうすんの。ちょ、もう行くん走らんで早い早い!」 恭子「何やってるんや……」 由子「いつもの洋榎なのよー」 有珠山中堅「外したわー」 有珠山大将「最初は大当たりだったじゃん」 成香「が、頑張ってください!」 明華(つまり利用すれば……) 有珠山中堅(あ、ばれた?) 久「ロン!」 久(また調子いいわねー) 洋榎(こ、このままじゃアカン!) 有珠山中堅「……ツモ」 みさき「中堅戦終了!!順位や点差はほぼ変わらずに終わりましたね」 理沙「……接戦!!」 みさき「はい、順位の変化こそなかったものの接戦でした」 久(ふぅ……なんとか1位のままね) 洋榎(もうちょっと稼ぎたかったわー) 明華(強い、じゃなくて面倒な相手が多いですね) 中堅戦結果 1位清澄1355+504=1859 2位臨海889+455=1344 3位姫松497+460=957 4位有珠山217+377=594 久「それじゃあよろしくねー」 和「はい」 久「うん、和は普段通り打ってくれればいいわ」 久(言っても聞かないしねー。ま、和なら大丈夫でしょうけど) ダヴァン「行ってキマス」 智葉「相手は龍門渕透華じゃないぞ?」 ダヴァン「分かってマス。でも、彼女に勝った相手デス。強敵には変わりまセン」 ダヴァン(直接リベンジできないのは残念デスガ、その分原村和にぶつけマス) 洋榎「絹ファイトや!!」 絹恵「うん!」 絹恵(相手は強そうやけど、お姉ちゃんみたいに私が頑張るんや!!) 恭子「今度はとんでもなく強い、ってより確実な感じの相手ばっかりや。教えた通りしっかりやれば大丈夫やで」 絹恵「はい!末原先輩の教えてくれたデータ、頭に叩き込んでます!」 恭子「よし、ほな頑張ってな!」 絹恵「はい!」 有珠山副将「……わ、私でいいの?」 有珠山中堅「今さらよ。精一杯やってきなさい」 みさき「副将戦、開始です!」 絹恵(やっぱ原村の打ち方は変わらんなー) ダヴァン(ほほう……完全なデジタル……) 有珠山(な、なんか場違いな気が……) 和「ツモ」 絹恵(絶対に、絶対に追いつくんや!) ダヴァン(これは……原村ばっかり見てたら痛い目見ますネー) 和(…………) 有珠山副将(私、いなくてもいい気が……) 絹恵「ロン!」 みさき「前半戦終了!トップは依然清澄です!」 理沙「……姫松!」 みさき「はい、姫松がその後ろを追っています。順位こそ3位ですが、この勢いで追いつくか」 和「ふぅ……このまま行けば大丈夫ですね」 京太郎「和ー、水分持ってきたぜー」 和「須賀くん、ありがとうございます」 京太郎「やっぱ和はすげーな。このまま頑張れよ」 和「はい」 ダヴァン「原村、人間味ないデス」 智葉「あそこまでデジタルだったらな」 ハオ「ミス無しだからすごい」 ダヴァン「はい。コンピュータ設定最強でネット麻雀してるみたいデス」 明華「はて、どこかで聞いたような?」 ダヴァン「でも、大丈夫デス。行ってキマス」 洋榎「絹ー!よーやったー!!」 絹恵「い、いきなり抱きつかんでって!」 恭子「でもええ感じやで。このまま頼むな」 由子「頑張るのよー」 漫「他に負けんで頑張って!」 絹恵「は、はい!」 有珠山副将「ほんっと消えたみたいな感じなんだけど」 有珠山大将「大丈夫大丈夫。もっと消える人はいるから」 ダヴァン(デジタルって言っても弱い打ち方じゃないデス。むしろ原村の場合強いデスネ) 絹恵(薄墨みたいなんがおらんと、原村が強いなぁ……) 有珠山副将(うぅ……1人沈み……) 和「ツモ」 ダヴァン(うーん……マイナスじゃないですけど、原村と姫松が持って行きましたネー) 絹恵(臨海よりは稼げたけど、追いつくには足りんかぁ……) 有珠山副将(…………) 和「ツモ」 みさき「副将戦終了!3位姫松が2位臨海に追いつこうとしています」 理沙「……臨海、危ない!」 みさき「はい。大将戦次第では姫松が2位の可能性も出てきましたね」 副将戦結果 1位清澄1859+518=2377 2位臨海1344+301=1645 3位姫松957+525=1482 4位有珠山594+87=681 前話 次話 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/4359.html
―――ラジオ局 はやり「それでは今週もはじまりましたー!『教えて!牌のおねえさん』の時間です!」 はやり「メインパーソナリティーは瑞原はやり。そしてアシスタントにまたまた京太郎くんを呼んでます!」 京太郎「はは、よろしくお願いします」 はやり「なんと京太郎くん、今日から私の付きb……え、これは言わない方がいい?わかりましたー」 はやり「それでは今週も行ってみましょう!お便りの方お願いします!」 京太郎「えー、ラジオネーム攻め寄せる怒涛の殺意さん。すごいお名前ですね。女性の方からのお便りです」 京太郎「『恋人を同業者に持っていかれました』」 京太郎「ってあれ、これしか書いてないですね。これはどういうことなんでしょう」 はやり「うーん、持っていかれたっていうのがどんな感じかにもよりますよね」 はやり「例えば彼氏さんに浮気されたのか、それとも同業者ってことですし異動みたいなことがあったのか」 はやり「どっちかわからないとどうにも……。男性としてはどうなんですか?」 京太郎「そうですねぇ」 京太郎「そうですね、やっぱり会えないのは寂しいので会いたいですかね」フゥ 京太郎「異動、と仮定するならですけど」 京太郎「俺だったら少しでも早く仕事を終わらせて、その人と会う時間を作りたいです」 はやり「なるほどー!攻め寄せる怒涛の殺意さん、参考になったでしょうか」 はやり「どれでは次のお便りに行きましょう」 京太郎「はい。ラジオネーム小鍛治プロのカードありがとうさんからの――」 ――― ―― ― 京太郎「お疲れ様でしたー」 はやり「お疲れ京太郎くん。それにしても最初の質問の答え、何か自分のことみたいだったよね」 京太郎「え、そんなことないですよ?」 はやり「ふーん?」